障害者福祉施設で必要な医療的ケアと看護師の役割
 

今回は、障害者福祉施設での医療的ケアについて、看護師はどんなことをしているかお話していきたいと思います。

医療的ケアとは

医療的ケアとは、痰の吸引、鼻や胃ろうから栄養剤を流し込む経管栄養などの在宅で家族が日常的に行っている医療的介助行為を、医師法上の「医療行為」と区別して「医療的ケア」と呼びます。

障害者福祉施設で看護師が行っている医療的ケア

私が勤務する施設は、主に重度心身障害者の方が利用する通所型の施設です。

障害者福祉施設とはどういうところかについては、前回の「障害者福祉施設で働く看護師の役割について」も併せてご覧ください。

利用者の方は、朝に来て夕方には送迎バスで家に帰ります。

施設で過ごしている間の健康管理や必要な医療的ケアを行うのが看護師の役割となります。

では、主にどのような医療的ケアが行われているのでしょうか?

在宅で行っているいろいろな医療的ケア

私が勤務する障害者福祉施設の利用者層は、主に知的障害や肢体不自由の方が中心です。

嚥下機能(飲み込む力)が低下して誤嚥の危険が高くなり胃ろうを造設している方嚥下機能の低下により痰の吸引が必要な方食物の消化が悪く腸閉塞になり人工肛門を造設している方糖尿病でインスリン注射をしている方様々な医療的な管理が必要な方がいます。

通所施設では医療的ケアに必要な物品は私物で家と同じように

施設は病院ではないため、医療的な処置に必要なものについては応急処置程度の物品しか置いていません。例えば、絆創膏やちょっとした処置に使うようなガーゼ、包帯など、家庭にあるような救急箱の中身のようなものです。

そのため、医療的なケアが必要な方については、原則的にその利用者の方の私物を使い、家と同じように処置をしていきます。

今現在の医療的な管理が必要な方については、人工肛門の方、胃ろう・喀痰吸引の必要な方、インスリン注射を行っている方が主になります。

その他、ケガ等については随時対応しています。

人工肛門の方への看護ケア

人工肛門については、基本的に人工肛門のパウチ(袋)の中に溜まった便は看護師が排泄物の除去を行います。

朝から夕方の間で、決まった時間に計4回行っています。また、パウチが取れてしまった場合には、看護師がパウチの再装着を行います。そのため、パウチの装着に必要な物品は利用者本人のものを常にストックしてあります。

もしもストックがなくなってしまったら、応急的に処置をして(便が外に漏れないようにパッド等を当てて固定する等)、ご家族に物品を持ってきてもらうか、そのまま迎えに来てもらい、家に帰ります。

胃ろうの造設の方への看護ケア

胃ろうの造設をしている方については、昼食時に合わせて胃ろうから栄養剤の注入を行います。唾液や痰の分泌も多いため、吸引も行います。

年齢的に若い方で胃ろうを造設している方もおり、栄養を注入する際には利用者の活動している居室ではなく保健室で注入を行うため、その利用者が好きな曲や動画を流しながら、孤立感を感じさせないよう、なるべく楽しい食事の時間となるように努めています。

また、声掛けについても、なるべく「栄養剤」など、胃ろうを連想させるようなものでなく、あくまで「食事」「ご飯」と表現し、口から食べられないことで利用者がネガティブな感情を持たないような心がけをしています。

栄養注入時や吸引時の物品については、全て利用者の方のご家族からお預かりしたもので、原則全て本人の物で処置を行っていきます。病院では吸引等の設備がありますが、施設にはそこまでの設備はないため、吸引を必要とする方は自分持ちの吸引器を持参してもらいます。

吸引チューブ、アルコール綿、ガーゼ等も全て本人の物になります。

例えば胃ろうの造設部に巻いたり当てたりするガーゼ等についても、その家によって異なり、ティッシュをこよりにしたものや市販のガーゼにY字に切り込みを入れたもの等、ご家族が介護しやすいように工夫されています。物品も、市販のタッパーに入っていたり、お手製の袋に入れてあったり、様々に個性が光ります。

在宅分野での医療的ケアの物品ややり方はその家によって異なる

病院と違うところは、ご家族が自身で自宅での介護がしやすいように物品の管理やケアのやり方をアレンジするなどしてマニュアル的でなくその家によって異なるオリジナルがあることだと思います。介護をしていく中で、介護を少しでも楽に、また苦ではなく楽しみを見い出せるように、私物に刺繍がしてあったり、パッチワークが施されていたりと、利用者の方への愛情を随所に感じます。

医療的ケアは、看護師だけが行うもの?

医療的ケアは、医療行為にかかる部分もあり胃ろうからの栄養注入や喀痰吸引については、相応の研修を受講することで支援員も実施できるようになりました。

特定の利用者に対する胃ろうからの栄養注入や喀痰吸引については、第3号研修という研修を受講することで、その利用者だけに対する医療的ケアが行えるようになります。

しかしながら、やはり医療的ケアについては、例えば胃ろうからの栄養注入では逆流の兆候がないか胃や腸はきちんと動いているか、などを総合的に観察しながら行う必要があり、なおかつ自分の要求や意思をうまく表現できない(気持ち悪い、お腹が苦しいなど)利用者を総合的に観察し、評価を行うことが求められるため、私が勤務する施設では看護師が主に医療的ケアを担っていることが現状です。

障害者福祉施設での看護師の医療的ケアまとめ

今回は、障害者福祉施設で行う医療的ケアについてお話をしました。

私が勤務している施設での医療的なケアを紹介したため、施設によってはさらに様々なケアが必要な方が多くいるかと思います。

障害を持つ方は、うまく意思表示ができなかったり、痛み等を訴えたりすることが時には難しく、また表現の方法も利用者個々で様々です。

医療的ケアのみならず、ケガの処置についても、絆創膏を貼ったままいられない方もいたり、薬を塗っても食べてしまったり、その人によって様々な特性があります。

そのため、障害者福祉施設で求められる看護師の役割として、医療的なケアや処置を行うだけでなく、その人それぞれの特性を踏まえて、どんな声掛けなら、どんな処置なら受け入れてくれるだろうか、と個別性を重視した関わりがより必要になると思います。その日々の関わりが、利用者がケガをしたり、体調不良になってしまった時などの「もしも」があったときの医療的なケアや処置に活きてくるのだと思います。

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