いろいろな人が集まって暮らすマンションは奥深い | 廣田信子のブログ

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マンションコミュニティ研究会、MSC㈱代表廣田信子より
日々のマンション生活やお仕事に、また人生にちょっとプラスになるストーリーをお届けしています。
一人ひとりが自分らしく活躍しながら、力を合わせることで豊かに暮らす、新しいコミュニティ型社会を目指して・・・

こんにちは! 廣田信子です。

 

管理組合運営において、無関心が問題だと言われますが、

自分の個人的な事情や感情から

強い関心とこだわりを持ち過ぎるのも

周りはたいへんです。

 

人は自分が大きな問題に直面した時に、

周りの問題をすべて、それに関係づけて

感情的に考えてしまう傾向があります。

 

 

75歳のAさんは、65歳まで会社に勤めた後、

延長も可能だったのを断って、

完全な年金生活に入りました。

 

子供たちは独立して家庭をもっていて、

もう安心です。

 

奥さんは、地域活動や趣味に忙しい毎日。

自分も、第2の人生は、地域でいろいろ楽しみたい…と。

 

何度もシミュレーションして、

年金と不足分は貯金で賄えば、

経済的には夫婦で充分やっていけると思ったからです。

 

で、最後、どちらか一人になったら、

マンションを処分してそのお金をもって

施設に入居すればいい…と。

 

しかし、

人生には、思わぬことが起こるものです。

 

まず、

結婚した娘さんが、いろいろあって、

小さな子供を連れて実家に帰ってきました。

 

「うつ」の症状があり、

結局、そのまま離婚となりました。

 

娘さんは、仕事に出られる状況ではなく、

娘たちの生活の面倒も見るためには

年金では足りないと、

 

70歳になってから、

知人の紹介でアルバイトを始めました。

 

退職後始めていた地域の活動には、

ほとんど参加できなくなりました。

 

それでも、孫の成長を見るのはたのしく、

これも人生と思い始めました。

 

ところが、

実の娘と孫が帰って来たのだから幸せだろうと

奥さんのことは、

あまり気に掛けていなかったのですが、

 

孫の面倒を見るため長年続けていた趣味をやめ、

精神的に不安定な娘さんとの暮らしのストレスもあり、

奥さんの様子がおかしくなってきました。

 

夫婦2人で穏やかな老後をというシミュレーションは、

簡単に崩れたのです。

 

そんな矢先に、

孫の遊びに付き合っていた奥さんが大腿骨を骨折。

退院後も介助が必要で、

娘さんが自宅にいてくれたことで助かったのですが、

 

それをきっかけに、

奥さんに認知症の症状が出てきてしまいました。

本当に高齢になっての骨折は怖いのです。

 

皮肉なもので、

娘さんは、奥さん(自分の母親)の介護が必要になったことで、

仕事に出なくても、家に自分の居場所を見つけられ、

だいぶ元気にはなってきました。

 

Aさんは、

こんなことなら、65歳でリタイアしないで、

仕事を続けていればよかった…と。

 

で、生活費の不足を補うため、

今も、アルバイトの仕事を続けています。

 

そして、娘さんのことが心配でなりません。

世の中の変化が激しい中、

これ以上、仕事をしないでいると、

もう社会復帰できなくなるのではないか…と。

 

孫の教育費のことも心配です。

 

娘さん親子が暮らしている以上、

マンションを処分するということはできません。

 

どうやって、孫の教育費や奥さんの介護費用を捻出し、

自分の老後の資金を確保するのか…

 

考えると暗くなります。

 

娘さんが戻ってきたことで、

息子さん家族の足も遠のきがちです。

 

Aさんは、

リタイア時代に管理組合の理事をしていたことがあり、

今でも修繕委員会のメンバーです。

 

 

マンションの人には、

経済的な心配なんてみじんも見せないで、

 

娘さんが孫を連れて帰ってくるなんで、

一番、幸せじゃない…と言われ、

 

そんな簡単なもんじゃないよ…と内心思いながらも、

そのようにふるまっているのです。

 

で、Aさんの話がどうしたの?

と思われることと思います。

 

Aさんは、

別に人生相談に来られたわけじゃありません。

 

長期修繕計画と修繕積立金値上げのシミュレーションがおかしい、

管理会社にいいようにやられている…と

相談にこられたのです。

 

そのシミュレーションによると、

修繕積立金を月額1万円上げなければなりません。

 

それは、私から見て、

特におかしいものではありません。

 

ですから、私が…

 

月額1万円の値上げは確かに大きいけど、

高経年になると、

マンションを適切に維持管理していくためには、

それも仕方がないことです。

 

でも、実際に工事をするときは、

できるだけ費用を抑えられるよう、

修繕委員会の中でぜひ検討してください。

 

維持管理の良し悪しが資産価値に反映される時代に

なっていきますから…

 

とごく常識的なことをいうと、

すべての言葉に反発してこられました。

 

管理会社もコンサルも施工業者も、

みんな管理組合のお金を狙っている敵だというように。

 

その考え方を補強するのに都合がいい、

雑誌や新聞、ネット上の記事をたくさん持っています。

 

きっと、修繕委員会の中でも、

この調子で、周りを困らせているんじゃないかな…と

感じました。

 

こういう方は、きっと、

口にされることとは別のところで、

いろいろ事情を抱えているんだろう…と推測されます。

 

私は、

まず、安心してもらえるよう、

自分や自分の知り合いが抱えている事情の話を

雑談としてしながら、

 

人生ってなかなか思い通りに行かないですよね…と、

少しずつ、Aさんの事情について聞きました。

 

突破口は、

 

Aさんの現役時代の活躍ぶりと、

ずいぶん引き留められたのに、

第2の人生を楽しもうと思ってきっぱりやめたこと、

 

でも、今となっては、

もっと仕事を続けていればよかったと思う…と

言われたことです。

 

そのへんから事情を語ってくれました。

あとは、次々と堰を切ったように

私が聞かなくても、いろいろな話をされました。

 

それを整理したのが前半の話です。

 

たぶん、この方は、

誰にもこういった話をしたことがなく、

1人で、家族を背負ってこられたのだと思います。

 

結局、修繕積立金の値上げや

管理会社への根拠のない不信感の話は

そのままになりましたが、

 

話をしたことで、帰られるときは、

一応、すっきりしたように見えました。

 

それから半年、Aさんから年賀状を頂きました。

 

そこには、

「今度の総会に修繕積立金の値上げを上程します。」

 

そして、

「マンション管理士試験を受けてみようと思います」。

 

とありました。

 

それだけですし、

なんで、マンション管理士試験なんだ~と思いましたが、

 

冷静になって、

前向きに生きていらっしゃるのが分かって

うれしかったです。

 

きっとAさんが少し変わったことで、

修繕委員会も、管理組合も、管理会社も、

助かったのではないかと推測します。

 

自分の「こんなはずじゃなかった」

という苛立ちと不安を

 

知らず知らずのうちに、

管理組合や管理会社に、別の形でぶつけている…

ということはよくあるのです。

 

そういう心境のときに「関心」を持って見ると、

いろいろ気になるところ、

疑心暗鬼になるところが出てくるのが管理組合運営です。

 

見えないところで、

いろいろな事情を抱えた人が集まっているのがマンション。

 

奥深い世界です。

 

 

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