tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融、財政大盤振舞いでも「インフレにならない」のか?-1

2020年05月30日 21時30分33秒 | 経済
金融、財政大盤振舞いでも「インフレにならない」のか?-1
 新型コロナ問題が起きる前から、安倍政権は、金融・財政共に、ある意味ではタガが外れたような政策をとって来ています。そして今回の、コロナ対策、金融・財政「何でもあり」の大盤振舞いです。日本経済は安全なのでしょうか。

 金融政策でいえば、日銀は黒田総裁になってから、ゼロ金利・異次元金融緩和で、市中からの国債買い上げ、更にはETFもいくらでも買いますといった具合で、ほぼ歯止め無しの金融緩和をやって来ています。

 財政の方は、麻生財務大臣は時々、財政の健全化は大事ですといった趣旨の発言もしたりしますが、安倍さんの方は財政健全化が大事という考えは殆どないようで、 MMT(現代財政理論)などという経済理論も折よく出てきたので、それを信じているように見えます。

 日銀が「無制限に金融緩和をしますよ」とメッセージを出し続けるのは、黙っていれば円の独歩高になりかねないという危惧からという点で致し方ない面もありますが、財政の方は国民の貯蓄を政府が借りて使ってしまうという点で、何時かは返せなくなってしまう(利払い負担もあり)ので、やっぱりプライマリー・バランス回復の計画も必要という意見は強いでしょう。

 ところで、従来の経済学の常識からすれば、金融も財政も「必要ならいくらでも緩めますよ」などといったら、結果はインフレになって大変という事なのですが、必ずしもそうではないという理論が出てくるのは、それなりの理由があるとも考えられます。 

 「ヘリコプター・マネー」という表現があります。ヘリコプターからジャンジャンお金をまけば、みんながそれを拾って買い物に行くので、すぐにインフレになるという事で、インフレの原因を端的に説明する言葉です。

 基本的には貨幣数量説(物より金が多ければモノの値段が上がるという理論)ですが、アベノミクスの真只中でも、日本の場合は、いくら日銀が金融緩和をしても、政府が赤字財政を繰り返しても、政府・日銀が目標にした 2%インフレ 
にならなかったという日本の経験も重要な参考にして、カネを増やしても、必ずしもインフレにならないというMMTが出来上がったようです。

 このブログでは、今の経済学は、もう貨幣数量説は卒業して、インフレの基本的原因は賃金コストプッシュインフレが主流という見方をしてきましたが、今の日本の経済状態を見ますと、更にいろいろな要因が複雑に絡んでいるように思われます。

 アベノミクスの中では、いくら金融を緩めても、政府が賃上げを奨励しても、なかなか賃金は上がりませんでした。
 更に困ったことに、賃金が多少上がっても、家計は節約志向で、なるべくお金を使わないという現象、このブログで定点観測している、家計の「平均消費性向」が長期的に下がっていくという状況が出てきました。

 つまり、日銀がお金の量を増やしても、政府が賃上げを奨励しても、それば消費需要につながらないという経済現象が、もうかなりの長期にわたって続いているという事です。

 物価の在り方の原点は需要と供給の関係です。金融緩和や賃上げは、需要を増やすために考えられて手段ですが、その機能が果たされない世の中になっているようなのです。

 問題を解くカギの一つはその辺りにあるように思えるというのがここでの問題提起です。

 更にもう1つの問題があるように思いますので、それについては次回取り上げてみたいと思います。

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