2018年7月5日木曜日

モーター温度管理

モーターの温度管理は重要で過去モーター表面温度が90℃を超えて
取替という事態になった事が一度だけあります。絶縁階級がE種の場
合は許容温度は120℃ですが業者によれば表面で20℃程度低下す
るという意見
があったのでそうなれば100℃を越せば絶縁破壊を起こ
してしまい相間短絡するのは時間の問題でした。これは私が勤務する
現場にある消防ポンプモーターで絶縁階級はB種だから表面温度で
130-20=110℃が限界と判断できます。ですが通常は50~60℃程
度でこういう負荷が固定したモーターが85℃とかに急になれば何か
劣化兆候があると私は考えています。

モーター絶縁階級は乾燥した屋内ではE種、屋外や耐久力を要求さ
れる物はF種やB種を私が勤務するビルでは使用されています。屋外
モーターなんて10年以上雨ざらしなのにまったく故障する事なく夏場
は毎日動いてるのですからガチな耐久力です。でも永久じゃない!

モーターは熱容量や熱放散を考慮すると内部から外部に熱が移動す
るのにある程度の時間がかかり、運転開始の初期には温度変化が
遅れます。
絶縁物の寿命に影響を与えるのは最終上昇温度との事
です。下写真は冷房用の屋外冷却水ポンプ、これで温度変化を検証
してみましょう。この検証は実は10月頃にした物ですが朝方でモータ
ー運転前は周囲温度とほぼ同じ表面温度で26℃でした。運転開始し
てから15分後に表面が43℃、更に15分後に56℃となりました。最終
的には58℃で発熱と放熱のバランスが成立して最終上昇温度となっ
たのです。(屋内設置では放熱低下で屋外型より高くなる)

この15分というのは2回目の15分つまり30分後の温度からそう大きく
ならない。少し勉強して調べてみたらモーター温度というのはR-L直列
回路の電流変化と同じ様な指数関数的な変化をするのですね。つまり
最終値である定常状態と変化途中の過度状態で表す事ができます。
そうなると最初の15分をt1、次の15分をt2としてその時の温度を各
θ1とθ2として最終上昇温度をθ∞と表す事とします。Tとは時定数とい
いθ∞の約63%に達する時間を意味する物でこれが小さいほど早く定
常状態に落ち着きます。

①は最初の15分t1の時の温度を表す式で②が30分目t2の温度を
表す式、次に①式を二乗すると③式となりこれが②式と等価となる事
に気がつきます。

その式にθ1=43℃とθ2=56℃を代入して見ると57.8℃が得られました。
実測は58℃ですから結果と理論値はほぼ一致しました。運転して1分値
と3分値の温度ではy=kxの比例変化ではないので無理ですからどの時
間タイミングで温度測定を行うのかが難しいです。ただ計算値より極端
に最終上昇温度が上昇するならこの熱の流れが停滞し熱が内部に蓄積
するから表面温度が90℃をも超えてしまうのです。最後は熱による絶縁
破壊となり短絡が発生してMCBがトリップしますが当然メガ測定では0Ω

絶縁物の耐熱温度を越せば寿命は著しく低下する検証
電気に係わる人は寿命を判定するモルチゲルの公式と10℃半減説は
聞かれた事があると思います。①がその式です。②は絶縁物が130℃
まで上昇した寿命T1③は10℃半減説を適用して定数βを逆算してみま
した。次にA種絶縁物が定格の105℃まで上昇した時の寿命を示す式
T2が④でそれに②③の結果を代入してみます。定格温度になった時の
寿命T2が資料としてあるならば130℃まで加熱した時の絶縁物の寿命
時間T1は計算できますが今はわからないので適当に1000Hとするなら
ば176Hでこの結果からA種絶縁物を130℃で使用すると寿命は1/5
以下になるのだけはわかります。

解説:指数計算の公式の確認、次に③は10を二乗したら100ですよね。
逆に2は10を底とした100の対数であると同じ考え方で変換すればいい
んです。⑤のεは自然対数の底で2.718それを1.7325乗すれば5.65
が得られます。関係式が判明したのでエクセルで式を組んで105℃を1
とした場合の温度超過による寿命の推移をグラフ化してみましたがあり
えないけど160℃になんかなると一瞬で絶縁破壊してしまうという事。
以上、電験三種を85点で合格できた方なら意味はわかると思います。

家でじっくり勉強するのに私が個人的に購入した日立のモーターは
絶縁階級はE種ですが汎用式モーターではこのクラスが多いです。
能力内で普通に使うならモーターは15年は壊れないです。
特に業務用は家電内モーターと違い絶縁だけでなく内部部品も耐
久性があるパーツが使用されています。ただ静寂性には欠けるた
めこういうモーターを裸で室内使用には向いていません。_単相の
モーターは三相の様に電源のどれか2線を逆にさせただけでは
逆転できない、逆転回路をリレーで自作して運転電流、力率の
変化を実験をしてみました。_単相モーターは電源線は4本ある
のはご存知ですか?(単相だからと2本ではありません)_軸を
タオルごしに持ち負荷をかけると運転電流上昇と共に力率は
改善される、それはなぜか最下の等価回路で説明できますか?

ここでは10A通電できるパワーリレーを使用、X1とX2リレーが
ONになると赤ー黒コイルに流れる電流は正転方向、それらの
リレーがOFFなら逆転方向に流れる回路を考えました。X3リレ
ーのa接点で正転ランプ、b接点で逆転ランプを点灯させます。
ただこれは300W未満の作業台モーターの場合で通常はマグ
ネットでコイル電流の制御をする必要があります。_単相モー
ター応急逆回転なら回路を組まなくてもモーター端子台での
結線変更でいけます。_単相モーターは電源を逆にしてもダメ
三相モーターは電源のどれか2本を逆にすれば逆転は可能
(水中ポンプが詰まった場合、業者も最初にモーターを逆転
しています。_逆転はポンプではやもうえない場合に限定)

こういうモーターが故障するのは起動、停止の繰り返し、マグネット単相
運転による短絡など設計思想とは異なる使い型、メンテ不足を扱う側が
したのが主原因。もちろん運用は正しくても機械物ですからいつか故障
は絶対します!「振動がひどくなった場合」「以前より熱く感じるようにな
った場合」「回転が遅くなった場合」「錆がひどくなった場合」「動作時の
音が大きくなった場合」「電力の消費が大きくなった場合」などを確認し
た場合は症状が軽い内に業者による点検が必要との事。モーターは
15年が期待寿命ですから
それを経過した物は順次取替計画を電気
主任としてオーナーに提案しましょう。15年を経過した機械をOH(オー
バーホール)してまで使うのは私的にはお勧めしません。古い機械の
点検依頼を業者にすると断られるケースがありますが今日点検して
明日故障する可能性のある物は誰も触れたくないからです。OHは
あくまで期待寿命を考慮し残りを確実に使い切るための特別作業
と考えるのが妥当ですね。(期待残寿命=15年ー使用経過年数)