個人情報の取得が独占禁止法違反になる? | 世界一わかりやすい法律の授業を目指すブログ

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弁護士武山茂樹が、わかりにくい法律の世界を、わかりやすく伝えるブログです。「世界一わかりやすい法律の授業」を目標にしております。

1、はじめに
 
こんなニュースがありました。
経済ニュースなどでは、優越的地位の濫用という話が、しばしば出てきます。
本日はこのニュースをテーマに書いていきたいと思います。
 
例えば、
これは独占禁止法(正式には、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律といいます)という法律に関わる話です。
独占が価格のつり上げなどにつながることに鑑み(もっと言うと自由競争を歪める)、世界的にみて独占は禁止されています。日本も例外ではなく、独占禁止法という法律が規定されております。
 
2、不公正な取引方法
独占禁止法には、次のような条文があります。
 
(不公正な取引方法の禁止)
第十九条
 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
 
うん、シンプルですね。でも、シンプルすぎて何も伝わらない。
そこで、2条9号が「不公正な取引方法」の定義規定を置いています。
 
全部載せると長いので、一部だけ掲載しますと
(9)この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
二 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
 
こんな感じです。
例えば、Aというタレントを出したテレビ局に対し、他の競争者と共同して、自社のタレントを出演させないようにする。
これは「ある事業者に対し、供給を拒絶し」に該当しそうですね。
(実際に独禁法違反になるか否かは、もっと突っ込んだ検討が必要ですので、ここでは可能性がある、にとどめておきます。
 
また、「正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」はいわゆるダンピングです。
例えば、ガソリンが1リットル150円くらいが相場だなーという地域に、ライバル社をつぶすために、ガソリンを1リットル10円で供給するような行為です。

1リットル10円で販売すると確かに損はしますが、ライバルをつぶすために、自ら損をかぶるわけです(ですので、ダンピングをするような会社は、体力があるそれなりに大きな会社です)。
そしてライバル会社が撤退すれば、その地域のガソリン供給を独占できるようになる、そういうことです。
 
3、優越的地位の濫用
そして、5号が優越的地位の濫用
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
 
そして、独占禁止法の定義規定だけではあいまいなので、公正取引委員会は「一般指定」「特殊指定」というものを置いて、さらに具体化しています。
ご興味のある方はぜひ検索してみて下さい。
 
4、個人情報取得が優越的地位の濫用にあたるのか?
 
ではさっきのニュースを見てみましょう。
日経新聞はログインしないと一部しか見れませんが、この一部でも十分内容がわかると思います。
世界的に「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は、もはや独占と言っても過言でないほど、その分野の世界のマーケットを閉めています。

それらの企業が個人情報を半ば半強制的に収集しているのではないか(要するに、サービスを利用したければ個人情報を提供しろという。一般の方はサービスを受けたいので、しぶしぶ個人情報を提供する)という批判があるため、公正取引委員会が独占禁止法の適用を考えているとのことです。
 
もちろん、独占禁止法はあくまで独占を禁止する法律で、個人情報の保護を直接の対象とするものではないので、無理ではないかという批判もあります。
(以下の記事に宍戸教授の批判が掲載されています)
今後の動きが気になるところです。
 
独占禁止法とスポーツ選手の契約
独占禁止法と芸能人の契約
あたりが今後問題になってくると言われますが、

個人情報保護と独占禁止法の関係も出てきました。
独占禁止法は、しばらくホットなテーマになると思います。

また、ビジネスの現場でも重要なテーマですので、(法的な教養として)押さえておいた方がよい分野でもあります。
 

新橋虎ノ門法律事務所 共同代表弁護士 武山茂樹

 

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