最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

損害賠償と代金未払金の相殺はできる

2020-09-20 17:09:52 | 日記
平成30(受)2064  請負代金請求本訴,建物瑕疵修補等請求反訴事件
令和2年9月11日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  広島高等裁判所

 請負代金債権と瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし,他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属中に,上記本訴請求債権を自働債権とし,上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは許される

報道がないので認定内容から見ていきます。

(1) 被上告人は,平成25年9月,建築物の設計,施工等を営む上告人との間で,請負代金額を750万円として自宅建物の増築工事の請負契約を締結した。被上告人は,その後,同年11月までの間に,上告人に対し,上記工事の追加変更工事を発注した。
(2) 上告人は,平成25年12月までに,上記増築工事及び追加変更工事を完成させ,完成した自宅建物の増築部分を被上告人に引き渡した。
(3) 本件請負契約に基づく請負代金の額は829万1756円である。他方,上記増築部分には瑕疵が存在し,これにより被上告人が被った損害の額は266万9956円である。
(4) 上告人は,平成26年3月,本件本訴を提起し,被上告人は,同年6月,本件反訴を提起した。上告人は,同年8月8日の第1審口頭弁論期日において,被上告人に対し,本訴請求に係る請負代金債権を自働債権とし,反訴請求に係る瑕疵修補に代わる損害賠償債権を受働債権として,対当額で相殺する旨の意思表示をし(,これを反訴請求についての抗弁として主張した。


被上告人は発注者、上告人は建築会社です。契約書では750万円なのに829万になったあげく、できそこないを寄越されたので損害が266万円になった。そこで大モメになったのでしょう、翌年3月に裁判になりました。もうこの会社に払いたくないから不足分は払わない、会社側は払えとやったようです。よほど感情的におかしいことになったのでしょう。
ちなみに裁判費用は、弁護士費用を入れるとかなりいくと思いますよ。勝手な予想ですが、266万円どころか倍ぐらいかかると思います。

一審では未払の損害金と被害の266万円の一部祖相殺して払いなさいと判決が出ました。
これに対して最高裁は、

請負契約における注文者の請負代金支払義務と請負人の目的物引渡義務とは対価的牽連関係に立つものであるところ,瑕疵ある目的物の引渡しを受けた注文者が請負人に対して取得する瑕疵修補に代わる損害賠償債権は,上記の法律関係を前提とするものであって,実質的,経済的には,請負代金を減額し,請負契約の当事者が相互に負う義務につきその間に等価関係をもたらす機能を有するものである。しかも,請負人の注文者に対する請負代金債権と注文者の請負人に対する瑕疵修補に代わる損害賠償債権は,同一の原因関係に基づく金銭債権である。

ごめんなさいの代金は値引きになってるよね。

上記のような請負代金債権と瑕疵修補に代わる損害賠償債権の関係に鑑みると,上記両債権の一方を本訴請求債権とし,他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属している場合に,本訴原告から,反訴において,上記本訴請求債権を自働債権とし,上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁が主張されたときは,上記相殺による清算的調整を図るべき要請が強いものといえる。

本訴に反訴で同じ案件についてなのだから相殺すべきじゃないですか?と言ってます。

本訴と反訴の弁論を分離すると,上記本訴請求債権の存否等に係る判断に矛盾抵触が生ずるおそれがあり,また,審理の重複によって訴訟上の不経済が生ずるため,このようなときには,両者の弁論を分離することは許されないというべきである。そして,本訴及び反訴が併合して審理判断される限り,上記相殺の抗弁について判断をしても,上記のおそれ等はないのであるから,上記相殺の抗弁を主張することは,重複起訴を禁じた民訴法142条の趣旨に反するものとはいえない。

重複起訴禁止は、裁判所に係属する事件について当事者は、さらに訴えを提起することができないとする民事訴訟法上の原則で、裁判が増えると被告と裁判所が何度も手間がかかるので、やるならまとめてやってねという原則のようです。この原則がなければ延々と嫌がらせが可能になりますからね。

請負契約に基づく請負代金債権と同契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし,他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属中に,本訴原告が,反訴において,上記本訴請求債権を自働債権とし,上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは許されると解するのが相当である。

要するに、反訴に反訴を重ねることになりかねないけどこの場合は仕方ないでしょうと言っています。

請負代金債権を自働債権として瑕疵修補に代わる損害賠償債権と相殺する旨の意思表示をした場合,注文者は,請負人に対する相殺後の請負残代金債務について,相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負うと解される(最高裁平成5年(オ)第2187号,同9年(オ)第749号同年7月15日第三小法廷判決・民集51巻6号2581頁参照)。

最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 三浦 守
裁判官 菅野博之
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

普通この金額ならば弁護士同士で話し合い、少なくとも調停で終わらせる案件ですよ。よほど感情的にこじれたのですね。

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