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佐伯一麦『ショート・サーキット-佐伯一麦初期作品集』2015・講談社文芸文庫

2024年02月21日 | 小説を読む

 2018年のブログです

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 佐伯一麦さんの『ショート・サーキット-佐伯一麦初期作品集』(2015・講談社文芸文庫)を読みました。

 またまた佐伯さんの小説で、このところ、じーじは(佐伯)一麦ワールドと(樋口)有介ワールドにハマってしまった感じです。

 佐伯さんが初期に書かれた小説から選ばれた作品集ですが、なかなか読み応えがあります。

 あらためて思ったのは、佐伯さんは文章がうまいな、ということ。

 丁寧で、美しい日本語です。

 誰が下手とはいいませんが(?)、佐伯さんの文章が端正なので、小説で描かれている世界が、夫婦の不和や仕事上の大変さなど、かなりヘビーな内容なのですが、気分はあまり悪くなりません。

 むしろ、悪戦苦闘をしながらも、誠実に生きている様が、丁寧な文章に乗って、淡々と、時には、すがすがしく、描かれているように感じます。

 印象的だったのは、子どもとのやりとりが描かれた場面。

 例えば、乗り物が苦手な長女が電車の中で気分が悪くなって吐いてしまった時、それを自分の洋服で受けて、子どもを守る父親の姿が描かれますが、弱い者を守る父親の姿がとてもいいです。

 人は弱い者を守ることでおとなになっていくんだな、とつくづく感じられます。

 そういうふとした場面を大切にしている小説家なんだな、ということがわかります。

 人と人の行き違いも描かれますが、淡々とどちらにも偏らずに描いているという感じがします。

 勧善懲悪ではない世界、人と人が支えあいながらも、迷惑を掛け合い、しかし、ともに生きていく、そんな感じでしょうか。

 したがって、読後感はとてもよくて、充実した感じがします。

 また、数年後に再読したいな、と思いました。     (2018. 10 記)

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 2023年4月の追記です

 つまらないことかもしれませんが、人は弱い者を守ることでおとなになっていくんだな、という一節がじーじは少し気に入っています。   (2023.4 記)

 


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