地方創生が叫ばれて、早いもので5年が過ぎようとしています。
政府は各自治体に地方創生に係る交付金を大量につぎ込んできました。
さて、果たしてその効果はいかがなものでしょう?
地方創生の目玉ともいえる事業にDMO(注)事業が挙げられます。
従来の観光協会などの組織に代わり、戦略的に地域に人を呼び込み
恒常的にお金が落ちる仕組みを作る司令塔の役目を期待されたわけですが、残念ながら、財源の確保や人材の育成の面で多くの課題を残しています。
(注)DMO・・・DMOとは、観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のこと。Destination Management Organization(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)の頭文字の略。DMCはDestination Management Company(デスティネーション・マネージメント・カンパニー)の略。
(写真:筆者撮影 2020地方創生EXPO @幕張メッセ)
では一体何が問題なのでしょう。私は根本的な問題として地域におけるリーダーの能力上の問題が挙げられると感じています。
もう少し具体的に言うとリーダーが発揮すべきリーダーシップが欠如している点でしょう。
リーダーシップとは本来、集団の目標(集団に存在している問題解決のために、取り組む課題を意識化したもの)の実現を目指した働きかけを指す(Bass,1990)。と定義されています。
しかし、目標や課題、効果を上げる手順や活動の内容が、かつてと様変わりしてきおり、求められるリーダーシップ自体が変化していると言われています(古川,2019)。
「地域」における環境は多様化し、複雑化しています。とりわけ、観光領域においてはさらに激変していると言えるでしょう。急速な少子高齢化、インバウンドの急増、ワーケ―ションの台頭など。
そのような状況において、地域のリーダーは、地域住民の意識をまとめ、地域の課題解決のためにリーダーシップを発揮しなくてはいけません。取り組むべき課題自体が刻々と変化する中において、このかじ取りは難作業です。
つまり、今、地域リーダーに求められているリーダーシップという能力は、かなり高レベルな水準であり、それをどのように装着(インプット)するかといった具体的なプロセスが一般化されていないといった根本的な問題が存在するのです。
観光庁では近年、観光業界の中核人材育成に力を入れていますが、この根本的な問題に向き合い、その問題解決に着手していくことが、今、我が国の地方創生戦略で最も重要かつ緊急的なテーマであると考えています。
(明星大学経営学部 特任教授 田原洋樹)
(参考・引用)
古川久敬(2019)『人材育成ハンドブック(2019)』 金子書房
JTB総合研究所ホームページ
「観光用語集」
https://www.tourism.jp/tourism-database/glossary/dmo/