心が満ちる山歩き

美しい自然と、健康な身体に感謝。2019年に日本百名山を完登しました。登山と、時にはクラシック音楽や旅行のことも。

大山 今も崩壊の続く鋭い稜線の山

2020年09月30日 | 中国・四国・九州の山


大山(1,729m)


 「~ 伯耆の国にありながら出雲富士という名もあるのは、この山が整った富士型に見えるのは、出雲から望んだ場合に限るからであろう。私は大山を、松江の城から、出雲大社から、三瓶山の頂から、望んだ。いつも一と目でわかる、秀でた円錐形で立っていた。 
    しかし何々富士ならどこにでもある。大山がそれ以上に私を感歎させたのは、その頂上のみごとな崩落ぶりであった。東西に長い頂稜は、剃刀の刃のように鋭くなって南面・北面へなだれ落ちている。まるで両面から大山を切り崩しにかかっているふうに見える。
    その北壁が夕陽に染められた時の美しさは、古陶の肌を見るかのようであった。 ~」
 (深田久弥『日本百名山』(新潮社))


 大山は中国地方の最高峰です。
 仕事の後、浜松町バスターミナルから夜行バスで米子駅に向かいました(世界貿易センタービルの別館1階にあったバスターミナルは、2020年9月30日で営業終了とのことでした。)。
 米子で乗り継ぎ、大山寺バス停まで行きます。終点から見上げた大山は、頂上の稜線が長く、富士山には似ていませんでした。
 秋も終わりに近づいていますが、登山口の標識には「大山夏山登山道」とあります。落ち着いた紅葉が間もなく終わり、五合目ではほとんどの木は葉を落とした後でした。展望が開け、山はところどころ白い岩肌を見せています。

 登山道の最高地点は、1,709mの弥山です。1,729mの最高峰・剣ヶ峰への道は、崩壊が続き通行止です。見るからに繊細な稜線が続いています。昔は歩けた時期もあったのか、1つだけ小さい標識が見えます。本当の頂上が見えているのに行けませんが、これは歩けないだろうとすぐ分かるので、惜しい感じがしません。
 しかも見た目だけでなく、石ころが斜面を落ちていく音が絶えずしています。小さな音でも、いくつも重なれば、音が「聞こえる」から「響く」に変わります。まるで日本海の波が山肌にまで打ち寄せてきているような音です。
 「剃刀の刃」のような山は、大山のほかにもありそうなものですが、ここまで「剃刀」に近い稜線は見たことがありません。今も崩れ続けているという、臨場感にあふれたピークでした。
 すばらしい眺望が広がっています。中海と宍道湖・大きな2つの汽水湖に、コンパスで測ったような半円の弓ヶ浜海岸と長い砂州。地形図を拡大して地面にかぶせたようです。地図でしか知らなかった地形が、今や手に取るように分かります。南の方は、四国で最も高い石鎚山まで見ることができました。
 帰りは古墳のような形の石室を見て、6合目の先で右折し、大堰堤へ出る道を下りました。紅葉はこちらの方が楽しめました。
 







◆◆◆◆◆
【夏山登山口から弥山へ】
 登山口8:56→五合目10:07→弥山頂上11:29~11:49→大堰堤への分岐点12:55→大山寺13:49
※分岐点からの下りが急ですが、鎖場はなく、危険なところもありません。日本海を眺めながら頂上まで木道を歩くのは、何とも言えない開放感があります。もし天気が悪ければ、さえぎるもののない上部では凄まじい風になりそうな気がします。
 (登頂:2014年11月上旬) (体力●●●○○ 技術●●●○○) 



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