偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏940竪破山(茨城)仁王

2020年11月20日 | 登山

竪破山(たつわれさん) 仁王(におう)

【データ】 竪破山 658メートル▼最寄駅 JR常磐線・高萩駅▼登山口 茨城県高萩市中戸▼石仏 山頂下の隋身門、地図の赤丸印▼地図は国土地理院ホームページより▼この案内は拙著『里山の石仏巡礼』(平成18年、山と渓谷社)から転載したものです


【里山の石仏巡礼86】 茨城県北部の山を歩いていたころ、『常陸五山と山岳信仰』(志田諄一著、昭和63年、)という本で常陸五山なる名称を知った。真弓山・西金砂山・東金砂山・竪破山・花園山、いずれも山中に大きな神社があり、古く69は天台宗の寺院だったと、志田氏は論じている。五山の二つ、西・東金砂神社の七十二年に一度の祭礼は平成15年に執り行われたばかりだ。この祭は御神体を潮水で清める磯出の神幸が中心、山中にある神が太平洋まで日数をかけて出向くのである。茨城の山にある神社にはこの磯出を祭礼とした神社が多く、潮水を汲んでくるだけに簡略化されたところもあるが、竪破山の黒前神社にも同様の祭りがある。
 竪破山は石の山。特に知られているのが太刀割石で、丸い大岩が刃物で切ったように二つに割れている。黒前神社の斎殿も石造り、大きな石を組み合わせて造った流造りの石祠には圧倒される。山頂に石祠が鎮座する山はいくらでもあるが、これほど大きな石祠は他にない。祠の前には小さな石像狛犬がいた。そして見事な石像仁王がある。
 仁王は隋身門に立つ。門の正面左右に木彫の矢大臣・左大臣、その裏側に阿吽の仁王がある。傷みが激しい随身門で左右の大臣もほこりにまみれているが、石像の仁王は朽ちることもなく凛と立っていた。伽藍の守護神として山門に立つ仁王は上半身裸で片手に金剛杵を持つ。しかし石像でここまで表現するものは少なく、高宕山(千葉県富津市)、観音山(埼玉県小鹿野町)の仁王も金剛杵を持たない。仁王は常陸五山の一つ、花園神社にもあった。
 山頂からは東の彼方に太平洋が望まれる。黒前神社の祭礼は七年に一度、黒前の神がはるかに見える太平洋まで出向いて行くという。


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