時事ドットコム
マイページ
会員限定記事
連載 解説委員室から
「岸田首相、再選狙うなら6月解散」 山崎拓氏が指摘、過半数割れで自民分裂も…【解説委員室から】
2024年04月22日12時00分
Xfacebookhatena-bookmarkLINEranking
衆院が解散され、万歳をする前議員ら=2021年10月14日午後、国会内【時事通信社】
今後の政局はどう動くか―。自民党の山崎拓元副総裁は「岸田文雄首相が総裁選で再選を果たすためには、今国会会期末の6月に衆院解散に踏み切るしかない」との見通しを示す。ただし、総選挙の結果、自民、公明両党で過半数を割れば、岸田首相の退陣は必至で、自民党分裂の可能性も指摘。自民党と野党の一部が連携する政界再編もあり得るとの見方を示した。山崎氏との主なやりとりは次の通り。(聞き手・時事通信解説委員 村田純一)
岸田政権で裏金事件は闇に葬られる
―自民党派閥の裏金事件の党内処分をどうみているか?
処分の基準はあいまいなので、疑問もある。しかし、処分したということで、この「政治とカネ」を巡る議論が一歩前に進むとは思う。
―国会に政治改革特別委員会が設置され、自民党は政治資金規正法改正の議論を中心に進めようとしているが、野党は裏金事件の実態解明が進んでいないので、引き続き追及する構えだ。森喜朗元首相の証人喚問も求めているが、実現するか?
野党が証人喚問を要求しても、与党が応じないのは確実だから、実現しないだろう。
―岸田首相は自ら森氏に電話で聴いたが、森氏の関与は確認できなかったとしている。
衆参両院の政治倫理審査会でも、森氏の関与を指摘した安倍派元幹部は一人もいなかった。だからこの問題は、闇の中に葬られるんじゃないか。
第91回自民党大会を前に、森喜朗元首相(手前左)にあいさつする岸田文雄首相(同党総裁)=3月17日、東京都内のホテル[代表撮影]【時事通信社】
―与野党で議論して政治資金規正法を改正した上で、岸田首相は衆院を解散して、国民に信を問うつもりだとみるか?
政治改革の問題を巡って解散することはない。政治改革と解散は関係ない。6月に解散があるというのは、野党が必ず内閣不信任決議案を出すからだ。それに対応するという形で解散になる。
野党は岸田政権での解散を求めているから、必ず不信任案を出すし、出さざるを得ない。岸田首相は不信任案が出されると、「待ってました」とばかりに即解散するだろう。不信任案を採決することはないだろう。採決して否決したら信任されたことになるので、解散もできない。
―自民党内には「岸田首相に解散させない」と言う人もいる。4月28日投開票の三つの補欠選挙(衆院東京15区、島根1区、長崎3区)で自民党が全敗したら、解散は難しくなり、また、総選挙になれば自公が過半数を割る可能性もあるのではないか?
衆院は今、自民259と公明党32で与党は計291議席ある。465議席の過半数は233。自公59減なら自公で232となり、過半数を割る。岸田首相は政権を失うことになる。
インタビューに応じる山崎拓氏=4月10日、福岡市の事務所【時事通信社】
自民と野党の連立は?
―与党過半数割れでも、自民が他の野党と連立し、政権を維持する可能性は?
野党のどの政党も自民との連立に応じないだろう。自民党が50も減ったら209で、単独過半数をはるかに下回る。公明党は、大阪の選挙区はどこも厳しいので、6、7議席減る可能性がある。
―6月解散は、岸田首相にとって相当な「大博打(ばくち)」になると言われるが。
岸田首相は、政権維持のためには他に方法がない。6月に解散するしかないだろう。三つの補欠選挙でも全敗の可能性があり、もし解散せず、このままずるずるいったら、岸田氏は9月の総裁選にも立てないだろう。6月解散を見送れば、岸田氏以外の新総裁が秋に誕生し、総裁選後に秋の臨時国会冒頭で解散する流れになるだろう。
―自民党内で解散に反対する実力者が岸田氏を止めることはできないのか。
海部政権の時は最大派閥・竹下派の指示で各閣僚が解散の閣議決定で署名を拒否することが分かり、海部俊樹首相は解散できなかった。今回、解散の閣議決定に反対して閣僚を辞任するような者はいないだろう。自民党は派閥をなくし、閣僚に指示を出せる派閥のトップもいない。茂木敏充幹事長は、茂木派から出た閣僚をコントロールすることはしないだろう。麻生太郎副総裁が麻生派の鈴木俊一財務相に対し、「解散に反対しろ」と言っても、鈴木氏はおそらく言うことを聞かないと思う。
―どんなに支持率が低くても、6月解散の可能性は相当高いと?
私は1年前から6月解散の可能性が高いと言ってきた。それをメディアは1年前に解散あるべしと言っていた。岸田首相は面白がって、解散風を吹かしただけだ。しかし、今は6月の会期末しかない。岸田首相の立場に立てば分かる。政局の動き、これまでの政治経験に照らして言うと、それしか岸田氏に選択の余地はない。
政界再編、キーマンは石破氏か野田氏か
―総選挙で自公過半数割れなら首相退陣だが、もしそうなると、その後の政局は?
票数にもよるが、自民党は分裂するかもしれん。分裂した自民党の一方と、野党の一部が一緒になる可能性もある。自民が分裂して、世論の人気が高い石破茂元幹事長の下に、与党も野党も集まる可能性はある。ただし、本人にその気はないように思う。
立憲民主党の野田佳彦元首相(左)と自民党の石破茂元幹事長【時事通信社】
いずれにしろ、そういうシナリオをつくれる者、かつて細川政権をつくった小沢一郎氏のような人物が今はいないので、先行きがどうなるかは何とも言えない。こういうのは事前に水面下で話を進めておかなければならない。表に出た時は電光石火で動かなければ実現しない。誰がそれをできるか、疑問だ。
野党だと、立憲民主党の野田佳彦元首相を立てるのはいいと思う。今の野党の党首で連立の話を進めるのは無理ではないか。選挙になれば、全ては結果次第だ。