最低限知っておきたい著作権の知識(その1) | 知財を活用した「知財ポジショニング戦略」 徹底解説!

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仕組みやモノのアイデア権利化コンサルタント・弁理士 遠藤 和光

最低限知っておきたい著作権の知識のうち

今回は著作物について説明します。

 

 

 

<なぜ、著作物・著作権は分かりにくいのか>

著作物や著作権は分かりにくいですね。

なぜでしょう?

 

特許権、実用新案権、意匠権、商標権は、

特許庁で登録されて初めて権利が発生するものです。

 

特許庁では審査官が登録すべきか否かを判断するために

以下の審査基準が作成されており、

それが一般に公開されています。

 

 ・特許権、実用新案権に対して「特許・実用新案審査基準

 ・意匠権に対して「意匠審査基準

 ・商標権に対して「商標審査基準(改訂第13版)」

 

裁判所で争われた結果、審査基準を改訂した方がよいと

判断されると審査基準が改訂されます。

そのため、審査基準により登録の可能性の予測が立ちやすくなります。

 

これに対し、著作権は著作物を創作した段階で発生しますので、

登録のための審査基準が担当の文化庁で作成されておりません。

このため、裁判例でのみ判断することになるため、

著作物や著作権が分かりにくいということになります。

 

 

 

<著作物にはどのようなものがあるのか>

 著作権法によると、著作物とは、

 「思想または感情を創作的に表現したものであって、

 文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」

 であるとされています。

 

 分かりやすく説明すると、

 「自分の考えや気持ちを他人の作品のまねでなく

 自分で工夫して、言葉や文字、形や色、音楽(作詞・作曲)

 というかたちで表現したもの」ということです。

 著作物には、以下のものがあります。

 

(1)小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物

 言葉によって表現された著作物のことです。

 

(2)音楽の著作物

 曲だけでなく曲と同時に使われる歌詞も著作物です。

 

(3)舞踊または無言劇の著作物

 日本舞踊、バレエ、ダンスの振り付けなどの

 振りや動作によって表現される著作物です。

 

(4)絵画、版画、彫刻その他の著作物

 形や色で表現される著作物のことで、

 マンガや書、舞台装置なども含まれます。

 

(5)建築の著作物

 一般の人が生活しているような建物ではなく、

 例えば宮殿のように建築芸術といわれるような建築物のことです。

 

(6)地図または学術的な図面、図表、模型その他の図形の著作物

 図形や図表によって表現された著作物のことで、

 設計図や地球儀なども含まれます。

 

(7)写真の著作物

 人や風景などを撮影した写真のことです。

 

(8)映画の著作物

 映画フィルムやCD、DVDに記録されている

 劇場用映画・アニメなどの動画のことです。ゲームソフトも含まれます。

 

(9)プログラムの著作物

 コンピュータプログラムのことです。

 

(10)二次的著作物

 上記(1)から(9)までの著作物を元に創作された著作物のことです。

 例えば、外国の小説を日本語に翻訳したもの、

 小説を映画化したもの、楽曲を編曲したものなどが二次的著作物です。

 二次的著作物を作る場合は、元の原著作物の著作者の

 許可をもらわなければなりません。

 

(11)編集著作物

 例えば、百科事典のように、数多くの項目についての

 解説が載っている場合、それぞれの項目に書かれていることも

 著作物ですが、百科事典そのものも全体として編集著作物になります。

 百科事典の他、新聞、雑誌なども編集著作物として保護されます。

 

(12)データベースの著作物

 編集著作物のうち、その内容をコンピュータによって

 簡単に検索できるようにしたものが該当します。

 

(参考:「著作権とはどんな権利?」公益社団法人著作権情報センター)

 

 

 

<著作物でないものにはどのようなものがあるか>

 著作物でないものには、以下のものがあります。

 

(1)「思想又は感情」を表現したものではないもの

 例えば、「東京タワーの高さは333メートル」のような単なるデータは、

 表現した人の思想、感情とは無関係であるため著作物ではありません。

 

 著作権法10条2項

 「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、

 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物に該当しない。」

 と規定されています。

 

(2)「創作的」に表現したものではないもの

 例えば、平面的なものを撮影した写真は、

 誰が撮影しても同じようなものになり、

 創作的ではないため著作物ではありません。

 

 他人の創作物を模倣したものは、創作していないため

 著作物ではありません。平凡かつありふれた表現は、

 作成者の個性が発揮されていないため著作物ではありません。

 

 彫刻の写真は、立体を平面に変換する過程で構図の選択や光の加減等の

 要素に撮影者の個性が現れるため著作物になり得ます。

 

3)「表現したもの」ではないもの

 例えば、プログラムを作成するためのアルゴリズム(解法)、

 小説のストーリー等のアイデアやコンセプトは、

 具体的に表現したものでないため著作物ではありません。

 

 著作権法10条3項

 「プログラムの著作物に対するこの法律による保護は、

 その著作物を作成するために用いるプログラム言語、

 規約及び解法には及ばない。」と規定されています。

 

4)「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」ものではないもの

 例えば、量産を目的とした工業製品は、

 応用美術に属するものであり、著作物ではありません。

 

 なお、近年工業製品の幼児用椅子(下の写真)が外観に

 個性が発揮されているとして著作物性を認めた裁判例

 (知財高裁平成26年(ネ)第10063号)があります

 しかし、その後の裁判例として、原告の工業製品の傘立て(以下の写真)が

 美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていないため、

 著作物性を否定した裁判例(大阪地裁平成28年(ワ)第6539号)

 があります。

 

 

 このため、現状では工業製品は、原則として著作物ではない

 と考えてよいのではないかと思います。

 

 

 

<料理のレシピは著作物か>

 

 料理のレシピ(調理法)そのものは、

 料理の手順を示すアイデアなので、著作物ではありません。

 

  しかし、料理のレシピを文章、写真、図解等で表現した料理本は、

 著作物です。これは小説のストーリーが著作物でないですが、

 小説は著作物であるのと同じです。

 

 料理のレシピは、手順や条件が新しく、新たな効果があれば、

 特許の対象になり得ます。

 例えば、特許事例として、電子レンジで温めてアルデンテ状態になる

 「アルデンテスパゲティの製造方法」(特許5662548号)があります。

 

 

 

 また、ごはんに対してこんにゃくとかまぼこの大きさや混合量を規定して

 食感を良くした「おにぎり」(特許第2563839号)があります。

 

 

以上で著作物がどのようなものだか

分かったでしょうか?

 

 

 

 

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