何もかも投げ出して、失踪してしまいたい。
そういう欲望は私にもあるので、前作「失踪日記」は、出版と同時に手に、いつの日にか、の参考のためにと、ふむふむ、失踪するとこうなるのね、と読みふけりました。
ところが今回はアル中になっての入院日記。
いつか自分もそうしてしまうかも、という失踪と違って、片頭痛持ちの私は、酒はほとんどやらずで、我が身もそうなるかも、という当事者意識も持てず・・・
それでもお亡くなりになったし、昔は好きな漫画家だったしで購入。
読んでみると最初は病棟内という閉鎖空間であり、広がりもなく「なんだかなあ」だったのですが、細かい書き込みは吾妻先生、畢生の10年掛けた力作のようで、読み終える頃は満足できる1冊となってました。
私も20代のまだ片頭痛がなかった頃は酒、好きで、休日なんて朝から飲んでいる事もあったのです。
たとえば朝、お腹が空いて吉野家に行く。
牛丼並、牛皿並に、御新香つけて、卵も付けてって食べているウチにビールが飲みたくなって飲んでしまう。
ところがお酒に弱いので、帰ると寝てしまい、遅い昼食をラーメンかなんか食べてる時もなんだかボンヤリして、そのまま晩飯になり、親の家で食べさせてもらって、お終い。
一日たってみれば何のことはない、結局ビール1本だけだったというね。
でも酒に弱かったから、アル中にならなかったってのはあるよね。
ホントに強い人は底が知れない。
いくらでも飲める。
最高、ボトルを半分空けた時があった頃、強いという友人と飲み比べをした事があったのですが、次元違った。
この本を読んでいると吾妻さんもかなり強い。
それから、寂しがり屋の人も危ないよね。
そしてそんな人は絶対一次会では帰らない。
「晴薫、二次会行くぞ、二次会」と言って肩を組んでくる。
見ていると、特に中心になって騒ぐでなく、意見を主張するでなく、ただひたすら酒を飲んで、タバコを吸いまくって、後はニコニコしている。
それだけでイイみたいなんだよね。
それを毎晩、どっかしらの集まりでやっている。
私には理解できない。
というか、やっぱり私なら身体が付いていかないと思う。
強いというのは良し悪しだよね。
酒に限らず、全ての事で、良し悪し。
何事にも強ければ良い、という事ではない。
様々なエピソードに笑いながらも、そんな事を考えました。
ま、看護士さんが、例の吾妻流に可愛く描かれているんで、故人の冥福を祈る意味でも買いましょう。