木偶房 日日録

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歌川広重の声を聴く

2018年10月02日 | 読後記
歌川広重の声を聴く 風景への眼差しと願い   
                阿部美香著  京都大学学術出版会刊

「江戸名所図会」と「絵本江戸土産」の丹念な比較考察から
「耕地や広野の見事さ」への賞賛、すなわち耕地や広野に対して
「風流さ」を見出す視座は「図絵」にはなく「土産」にのみ見られたことを
発見しています。
また、
「図絵」の名所は「土産」に比較して空間的な偏在傾向が低い。
それに対して広重が「土産」で称える土地には、明らかな偏在が認められ、
隅田川沿い、海岸沿い、本郷台沿い、徳丸台沿い、目黒台沿い、
さらに低地では、吉原、浅草、日本橋での分布がより多く見られます。

広重の風景を見る際の大きな訴えは、
「見慣れてしまい、普段は意識的に見ることのない場所が持つ風景の
美しさや良さに気がついてくれ」ということです。

「百景」の構図を表のような累計で整理した場合、
人間がある場所に立った時の目線と同じ高さで描かれた絵が
比較的多いということが特徴です。

作者が発見したものよりも、そこにたどり着くまでの
作者の丹念な研究姿勢に感動してしまいました。
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