さむらい小平次のしっくりこない話

世の中いつも、頭のいい人たちが正反対の事を言い合っている。
どっちが正しいか。自らの感性で感じてみよう!

インド放浪 本能の空腹 ⑮  『インド家庭料理にご満悦』

2020-03-19 | インド放浪 本能の空腹



30年近く前の、私のインド放浪、当時つけていた日記からお送りいたしております

前回、オーズビーと共に掘立小屋で甕の水で割ったウイスキーの水割りを飲み、一晩泊めてくれるというのでオーズビーの自宅へ、ベスパもどきのスクーターに二人乗りして到着、家族に挨拶をして、夕飯までの間、前夜の満員夜行列車の長旅の疲れから、男同士でベッドに横になり、泥のように眠ってしまった、と言うところまででした。

つづきの前に、私がフォローさせて頂いているブロガーさん、「25時間目  日々を哲学する」さんが、しばらく更新がなかったので気になり、訪れてみたら、お亡くなりになっていたようです

心よりご冥福をお祈り申し上げます

では、つづきをどうぞ


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 オーズビーにゆすられ目を覚ます、辺りはすっかり暗く、夜になっていた。時間的にはさほどでもなかったように思うが、よほど疲れていたのだろう、随分と深く眠ったようだ。

『よく寝たな、夕飯の支度ができている』

 オーズビーはそう言っておれを食卓のある部屋へと案内する。オーズビーの両親、姉が笑顔で迎えてくれる。
 おれは上座のようにテーブルの中央に座らされた。左にオーズビー、その奥に姉、右に父、その奥に母、という具合だ。

 テーブルには見たことのないような料理が所せましと並べられていた。ビールも用意されている。料理はサラダなど野菜が目立つ、チャーハンだか、リゾットだか、コメの料理もある、鳥らしき肉も美味そうだ、あとはカレーらしきものが数種、ナンもある。なかなかに豪華だ。
 オーズビーの父がビールを注いでくれる、インドに来てから、酒ばかり飲んでいるような気がする。
 料理は美味かった。カレーは特に美味かった。おれはオーズビーの母につくり方を聞いた。全てが理解できたわけではないが、多分日本に帰ってからそれっぽいのは作れそうだ。

 会話の中心は主に父親だった。内容はほとんどが日本の機械製品、カメラとか時計、それに電化製品、そんなことだった。時折、専門的な事を聞いて来るので、おれはよくわからないまま適当に相槌をうってごまかしたりしていた。 母と姉は時々、初めて日本人の客と食事をする、という非日常なできごとに緊張してか、ちらちらとおれを見たりはしていたが、カレーの作り方以外、ほとんど会話には加わらなかった。オーズビーも時々父の質問におれが窮すると、代わりに答えてくれる以外は、食って飲むばかりだった。
 それでも宴は楽しかった。そして美味かった。ビールも随分と飲んだ。インドを旅する中で、こういう機会に恵まれることもあるだろうとは思っていたが、それが来て早々に実現するとは思わなかった。


オーズビーと父親の写真、また貼っておきます


 気持ちよく酔い、再びオーズビーの部屋へ戻る。

『オーズビー、とても美味しかった、本当にありがとう』

 おれたちはしばし談笑し、再び男同士、ベッドで横になる、昨夜の疲れ、ビールの酔い心地、昼寝をしたにもかかわらず、おれたちはすぐに眠りに就いた。

 翌朝、目を覚ますと窓から柔らかく優しい陽光が射し込んでいた。朝だ。
 傍らを見ると、すでに目を覚ましていたオーズビーが椅子に腰かけ、前屈みになってスニーカーの靴紐を結んでいる。

Good Morning…

 おれが声をかける。オーズビーが靴紐を結びながら応える。

Good Morning…

 そして、靴紐を結び終えると、両手でスニーカーをポンポンとはたきオーズビーは言った。

Thank you very much!  Just good ,for me

 …、目を覚ましたばかりのおれの頭はまだ回転が鈍い、オーズビーは何を言ってるんだ…? 何が『Thank you very much!』なんだ…?

 徐々に覚醒してきたおれは、オーズビーが履いている靴を見て仰天した。

おひおひ!! オーズビー君! それはおれの靴じゃないかい!!!


 おれは何が何だかわからない、なんでおれの靴をオーズビーが履いているのだ??? ありがとう、ってどういう意味だ? おれが靴をオーズビーにやった、と言うのか? おれの頭はだいぶ混乱していた。

 あまりに堂々とおれの靴を履き、『Thank you very much!』なんて言うからにはおれが靴をあげたのだろう…、いや、そんなはずはない…、おれはそのスニーカーしか持って来ていないのだ、やるはずがない…、それともあれか?、インド人は友達になった証にものを交換するって、お気に入りの懐中時計が、手書きでCASIO、と書かれた安物デジタル時計に変わっちゃうって、あれか?
 だいぶビールを飲んだが、記憶を失くすほどではない…、物々交換ならおれに何か代りのものがあっても良さそうだが今のところ見当たらない…。

 しばらく考えたが、それをやった覚えはない、と言ってゴタゴタするのは面倒だ、まっ いっか! おれの悪い癖だ。幸いカルカッタで買い物のお礼にと、店からインド人男の服と一緒に、そこそこ良さそうなサンダルももらっていた、しばらくはそれでいいだろう。
 ところが、靴だけで話は収まらなかった。オーズビーが言うのだ。

『なあ、コヘイジ、昨日キミが父に見せてくれた、あのカメラだけど…、あれをボクは父にプレゼントしたいんだ…、その代り、インド製だけど良いものをキミにプレゼントするから…。』

 出たーーーーーーーー!! 仲良くなった証の物々交換!!!!

 さて、おれのカメラの運命は… 長くなったのでそれはまた次回で


************************************つづく

日記を読み返している内に、日記には書かれていないことを思い出したり、逆に忘れていたことを思い出したり、楽しく書かせて頂いております。
オーズビーの母に教わったカレーのレシピは、日本に帰ってから日本人の口に合うようアレンジしまして、あるイベントで屋台を出店して、3日間やったんですが、3日目には噂を聞きつけ、他の出店者が行列を作るほどに大成功したんです。カレーに関しては、多分世界一美味しいのを作れる、と思っています(笑)

※引用元を示し載せている画像は、撮影された方の了承を頂いた上で掲載しております。それ以外はフリー画像で、あくまでも自分の記憶に近いイメージであり、場所も撮影時期も無関係です。



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4 コメント

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ひいいいいいっ (カワムラ)
2020-03-19 21:30:39
ひいいいいいっ 身に着けていたものが すぐ取られる
まるで 優しい追剥ですな・・・こういう所に行く時ャ
裸で原始人みたいなカッコをするか ボロボロの布を
纏って 行かねばなりませぬな・・・面白かったです。
Unknown (topstartkana)
2020-03-20 10:13:03
カワムラさん、おはようございます❗小平次です
コメントありがとうございます❗

そうなんです
このときすでに持ち物の多くが無くなってました(笑)

ずっとあとの記事になると思いますが、帰国して成田空港に降り立ったときの私の格好、そりゃ怪しいもんでした(*_*;

ありがとうございました
こんばんは (猫の誠)
2020-03-21 00:03:18
そういえばタイに長期出張していた知人が、メイドを雇ったら、毎日冷蔵庫の中のものを堂々ともっていってしまったそうです。知人は奥さん同伴だったので、メイドなどいらない、と言っていたら、日本大使館の人から、怒られて仕方なく雇ったそうです。
Unknown (topstartkana)
2020-03-21 08:56:09
猫の誠さんおはようございます❗
小平次です
コメントありがとうございます

へえ❗

タイ辺りでもそんななんですか
今も私は東南アジア人と接触する機会が多いのですが、もちろんみんなではありませんが、申し訳ないけど、低所得者層の人ほど図々しいことをするし、一般常識との乖離が著しいと感じます。支那人に関しては所得に関係なくそのように感じます。

残念ですが、欧米人の方がやはりその辺はしっかりしているように思えます

ありがとうございました

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