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添田孝史『原発と大津波-警告を葬った人々』2014・岩波新書-政府や企業、学者の責任を考える

2024年03月09日 | 随筆を読む

 2019年秋のブログです

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 本棚を眺めていたら、添田孝史さんの『原発と大津波-警告を葬った人々』(2014・岩波新書)が目に入りました。

 先日、東京電力の幹部3人の無罪判決が出たばかりでしたので、興味を持って改めて読んでみました。

 添田さんは大阪大学の大学院工学研究科を出て、朝日新聞の科学部記者をされていた人。

 その添田さんが、阪神・淡路大震災の経験から、専門家の話を頭から信用するのは危ないと感じていたところで、東日本大震災の福島第一原発の事故を目の当たりにして、その原因を探ったのが本書です。

 政府の情報公開の制限に悩みながらも、資料をていねいに検討して、企業や専門家の話を冷静に検証していく姿はすごいです。

 福島第一原発の爆発事故に対して、豊北電力女川原発は無事でしたが、そこには1611年三陸沖地震の教訓や869年の貞観地震の研究の成果などが反映されていたことがわかります。

 もちろん、東京電力もそのことはわかっていたのですが、企業利益が優先され、地震や津波の研究については、その確実性を疑問視して、対策が遅れます。

 さらに、インドでの津波による原発事故やフランスでの高潮による原発事故という教訓も生かすことができず、東日本大震災の事故では、東電幹部が「想定外の事故」と叫ぶのですが、実は想定外ではなかったことが判明します。

 これらの経緯を読んでいると、人はその立場を守るためには、本当に都合のいい話だけに耳を傾け、他の意見には耳を傾けないものだな、ということをつくづく考えさせられます。

 心理療法の世界では、人は聞きたいことだけを聞く、といわれますが、本当のようです。

 一時、すべてが停止した原発は、また再稼働が始まっています。

 活断層の研究など、新しい知見が得られていますが、現場では原発側の抵抗が目につきます。

 そこには政府や企業の都合があり、それに同調する御用学者がいます。裁判所もあまり頼りになりません。

 しかし、原発の場合、企業利益より、住民の安全が当然の責務だと思います。

 そして、原発事故は取り返しがつきません。

 住民のための電力会社であってほしいな、とつくづく思います。      (2019. 10 記)

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 2024年3月の追記です

 昨日のTBS「報道特集」を見ていると、以前、能登半島の珠洲市にも原発建設の話があったようで、反対派と賛成派に分かれて大変だったようです。

 結局は電力会社があきらめたのですが、反対派は無言電話などの嫌がらせを受けたり、子どもたちが先生から嫌味を言われたりと、ひどい扱いを受けたようです。

 しかし、もし、この時、珠洲に原発ができていたら、今回は?と思うと、背筋が寒くなります。

 地震大国日本ではやはり原発は無理なのかもしれません。   (2024.3 記)

  


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