偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏931風神山(茨城)風神

2020年09月28日 | 登山

風神山(ふうじんやま) 風神(ふうじん)

【データ】 風神山 242メートル▼最寄駅 JR常磐線・大甕駅▼登山口 茨城県日立被の大甕駅▼石仏 風神山山頂。地図の赤丸印▼地図は国土地理院ホームページより▼この案内は拙著『里山の石仏巡礼』(平成18年、山と渓谷社)から転載したものです

【里山の石仏巡礼85】 阿武隈山地の南の端にある日立は、山と海に挟まれた街。日立市の発展は明治時代の末、街はずれの谷間・日立村にあった赤沢銅山の採鉱から始まった。鉱山の機械修理部門が独立してできたのが日立製作所、日立のシンボルである大煙突が完成したのは大正時代の初めだった。街の南はずれにあるのが風神山。山頂に林立する電波塔は日立市やその周辺市町村の山間部にテレビ電波を送るための施設で、この一帯が山の中であることを物語る。この街は山や海からの風が強いのだろう、山頂の一角に風神があった。風の神は風が吹き出すところに祀られる。
 大きな角をはやした鬼が風袋を背負う姿の風神。案内板には「手の指は東西南北を表す意味から四本」とある。たしかに風神の指は四本であることが多い。俵屋宗達の「風神雷神図屏風」では五本だが、千葉県の高塚山にあった石造風神も四本だったし、東京・浅草雷門の風神も四本である。
 仏画の風神は、雷神とともに千手観音の眷属・二十八部衆と一緒に描かれることが多い。それも観音の上部に雲に乗った姿に描かれる。千手観音を本尊とする寺院で知られているのが京都・三十三間堂で、二十八部衆と風神・雷神がお堂を守護している。関東では栃木県烏山町の太平寺、同じ栃木県矢板市の寺山観音寺、東京都青梅市の塩船観音寺、千葉県丸山町の真野寺などで二十八部衆と風神・雷神像が見られる。風神山の風神のわきに「別雷皇太神宮」の文字塔がある。別雷(わけいかづち)は雷の神、これで風神・雷神となるが、この二神の組み合わせが並んで祀られる例は少ない。
 いま風神山の下は高速道のトンネルが走っている。トンネルは日立市を過ぎるまでいくつも連なる。その合間の谷に大煙突が見える。工場の排煙を風にのせて空の彼方へ飛ばすためのものだった。この煙突、平成5年に上半分が崩壊したが、いまでも日立市のシンボルであることにかわりはない。


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