まほろばの泉

亜細亜人、孫景文の交遊録にある酔譚、清談、独語、粋話など、人の吐息が感じられる無名でかつ有力な残像集です

2011 あの頃   官僚の「ご説明」の復活

2019-10-03 08:05:52 | Weblog

岩木山神社




伴氏は回顧する

「共同通信の看板をもって政治家や官僚、企業人を取材すると、いつの間にか業界用語や財務省の専門用語に慣れてくる。すると、なぜか一人前の専門家になったように錯覚する。それは国民目線と云われる下座観を失うことになる。それが【マスコミ業界人】として生計を食むことと当たり前なこととなり、社会に対する問題意識も乏しくなる」



萬晩報主宰 伴 武澄


 東日本大震災のための第三次補正予算が国会を通過し、復興債の償還期間を25年とすることで与野党合意した。TPP参加は曲折を経たが野田佳彦首相が大勢の慎重論を押し切ってハワイでのAPECで参加表明した。

 この1週間、相次いで国家の重要政策が決まっていった。野田首相の手腕ではない。官僚の手際である。政治の社会に再び財務省ペースが復活した感がある。このまま行くと、12月の予算編成に向けて消費税増税を含めた税制改正の過密スケジュールになだれ込んで行くような雲行きにたってきた。恐ろしいことだ。

 思い出すのは11月から年末にかけての次年度予算の編成である。新政策を検討する各種審議会の報告が次々と出され、省庁はそれを「大綱」という形で政策化する。圧巻は自民党税調と政府税調のハーモニーである。これも相次いで発表となる。次年度の税制大綱が決まると、予算編成が本格化する。

 本格化といっても財務省が原案を発表した後、復活折衝(局長級、次官級、閣僚級)が3日ほどあって政府原案の発表とあいなる。その間、経済部の記者はそれこそ寝る間がない。というより考える間がない。

 意図的かどうか分からないが、日替わりに次から次へと重要ニュース、つまり一面トップの記事書いた経験からすると、当時の大蔵省の陰謀としか思えないスケジュールなのだ。

 霞ヶ関の官僚はこの予算編成というゴールに向け大蔵省が書いたスケジュールに乗って、4月からベルトコンベア的作業を強いられる。マスコミもその被害者だし、考えようによっては政治家も被害者なのかもしれない。


 このベルトコンベアを動かす潤滑油の役割を果たすのが官僚による「ご説明」である。主に政治家に向けたものだが、大物記者にも「ご説明」部隊はやってくる。だいたいが課長クラスである。よもやま話から始まって、なぜこの政策が必要かということをてきぱきと説明する。

 大方の政治家や新聞記者はまず霞ヶ関の幹部がわざわざ自分一人だけのために足を運んでくれることに感動する。背景説明の中に公表されていない情報でもあれば、なにやら仲間になったような気にさせられる。ここらの心のくすぐり方が巧妙である。

これを官僚によるフォーマットと呼んで来た。一度思考パターンが財務省的になるとなかなかこれから抜け出せない。そもそも多くの政治家や記者は系統的に政策を考えるなどということには慣れていないから、ご説明を受けると自分が異次元にワープしたような気になる。つまり頭がよくなった気分にさせられるのだ。







岩木山の麓 嶽温泉


筆者考

消費税、年金、介護など、内政問題に官僚が行う「ご説明」成果で多くの法案が転化した、政治家のそれは変節である。外交は米国や中国への「ご説明」と意向のお伺い。いよいよ中国封建の「宦官」に似てきた。その後は亡国だ。

現代の亡国は宦官の食い扶持身分は担保され、より狡猾な状況にある。ソ連はノーメンクラツーラという特権階級、中国は共産党員、我が国は公務員・官僚特権、江戸も御家人の弛緩で衰亡した。その後は軍人と官吏の専横が国家を衰えさせた。この国の「親方日の丸」体質は抜けきれない。これを国家を覆う暗雲というのだろう。

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