長寿命化路線に乗っているマンションの特徴 | 廣田信子のブログ

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マンションコミュニティ研究会、MSC㈱代表廣田信子より
日々のマンション生活やお仕事に、また人生にちょっとプラスになるストーリーをお届けしています。
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こんにちは! 廣田信子です。

 

昨日まで、日本マンション学会の大会(福岡)でした。

 

その中で、

マンション長寿命化に向けた

管理組合運営とコミュニティ形成

 

という分科会を

研究委員会のメンバーとともに持ちました。

 

マンションの長寿命化をどう進めるかを

研究している委員会です。

 

論文は、また機会があれば

学会誌でお読みいただくとして、

 

その後のパネルディスカッションの冒頭で、

お話した内容を少し書いておきたいと思います。

 

まず、今、

なぜ長寿命化に真剣に取り組む必要があるのか…

です。

 

人口減少、空き家の増加、居住者の高齢化等で、

一時、国が目指していたような建替えによる再生は、

大多数のマンションで困難なことが

認識されるようになりました。

 

しかし、

再生・長寿命化のために

早くから備えてきた高経年マンションは少数です。

 

今回、私たちが調査をさせていただいた13マンションは、

その少数のうちに入る

長寿命化路線に乗っているマンションです。

 

再生・長寿命化には、

自立した継続的運営ができる管理組合と

合意形成できる居住者の共属意識が不可欠と思われます。

 

しかし、実際には、

管理に無関心な人が多く、

居住者の人間関係が希薄で、

管理会社にお任せのまま、再生工事に手がつかずに、

高経年になっているマンションが多数存在しています。

 

経年と共に、年金世代が増え、

高齢世帯と新しい若い世代が共存することになります。

 

当然、修繕積立金の値上げや

再生工事の実施に対する考え方に違いが出て、

高経年マンションにおける

合意形成はますます困難になります。

 

この状況をずるずる放置していれば、

多くのマンションが再生による長寿命化ができず、

 

市場での価値が低下し、

ますます再生が難しいという悪循環に陥り、

管理不全マンションへの道を歩んでしまう危険があります。

 

そうならないために、

できるだけ多くのマンションが、

自主的な管理組合運営に目覚め、

合意形成できる関係をつくることを始めてもらいたい。

 

そのために、

再生による長寿命化路線に乗ることができた

マンションから学べることを、

管理組合に伝えたい。

 

そして、これからがんばろうと思った管理組合を

どうサポートできるかを考えたい、

という趣旨です。

 

 

長寿命化路線に乗っている管理組合の特徴には、

以下のようなものがありました。

 

1. 理事の意識が高い

 

月1回の定例理事会は当たり前で、

毎回ほぼ全員の理事が出席しています。

 

ちなみに、理事の任期が1年のマンションが半数以上、

輪番制をとっているマンションも約半数。

 

決して、同じ熱心な方ばかりが理事をしている

という訳ではないのです。

 

それでも、

理事になったら、1年はきちんと理事を務める

という文化ができているのです。

 

よく相談で聞く、

理事が理事会に出てこない…というような

困った状況にはならないのです。

 

 

2.組合員の参加意識が高い

 

総会の委任状等も含めた出席率は

常に3/4以上が確保されているところがほとんどです。

 

組合員が、たとえ総会に出なくても、

自分も組合員のひとりとして、

権利であり義務でもある意思表示をきちんとする…

という文化があるのです。

 

 

3. 居住者のコミュニティへの帰属意識が高い

 

特に注目したのは、

ほぼ100%の現在有効な居住者名簿を整備している…と、

ほとんどのマンションが回答したことです。

 

居住者名簿がない、

あっても、何年も更新されていない…

という悩みをもっている管理組合が多いことを思うと、

 

これは、すごいことだと思います。

 

理事会の意識が高いだけでなく、

居住者の協力なくしては、名簿の整備は実現できません。

 

居住者が、このコミュニティの一員であるという

意識が高い表れだと思います。

 

 

4. 長寿命化のビジョンを共有している

 

再生工事をその都度実施しているだけでなく、

このマンションはあと〇年はしっかり維持する…

というような長寿命化のビジョンを共有しているところが

非常に多かったです。

 

ビジョンがあるから、

再生工事を実施していくことも、

そのための修繕積立金の確保も

しやすくなるのだと思います。

 

ある毎年理事が総入れ替えのマンションでは、

総会の議案書に必ず、

このマンションは長寿命化路線で進む

ということを明記して、

方針を間違いなく引き継ぐようにしています。

 

 

5.コミュニティ形成がしっかり行われている

 

例外なく、人と人とのつながりをつくるような

取組みがされています。

 

どのような取り組み(活動)をしているかは、

マンションによって様々でした。

 

その方法も様々で、

管理組合が、コミュニティ形成を担っているところも、

自治会があって、自治会が中心になっているところも、

地域の町内会といっしょに取り組んでいるところも、

ありました。

 

コミュニティ活動は、

どの方法がいいというものではなく、

 

それぞれに合った方法で取り組むことが重要なのだと

再確認しました。

 

顔が分かる関係をつくってきたことが、

合意形成の下地となる信頼の人間関係に

つながっていることが伺えます。

 

 

6.理事会(執行部)に対する信頼がある

 

再生工事に当たっても、

広報や説明会による丁寧な合意形成を

行ってきた文化があります。

 

だから、理事会の提案に、

最終的に、ほぼ全員の賛成を得られ、

工事実施に対しても居住者のほぼ100%協力が

得らえれています。

 

執行部に対する信頼があることで、

 

かなり合意形成の難易度が高いバリューアップ工事

(エレベーター後付け、専有部分の増築)

を実現しているところもありました。

 

 

7.永住意識、愛着が強い

 

永住意識、愛着についても聞いていますが、

それが、とても強い傾向があります。

 

このマンションが好き、

このコミュニティで暮らし続けたいという思いが、

 

再生・長寿命化への

モチベーションになっていることが分かります。

 

さて…

以上の1.~7.の

長寿命化路線に乗れたマンションの特徴は、

それぞれが独立したものではなく、

すべてが関連していると思います。

 

ですから、

うちでは、あれも、これもできていない…と

溜息をつかれることはないのです。

 

何か、ひとつに取り組むことで、

連鎖的に他が改善されていくはずです。

 

で、何から取り組むのがいいか…と言われたら、

やはり、5.のコミュニティ形成だと思います。

 

居住者同士が話をする機会があり、

何人かの仲間ができることで、

いろいろな問題意識の共有が起こり、

次につながっていきます。

 

ぜひ、ここから始めて頂きたいと思います。

 

 

でも…

長寿命化路線に乗って順調だと思えるマンションにも

様々な不安があることが分かりました。

それについては明日。

 

 

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