台風10号が過ぎましたが、被害は当初の予想よりは抑えられた感じでしょうか。事前の避難行動などが功を奏したのであれば何より。
しかし、犠牲になった方もおられて、やはり、かなり強い台風でした。このくらいの台風が、スタンダードとなると、なかなか厳しい…。
というわけで、9月。星景写真的には、天候が不安定で、例年ほとんど撮影に出られない魔の9月なんですが、今年も、最初からその名に恥じない9月っぷりです。
なので、とりあえず、サルベージを。
星の生まれる場所
PENTAX KP レンズ HD DA★ 11-18mm アストロズーム 焦点距離12mm
ISO100 SS1200秒 F2.8 20分長秒露光
東から昇る星を20分長秒露光で捉えました。
中央やや左、オレンジがかって見える星は、アンタレス。
撮影は4月、深夜にさそり座が昇り始めます。
水平線上を、一艘の船が、明かりをつけながら進んで行きます。
サルベージということで、これは、 ペンタックスリコーファミリークラブの会報誌のフォトコンで10連敗目を喫した記念すべき一枚。
というわけで、10連敗の軌跡を、振り返っておこうと思います。
10連敗の軌跡
年に4回の応募ですので、2年半の軌跡ということになります。私が、フォトコンに出し始めて、まだ2年半、されど、2年半。
選外記録としては、長いですね。スランプというわけではなく、別に一時的に調子が出ていないわけではない。最初から、コンスタントに、低空飛行です。
写真が向いてないのか、コンテストが向いてないのか…せめて後者であってほしい(笑)
なので、今更、一枚一枚反省してもしょうがないので、当時、何が良いと思って送ったのかというのを言語化しておこうかと思います。とりあえず、自分でほめて伸ばすしかない(笑)
198回
今、思えば、一番最初の応募から、そこそこ攻めたチョイスですね。ほぼ雲で星が見えない(笑)
雲の隙間をついて明るい星が見え、左には、ヒアデス星団(おうし座)も見えています。インターバル撮影で連続撮影をして、良い雲の流れ引き当てるという、最近もよく使う手法ですね。
スチール写真なんですが、雲の流れを感じられる一枚になったな、と。
心象としては、雲が覆う空に、困難とかすかな希望を見ていると、特に菜の花の黄色が添えられているところに、希望が込められていますね。
最初から、攻めの姿勢で悪くない。
199回
パンフォーカス星景の作品。明るい星は木星、赤い花はつつじの仲間ですね。
このころ、おそらくパンフォーカス星景の撮影法をほぼ確立した時期。
魚眼特有の丸みを帯びた前景の描写と、星の位置がきれいにマッチしています。
前景の照らし出しもちゃんとコントロールできている。
おそらく、カスタムイメージ・リバーサルフィルムを使って、この赤さを出したと思います。
花が「生きている」感覚が出ているかなと、星に手を伸ばすような「生」の質感。
これ、…今見てもよく完成されてると思う(笑)
ええ?悪くないだろう?ええ?
200回
たしか、HD DA15mmF4 Lmitedで撮っていた時期ですね。
DA15mmは、天の川のコントラストを出すのは、あまり得意じゃなかったという気がするんですが、天候と空の暗さに恵まれて、比較的天の川のあぶり出しに成功していますね。
天の川というのは、やはり、強く宇宙を感じさせますね。宇宙と地球とカメラ(私)が出会うという邂逅の時。
明るい星が静かな水面にリフレクションしているのも、…悪くない…。
201回
これもDA15mmの一枚。
紅葉の時期を狙ったんですが、月明かりのある日でないといけなかったので、少し、時期が外れていますね。ただ、その、終わりかけの紅葉というのも、雰囲気としては、良いか。
曲線構図で、奥に向けて遠近感が強調されているのも、評価できる。
これもインターバル撮影で、雲が抜けるのを待った作品ですね。
流れ出す青色が、世界を染めていく。終盤の紅葉が、何かしらの終わりを感じさせる。
これは、最終選考まで残った奴なので、そもそも、悪くない。
202回
街並みと、そこに並ぶ、金星と木星。右側にはアンタレスとさそり座も見えています。
明け方のグラデーションもよい。 自作ハーフソフトフィルターを使った一枚で、DA35mmという標準画角を使ったもの。いろんなものを盛っています。
少し絞って星に光芒を出しつつ、ソフト効果を重ねるという、面白い一枚。
心象としては、人の暮らしの上にある星空…特に、二つの惑星に人の魂が天に昇るようなイメージを重ねています。
…んん、悪くなくない?
203回
枝垂桜と天の川。
これは、確か月もない暗闇だったので、セルフライトアップ。直接照射せずに、地面に向けてライトを当て、その反射光で、桜全体を浮かび上がらせています。
細かな天の川が、散る花びらを予感させる。私は、一貫して、散ることや、終わりということに、何かしらの思い入れがあるようです。
ここら辺から11-18mmの作品になってきますね。明らかに星の質感が一段変わっていますね。細やか。
悪くはない。
204回
天の川が南西に傾きつつ、前景の岩とあいまって印象的な風景になっています。 天の川がこの角度になるのを待った撮影。
右手の街明かりは評価が分かれると思いますが、私は、そこに人の生活が感じられて嫌いではない。
作品タイトルは「祈り」。波の音が静かに響いているわけですが、それが逆に静謐を湛える祈りの雰囲気を強めています。
いや、うーん。
悪くないんじゃないかと思うんですが。どうだろう。
205回
上のと同じ日付(同じ夜)の撮影ですね。
特徴的な雰囲気の流木と、天の川。これは前年も流木と天の川を狙ったのですが、その時はノイズのコントロールがうまくいかず、完成させられなかったので、一年越しで再挑戦したもの。
流木は日々流れるので、また違うものでしたが、言ってみたら、この特徴的な流木があり、待っていてくれたかというのを感じた一枚。
良い景色にあったときは、風景が待っていてくれたという感覚が、ありますね。
非常に、暗い作風。流れゆく流木の無常観と、希望や進むべき目印のメタファーとしての星という組み合わせ。暗闇から手を伸ばす。
悪くなかろう。私らしさが強く出た作品で、かなり気に入っている。
206回
これは前回もサルベージしましたね。
菜の花の咲く、川辺の風景。星景写真としては、なかなか完成度は高いのでは、と。
というのも、春をテーマにして、写っている星も、春を代表する「春の大曲線」、アークトゥルス、スピカ、からす座。背後に月があることで、地上の描写と空の青さが印象的に浮かび上がっていきます。
左側が明るいのは、高知市の光害だと思われますが、そこに電柱があるのも人の暮らしの営みを示唆するもので、暮らしの向こうに季節が巡っていくその移ろいの感覚を写しとめています。
これは、最終選考まで残ったので、悪くなかった。
ということで、私は悪くない。とひたすらに自己弁護をしておきました(笑)
いやー、向いてないぞコンテスト。これ一回一回審査員が違うので、誰とも波長が合わなかったということですよね。
技術的な部分で、水準に達していないということもあるかもしれないけど、…いやー、うーん?もちろん、改善の余地は大いにあるにせよ、むしろ、意欲的にいろいろ試してもいる。今後も技術面は追求するとして、核心的な問題点はそこにない気はする。
技術よりも、もっと別の部分の欠けているもの。
本当に、10回にわたって審査員とことごとく波長が合わないということで、それはそれでより深刻かもしれない。まあ、最終選考まで残ったのが2回あるので、その点では5人に1人くらいには合うのかもしれない。
欠けているものを探す旅は続く。
10連敗記念のサルベージが、全天の星座数88となったというのも、ある種運命的。
さて、20連敗に向けて、歩みを進めましょうか。
ではまた。
ついでに、この間考えてきた、なぜ撮るのかということを写真論にまとめてみました。