いつからなんだろう、俺たちが
君を好きになったのは
そこには、俺が立っていた。
「裕翔、なんでここに・・・」
「山田から、知念を奪いに来た」
そう、中島裕翔は言った。
「なに」
山田の顔がみるみる怒りで紅潮していく
てか、ちょっと待って
状況がカオスなんですけど
俺が俺を奪いに来たって
てか、裕翔
俺たち今、ベッドで裸で抱き合ってるんだよ
そこはいいの!?
「あの、裕翔、これは違うんだ、えっと、涼介の家に泊まりに来ただけで、ふざけてこんな体勢してるだけだからね、ね、誤解しないでね」
俺は俺に必死に弁解していた。
「知念、もういいよ。裕翔、はっきり言っとく。知念と俺は付き合ってる」
「涼介!」
「いいんだ。裕翔がふざけたこと言ってるから」
「へー、本当にふたりは付き合ってるの?」
「は?どういうことだよ。今だって俺は知念を抱いてた」
「知念の目、腫れてる。どうせ無理矢理やろうとして泣かせたんだろ」
「そ、そんなことは」
「いつもかわいい、かわいいって言うだけで、おまえは昔から相手の本当の気持ちなんて考えないもんな」
「なんだとっ!」
「知念、服着ろよ」
裕翔はベッドの下に落ちていた服を俺に投げた。
「どうやって俺たちのマンションに」
「ああ、知念に聞いてみれば」
服を着ていた俺に、唐突にパスが回ってきた。
えっ、俺?
「まさか・・・招き入れたのか?」
「え、僕?僕は・・・」
「知念はおまえに愛想が尽きたって。だから俺に助けを求めた」
ええええ!裕翔、何言ちゃってんの!?
「知念、ほんとか?」
「山田に飽きたって言ってたぞ。ananで、セックスは『雑なのはよくないと思います』とか言ってたけど、山田のエッチってワンパターンだって」
「裕翔てめえ!」
「おっと、そういう短気なところもなあ。確か『浮気したくなる気持ちもわかります。全然いいよ。僕の努力が足りなかったと思って努力するだけだから』とも言ってたな」
「そ、それは」
「ほんとは浮気なんか絶対許せないくせに。我を忘れて束縛するタイプだろ山は」
「ううっ」
「じゃあ知念、行くぞ」
「え?」
「こんな家出て、俺と行こう」
「知念は裕翔について行ったりしない」
「いつも自信のない山田にしては珍しいねえ」
「知念はさっきも泣きながら、俺のことがずっと好きって言ってくれた」
「ほう」
裕翔は俺を、興味深げに一べつした。
「じゃあ、知念に選んでもらおうよ。俺か、山田か」
こんな強気な男だっけ、俺って
ふたりの視線が俺に集まる
「知念、俺と、行くよな」
「知念、俺と、残るよね」
えっ、選ぶの!?
中島裕翔か、山田涼介か
そんなの選べるわけない!
「知念・・・」
山田がせつない目で訴えてくる
そうだ、俺は山田のことが好きだ。
悩むことなんてないじゃないか
それに、ここで俺が裕翔を選んで、この部屋から去ったら
山田はどれだけ傷付くだろう
山田を悲しませることなんて俺にはできない
答えは1つだ。
「僕、ここに残るよ。涼介といる」
不安そうだった山田が一気に笑顔になった。
「知念・・・ありがとう」
「僕、涼介とずっと一緒にいたい」
そんなやりとりを見ていた裕翔が、俺に近づいてきて、俺の耳元でこうささやいた。
「ゆうてぃー、ボクだよ」
つづく