新聞で拝見した貴方様のお写真を見ると、短髪できりりとした眼差し、学生時代のお写真とお見受けしましたが、今でもあのお写真とお変はりないと存じます。写真からでも、性格と云ふものは読み取れるものですね。貴方様は誠実で意志の強いお方とお見受けしました。意志を強く持たねば何事も成就出来ませんものね。

 

 〜〜〜私は来週から、東京にゐる姉の所に手伝ひに行きます。姉が病気で入院するからです。もしご返事を頂けるなら、次の住所宛にお送り下さいませ。私は独りで興奮しております。素晴らしい方の存在を知ってです。その興奮のまま、このやうな不躾なお手紙を差し上げた事、どうかお許し下さゐませ……。

 

これは、豊橋に生まれ育ち、密かに声楽家を目指している内山金子17歳。未来の夫へ最初の“ファンレター”(の一部)。

 

 

 私の容姿のこと、褒められるのは初めてで、恥ずかしいです。新聞の写真は二年ほど前のものですが、今も変りません。ご覧のとおりのいたって平凡な男です。

 

 こうしてお手紙を頂ひたのも何かのご縁。互いに音楽の道を志す者として、頑張りませう。新聞には近々渡欧するように書かれていたようですが、今の予定では暫く(半年から一年位?)東京に出て外国語会話など学んでから、渡欧するつもりです。早ければ来月にでも上京したいと考へてゐます。そのときまで貴女が東京にゐらっしゃれば、きっとお会ひ出来るだろうと思ひます。お時間ありましたら、またお便り下さい。

 

そしてこれは、福島にありながら独学で作曲を学び、国際コンクールで入選した古関裕而20歳。未来の妻へ最初の“お礼の手紙”(の一部)。

 

 

いずれも『君はるか 古関裕而と金子の恋』(古関正裕 集英社インターナショナル)という本からの引用です。

 

 

2020年度、連続テレビ小説『エール』で、主人公のモデルとなった国民的作曲家、古関裕而と妻・金子(きんこ)。
ふたりは文通のみで恋愛し、ひとたび会った時には、たちまち結婚に至るという、希有な純愛で結ばれた。
当初は、オペラ歌手を目指していた金子の、裕而へのさりげないファンレターで始まった文通は、やがて熱烈なラブレターへと変わっていく。
手紙による恋愛、結婚という純愛物語は、現代ではもはやおとぎ話。ふたりの愛の往復書簡は、逆に新鮮に心に響くに違いない。
なおこの作品は、長男である正裕氏が、父と母が残したラブレターを整理し、丹念に読み解き、10年の月日をかけて、ふたりの熱情と名曲誕生秘話を綴った、珠玉の恋愛小説。身内によって書かれた唯一無二の物語である。

 

*版元ドットコム:君はるか 古関裕而と金子の恋

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784797673760

 

 

という内容。

 

ちなみに、帯の表紙側には・・・

 

今の時代にこんな純愛があるだろうか!

連続テレビ小説『エール』で主人公のモデルとなった国民的作曲家・古関裕而と妻・金子。ふたりは文通のみで情熱的な恋をし、ひとたび会うなり結婚した!

この小説は、両親が残した往復書簡を元に、長男の正裕氏が綴った美しい愛の物語である。

 

 

同じく裏表紙側には・・・

 

あなたは、天才作曲家・古関裕而を知っていますか?

古関裕而は、1909年福島県生まれの、昭和日本を代表する国民的作曲家。独学で作曲を学んだ努力家で、その80年の生涯で残した楽曲は5000曲とも言われている。代表曲は、東京五輪の『オリンピック・マーチ』、今でも毎夏演奏される、全国高等学校野球大会の歌『栄冠は君に輝く』、阪神タイガースの歌『六甲おろし』、巨人軍の歌『闘魂こめて』、『高原列車は行く』『君の名は』『長崎の鐘』『鐘の鳴る丘』『モスラの歌』等、誰もが一度は口ずさんだ名曲の数々がある。

 

・・・と書かれています。

 


本のタイトルは、童謡「てるてる坊主」の作詞、浅原鏡村の「君はるか」から来ているようですが、それは・・・

 

君を思えば はるかなり

浪のかなたを はるかなり

たよりをよめど かすかにて

涙のうちに はるかなり

 

・・・という短い詩です。

 

ある時、手紙を書こうとした金子が、たまたまこの詩を小さく印刷した紙を見つけ、

 

 レターペーパーが無いのですけれど、すぐ返事が書きたいので、こんな紙に書きます。あしからず――。

 

などと書き送ったところ、裕而の方は、すぐさまそれに曲を付けて金子に贈った、なんてこともあったそうです。

 

 

はい。ご存知の方も多いと思いますが、この古関裕而さんと金子さん、新期NHK連続テレビ小説『エール』のモデルですね。

 

だからでしょう、関連書籍がバンバン出版されてます。この本もその内の1冊ですが、二人が「知り合って」から結婚するまでの、わずか数ヶ月のみに焦点を当てているところが他書との違いです。

 


基本、残されていた手紙を軸として書かれた「小説」ではありますが、その手紙というのがですね、いやその、微笑ましいと言いましょうか、読んでるこっちが赤面してしまうと言いましょうか・・・、
 

やがて二人は、互いをシューマン(ドイツの作曲家)とクララ(シューマンの妻でピアニスト)になぞらえたりするところまでいくのですが、そうなると、さすがに、ちょっとこの人達、どうしてくれようと言いましょうか・・・

 

単なる知り合いに始まり、友人、親友、同志、恋人、そして運命の人へと、3ヶ月の間に、あれよあれよと“出世”していく二人。

 

いや何とも、若い男女ってのは恐ろしゅうございますね。

 

 

ところで、

 

「あとがき」によると〈本書の基となった古関裕而と内山金子の書簡は、元々は行李一杯程あったとのことだが、相当数が無くなってしまっており、現存するものは手提げ紙袋一つほどである〉とのことでして。

 

それは何故かと言いますと・・・

 

 勿論長い年月の間には、多少の波風もあったようだ。二人が交わした手紙の大半が失われたのも、(姉の話によれば)夫婦喧嘩の末に母が怒って、取ってあった手紙を焼き捨てたからだそうだ。残ったのは父が取っておいた分らしい。

 

・・・のだそうで。

 

いやあ、読み進めるうちに、相当に遠い世界の人達かと気を揉んだりもしましたが急に親近感。この「エピローグ」で、Daddy さん、かなり安心しました。

 

 

あと、要らん話ですが・・・

 

 私が学んだ豊橋高女は、先進的な教育で知られてゐます。いち早く洋装の制服を制定し、姿勢を正し両手を自由に使えるよう、生徒にランドセルを持たせました。そうすれば自転車にも乗れます。女性が自転車に乗るとお転婆と云われましたが、高女では自転車通学を積極的に薦めました。お陰様で私も自転車で通学しましたのよ。

 

・・・と金子が書いている豊橋高女(高等女学校)は、ウチの長女がお世話になった高校の前身にあたります。

 

 

そんなわけで、連続テレビ小説『エール』、3月30日(月)8:00スタート。「豊橋」がどの程度出てくるのか楽しみです。皆様、今すぐ録画予約を。

 

*NHK連続テレビ小説『エール』

https://www.nhk.or.jp/yell/

 

 

 

 

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恥ずかしながら、結婚前、2年ほど川崎ー豊橋で「遠距離恋愛」していた Daddy さんと Mommy。ええ「文通」してましたよ。「往復書簡」残ってますよ。
 
行李一杯まではいきませんが、燃やしてません。けれど読み返してもいません。そんな恐いことはできません。たまに、ふと思い出して、どうしたもんかと思ったりもしますが、結局、いつも「そのまま」にしてます。
 
 
で、そんな二人も一つ屋根の下で四半世紀、いつの間にやら銀婚式でございます。
 
記念に何処かへ行こうという話もありましたが、ちょっと色々、開いてなかったり演ってなかったりするので自粛。
 
ほとぼりが冷めた頃、またゆっくりと考えることにします。
 

 

世の中広うございますので、ひょっとしたら「興味あるよ」という物好きな方もいらっしゃるのではないかということで。

 

こちら、Daddy & Mommy 陶磁器婚(結婚20周年)時の小っ恥ずかしい記事です。

s2e13 はじめまして、ありがとう。