障害者福祉施設で働く看護師の役割について
 

私は障害者福祉施設で看護師として働いています。皆さんは、障害者福祉施設と聞くとどんなところを思い浮かべるでしょうか?

今回は、障害者福祉施設の特徴と、そこで働く看護師の役割についてお話したいと思います。

障害者福祉施設の障害者通所施設とは

障害者福祉施設の障害者通所施設とは、身障害者の方が、生活訓練や作業を行い、日常生活の充実や社会的自立を目指す通所施設です。

障害者通所施設には、就労の支援をする施設、生活介護施設、自立訓練(生活訓練)を行う施設、精神に障害がある方や家族の支援を行う地域活動支援センターなどの種類があります。

私が勤務する障害者福祉施設は、主に重度心身障害者が日中過ごす通所型の施設です。

重度心身障害者は、主に知的障害や肢体不自由(腕や足が動かせない)の方、中には知的障害と肢体不自由の両方がある方もいます。

障害では、脳性マヒであったり、母体内での発達遅滞や、中には生まれた時には障害はなかったものの、外傷や栄養不足などで脳出血等を起こし、それが原因で障害を持つようになった、という方がおおよそを占めます。

私の働く障害者福祉施設では、障害の種類毎に活動する部屋(パーティといいます)が分かれています。重度心身障害、重度〜中度の知的障害、肢体不自由の方、軽度の知的障害、といった具合に障害の種類や度合いによってパーティが分けられ、それぞれの特性や個別性に配慮を行いながら、各パーティで活動が行われています。

基本的に私の勤務する障害者福祉施設は通所型であり、自立支援に重きを置いているため、活動もそれに準じたものになります。

例えば、軽度の知的障害の方のパーティでは、地域の資源回収や保育園ボランティア等を行って地域との関わりを持ったり、肢体不自由の方のパーティでは、残された身体の機能を落とさないような活動(軽いストレッチやレクリエーション等)を行ったり、食事の際にはスプーンやフォーク等を用いて自力での食事ができるよう支援を行います。

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障害者福祉施設内における看護師の役割や業務とは?

障害者福祉施設の利用者の方と関わりで、主に支援を行うのは支援員です。そのため、看護師は密に利用者の方と関わるというよりは、広く浅く全体を把握して、後方支援を行います。

知的障害を持つ多くの方がてんかんの持病があり、施設内でもてんかん発作を起こすことがあります。てんかん発作が起きたら、看護師は駆けつけ、バイタルチェックや転倒等の際に怪我をしていないか等のボディチェックを行います。中には、倒れて膝や頭を打ってしまい、受診が必要となることもあります。その際は、救急車を呼ぶか、それとも施設の車で受診同行をするか、応急処置のみで留めるか、等の判断も看護師が行います。

また、経口による食事の摂取が困難で胃ろうの造設をしていたり、嚥下の機能(飲み込む力)が低下して、誤嚥を起こしやすい方もいて、胃ろうの管理や誤嚥等が起きた際の痰等の吸引も看護師の役割です。

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障害者福祉施設で働く看護師が感じること

障害者福祉施設の利用者の方の多くは言葉がうまく出ず、それぞれのコミュニケーションの取り方があります。マカトンサインという、手話に似たコミュニケーションを取る方、写真や絵に指を指しながらコミュニケーションを取る方、あるいは目や指先のちょっとした動きでコミュニケーションを取る方。まさに十人十色で、様々です。

利用者一人ひとりと関わるにあたって、利用者の持つ特性やコミュニケーションの方法を理解することは、とても大切です。

また、意思決定を促す際に、急かしたり誘導するようなことはせず、利用者自身の意思を汲み取ったり、意思決定ができるような働きかけができるよう、「自立」を支援することも、この施設では必要だと感じます。

また、利用者の中には高齢になってきて、それに伴って家族も高齢となり、入浴等の介護が難しくなっている方もいます。特性として、入浴を嫌がる方もいます。中には年単位で入浴をしていない、という方もいます。このようなケースで問題となるのは不潔な状態が続き、常に身体がかゆく、皮膚状態の悪化から感染を起こしたり、褥瘡を生じたりすることです。痛みを訴えたりすることも困難な方もおり、表情や動きから汲み取る必要があります。

利用者の個々の状態を観察し、必要な処置や家族への伝達等を行う必要性も感じる一方で、必要性はあるものの家族がなかなか動くことができない、受診させない等のケースがあることも事実で、施設内では必要最低限の処置のみを基本としているためにジレンマを感じることもあります。

看護師として感じることは上に述べた通りなのですが、支援を行う上で、例えば自閉傾向の強い利用者が保健室に来ることができた、皆と一緒に活動ができた、等の「できた」という成功体験を目の当たりにし、それを喜ぶことができるということも、障害者福祉施設で働き、支援を行う上での醍醐味と感じます。

看護師が障害者福祉施設に勤務して働くことのまとめ

障害者福祉施設と、そこで働く看護師についてお話をしましたが、障害を理解し、適切な支援を行うことはとても難しいと感じます。

しかしながら、その一方で利用者と関わり、話をしたり様々な活動を通していろいろな体験を共有できることは、この仕事の大きな醍醐味とも感じます。

障害を持つ方と関わるということは、その家族との関わりでもあり、情報の伝達や医療的ニーズがある場合には受診を勧奨する等の関わり、発作や怪我に対する処置や判断が委ねられ、責任ある立場にあると日々感じます。

後方支援を必要な時に必要なだけ行い、支援員との連携を図ることが、この施設での看護師の大切な役割だと感じます。

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