異世界こぼれ話 その三十二「体外離脱の世界 前編:言葉の整理とルドルフ・シュタイナー」 | Siyohです

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音楽とスピリチュアルに生きる、冨山詩曜という人間のブログです

体外離脱という言葉は若干曖昧かもしれません。まずはそれを少し整理してみましょう。

 

体外離脱Aは、一番狭義の体外離脱です。これは、肉体を抜け出た感覚がして、その新しい身体でこの世を見聞きすることです。これは古代から、よくある現象として伝えられています。例えば、古代エジプト人は体外離脱に関する記述を残しており、その中で彼等は第二の身体を「バー」と呼んでいます。チベット死者の書には、「バルド体」と呼ばれる第二の身体が、肉体の外に持ち上げられる様子が書かれています。古代の中国人は、エネルギーを「真珠」に引き込んで「循環」させる呼吸瞑想後に体外離脱を経験することができると言っています。いくつかの部族のシャーマンは、自らの意志で体外離脱を達成することができると言っています。

 

この第二の身体は、日本では幽体、一般にはアストラル体と呼ばれています。これをアストラル体と呼び出したのは、ブラヴァツキー夫人が始めた神智学協会においてのようです。幽体という呼び方がいつからあるのかわかりませんが、幽体離脱の言葉はそこから生まれています。では、西洋ではアストラル体離脱と呼んでいたのでしょうか? これは違います。神智学ではアストラル体が身体から抜け出ることを、アストラル投射と呼んでいました。更に言うと、神智学や他のオカルト、スピリチュアルの考えでは、肉体とアストラル体との間に、もう一つの身体があるとしています。この身体は、神智学ではエーテル体と呼ばれます。そのため、この体外離脱Aはアストラル投射ではなく、エーテル投射と呼ばれる場合もあります。

 

補足ですが、神智学ではアストラル体の中にもうひとつ、メンタル体という身体があるとしています。この辺の、人の見えない身体構造に関しては、流派によって呼び方や分類が異なり若干面倒なので、いずれまとめます。今は体外離脱の話を続けましょう。

 

体外離脱Bは、離脱した先がこの世ではない場合です。別の言い方で言えば、抜け出るのがエーテル体ではなく、アストラル体である場合です。この身体の場合、この世をうろつくというわけには行きません。とは言え、その行き先が割と一般に認識されているあの世に近い場合、それも含めて幽体離脱と呼ばれてきました。これを何度も行い、霊界の姿を描いた人として有名なのがスウェーデンボルグです(異世界こぼれ話 その九 「スウェーデンボルグ」)。また臨死体験も、この体外離脱Bに含まれるでしょう。しかし、行き先がそれ以外の異世界だと、白昼夢、明晰夢、あるいは単なる幻覚と呼ばれがちです。

 

体外離脱Cは、身体から抜けた感覚がなく、当人の感覚だけがどこまでも伸びていくものです。この際、その伸びた感覚で得てくる情報が遮蔽物の向こうである場合は透視、遠方なら遠隔透視、未来の場合には予知、過去の場合はサイコメトリと呼ばれてきました。現在ではこのCタイプの体外離脱は、リモート・ビューイングと呼ばれています。

 

一方、このCタイプには、異世界の情報を見てくる場合も含まれます。例えば、瞑想中に見るビジョンがそれです。これに関してはあまりリモート・ビューイングとは言われないようです。超知覚という言葉がふさわしいのかもしれません。ちなみに神智学ではこのCタイプも、アストラル投射と呼びます。そして、この能力で得た情報を元にした思想家として有名なのが、ルドルフ・シュタイナーです。

私はあまりこの人について詳しくないので、今まで取り上げてきませんでしたが、とても興味深い人です。彼は神智学協会に入ったのですが、後に脱退して人智学協会を作りました。彼は神智学のように、霊的に覚醒した特別な導師は必要なく、すべての人が霊的に開かれる可能性があるとしました。そして霊的成長を促すための具体的なメソッド、例えばシュタイナー教育などを作り上げていったのです。この教育方法は、彼が体外離脱Cによってアカシックレコードを読み、世界の成り立ちを彼なりに把握した上で、作り上げています。

 

アカシックレコードはアカシック記録、アカシャ年代記などとも呼ばれる、全人類の古代から未来までの情報が、全て入っているという記録です。この言葉は、ブラヴァツキーかシュタイナーのどちらかが初めて使ったと言われています。ちなみにシュタイナーが、このアカシックレコードの内容を語った講義を集めた本があります。この本では例えば、地球の霊的な部分が最初にできあがり、それが段階を経て物質化していく過程が詳細に解説されています。また、神々や天使と呼ばれる存在たちを、人格を持つものと持たないもの、そしてその中間的な存在に分けたり、なかなかに興味深い内容となっているようです。

 

 

現在は、このレコードにアクセスできると主張している能力者が何人かいて、そうした人たちが書いた本もあります。しかし、この手の本の最初のものとして、一度は読んでみたい気がします。なお、体外離脱のあとに紹介する予定の、電子機器を用いて得られたあの世からの情報によると、アカシックレコードは第4階層にあるそうです。第3階層がいわば死後の世界。第4階層は生まれ変わりをやめた人たちが進む世界です。さらに、このレコードの不完全な反映、バックアップとでも言うべきものが第3階層にもあるとのことです。そのため、このレコードにアクセスしたという人がいても、本当に第4階層のものにアクセスしたのかどうか、気をつけたほうが良いようです。

 

さあ、体外離脱という言葉について整理できてきたところで、真打ちの登場です。ロバート・モンロー。ここまで出てきた、幽体離脱、アストラル投射、エーテル投射などの言葉に付随するオカルト的な要素を嫌い、「体外離脱」あるいは体外での体験という意味の「OBE(Out of Body Experience)」の言葉を作り出した人です。

 

--1.16 アカシックレコードの存在場所を修正。本体があるのは第5階層ではなく第4でした。

 

私はある意味、この人はキリスト、釈迦なみに重要な人なのではないかと思っています。と言っても、彼は何かの教えを説いて周ったわけではありません。体外離脱を通して見てきた世界について書き表し、他の人でも同じ体験ができるようなシステムを開発した人なのです。体外離脱を繰り返して思想家となった人たちは、今までの歴史においてそれなりにいましたし、中でもスウェーデンボルグとシュタイナーはとても偉大だと思います。しかし、その技術を一般に広めたのはモンローが初めてと言えるのではないでしょうか。その意味でとても偉大な人だと思います。

 

取り急ぎ、彼の三冊の著書に沿って、モンロー氏を紹介していきましょう。

彼が書いた一冊目は「体外への旅」。1971年の本ですが、日本ではずっと1985年に出た抄訳版だけでした。

私がモンローを知ったのは、この抄訳版でです。完訳は2007年にやっと出ました。しかし両方読んだ人の感想だと、別に抄訳版だけでも十分みたいです。

 

この本には、ある日突然身体から抜け出るようになってしまい、それからどうしていったかが書かれています。これが単なる感覚的なものなのか、本当に抜け出ているのかを、彼は確かめ始めました。そして、確かに抜け出ていると分かってきてから、その状態での体験、そうなった理由を考えた末に編み出した体外離脱の手順などが書かれています。本から、体外離脱が現実に起きていることを確かめた例をひとつ紹介しましょう。

 

一九六三年八月一五日土曜日、ロバートはふと思い立ち、避暑に出かけている女友達と連絡を取る実験をしてみることにした。その女性RWは、長年の間一緒にビジネスをしてきた、彼が体外離脱をすることを知る、数少ない親友の一人だ。彼はそのとき、彼女がニュージャージー州のどこかの海岸に行ったことだけは知っていたが、それ以上正確なことは知らなかった。しかし、横になってリラックスし肉体を離れるとすぐ、ロバートは、彼女が二人の若い女性と海岸の小屋の台所で話をしているのを見つけた。体外離脱状態では相手がどこにいても、その相手を思うだけでその場所に行くことができる。それも、親しい間柄であればあるほど、確実に行けるのだ。

 

ロバートが彼女に自分が来たことを知らせたところ、彼女は「ええ。あなたがここにいることは分かるわ」と答えた。だが、そう答えたのは彼女の心、無意識であって、肉体の彼女は相変わらず女性たちと会話をしていた。


「自分がここに来たことを覚えていてくれるだろうか?」


ロバートは精神体のRWにそう聞いた。


「もちろん。絶対覚えているわよ」


RWの口が変わりなく会話を続ける中、彼女の心はロバートにそう答えた。 

 

「本当に?」 

 

ロバートは彼女の物理的な身体がずっと会話に興じているのを見て、覚えていてもらえるのかどうか不安になり、身体をつねらせてくれと言い出した。 

 

「いや! そんな必要はないわよ。私、絶対に覚えているから」 

 

RWの心は慌ててそう言った。それでも、ロバートは確実に覚えておいて欲しかったため、彼女の体を優しくつねらせてもらうことにした。実際のところ、つねることができるのかどうかもよく分からなかったが、とりあえず脇腹の下、お尻の少し上あたりをほんの少しつねってみた。次の瞬間に起きたことは、全く彼の予想外のことだった。彼女の物理的な身体が「Oh!」と大きな声を上げたのだ。 

 

月曜日、出社して来たRWにロバートは、避暑はどうだったか聞き、土曜の午後三時から四時の間に何をしていたか尋ねた。RWはそれがいつもの実験だとすぐに理解し、記憶を整理してから火曜日に答えると言ってきた。そして火曜日。 

 

「三時から四時くらいというと、宿泊所にちょうど人がいなくなった頃ね。最初は姪と二人で話していたわ。後から姪の友達も加わって、台所で三:一五〜四:〇〇くらいまでずっと話し込んでいたのよ。私はアルコール、彼女たちはコークを飲んでた。それ以外は何も変わったことはな いわ」 

 

「何か他になかった?」

 

 「ううん、別に」

 

 「絶対あったはずなんだけどな。なんとか思い出して欲しい」

 

 「そう言われても……。ずっと話してただけよ」

 

 「つねられたことは覚えて……」 

 

ロバートがそう言い出したとき、RWの顔に驚きの表情が広がった。

 

 「あなただったの⁈」


彼女はそう言うと、ロバートのオフィスの片隅に行き、セーターを少しだけあげ、スカートとの境目の肌を見せてくれた。ロバートがつねったその箇所には褐色と青色の痣ができていた。 

 

「彼女たちと話してたら突然すごくつねられて。一フィートは飛び上がったわよ。義理の弟が戻って来ていたずらしたのかと思ってすぐ後ろを見たけれど、誰もいなかったわ。これがあなただったなんて、まるっきり考えなかったわ。痛かったのよ!」 

 

ロバートはRWにひたすら謝り、これからこの手の実験をするときは、つねる以外のもっとソフトな方法を試すよう、約束させられたのだ。

 

この例はとても示唆に富んでいます。ここでモンローが行っているのは体外離脱A。とは言え、本当の現実世界とは若干ずれているようです。もしモンローが、RWの「もちろん。絶対覚えているわよ」という言葉を信用してそのまま帰ってきていたら、この実験は失敗していました。このときにモンローと会話したのは、RWのエーテル体もしくはアストラル体と考えられます。そしてどちらにせよ、それが肉体とは違う動きをしているのが重要です。そう、私達はこうした、「違う私」をその中に抱え込んでいるのです。これが人間存在の複雑さを生み出している、根本的な要素なのです。

 

また、モンローが彼女をつねることが来たのが驚きです。これは彼女の精神体がモンローを認識していたから可能だったのでしょうか。通常は、体脱中に物理現象を起こすことはできないし、その身体は通常の人には見えません。なお、体脱中の身体を超能力者が観察した例はあります。

 

アレックス・タナウスAlex Tanousと言う名の、体外離脱の科学的研究に協力してきた有名な被験者がいます。彼はあるテストにおいて、何キロも離れた特定のオフィスに体外離脱状態で行き、テーブルの上に何が置いてあったかを報告しました。このとき、そのオフィスには超能力者クリスティーン・ホワイティングChristine Whitingがいて、タナウスを認識することができるかどうか、待っていたのです。実験後、彼女はタナウスがいた場所を詳しく、彼が袖をまくったシャツとコーデュロイのパンツを履いてどこに浮かんでいたかを描写しました。

 

ここでふと思ったのですが、こうして体脱中の身体を見ることができる人がいるということは、体外離脱する際にはちゃんと服を着ていたほうがいいですね。おそらく、何も考えなければ、体外離脱状態になった際に着ていた服の姿で現れるのでしょうか。ということは、裸で寝る人がその状態で体外離脱したら。。。

 

でも、イメージで服を着替えることがきっとできるのだとは思いますが。実際に経験豊富な人、この辺どうなのでしょう?

 

と、馬鹿なことを言っていないで先に進みましょう。次の本が書かれたのは1985年。日本では「魂の体外旅行」として1990年に出版されました。

先の本でモンローを知っていた私は、ほぼリアルタイムでこれを買って読みました。そしてヘミシンクや、モンローが見てきた異世界を知ったのです。この先は次回にします。