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東京オリンピック ボランティア批判 タダ働き やりがい搾取 暑さ対策 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!

2023年01月04日 17時26分55秒 | 国際放送センター(IBC)
東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 「ただ働き」労働力ではない 
新型コロナウイルス・暑さ対策は? ボランティアの安全・安心は守られるのか? コロナ感染28人 熱中症20人以上発生



新型コロナウイルス(COVID-19) 出典 NYT/NIAID

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大会ボランティアにPCR検査実施 大半は1回だけ PCR検査体体制の杜撰な実態が明るみに 「フィールドキャスト 新型コロナウイルス感染症ガイドライン」組織委公表
* 大会ボランティアの皆さんは必読 詳細資料を添付

ボランティア7万人全員にワクチン接種へ 十分な免疫獲得は間に合わず
 6月26日、東京2020大会組織委員会は、大会ボランティアの全員約7万人にワクチン接種の案内を行うと発表した。  これまでは国際オリンピック委員会(IOC)による米ファイザー社製のワクチン無償提供により、大会関係者、職員、国内メディアなど約3万8000人の接種が進められていたが、都の協力によりモデルナ社製のワクチンや接種会場の確保ができたという。新たな対象となったボランティアは6月30日から7月3日に1回目の接種を行い、2回目の接種は五輪期間中の7月31日からとなる。接種会場 は、1回目東京都築地ワクチン接種センター、 2回目代々木公園内を予定している。
 しかし、モデルナの効果は、2回目の接種から約2週間後程度で十分な免疫が生成されるとされ、7月31日からの2回目の接種では五輪期間中に十分な免疫獲得はできない。
 丸川五輪相は、「まず1回目の接種で、1次的な免疫をつけていただく」と述べて批判を浴びている。
 後手後手に回ったボランティアへの感染防止対策の遅れのツケが顕在化した。

 参加選手や大会関係者、観客などと接触する機会が多く、感染リスクが高いボランティアの「安全・安心」の確保は置き去りにされたと言わざるを得ない。変異株の感染は、20代や30代の若者を中心に広がっている。
 選手団には、ワクチン接種、毎日の検査、選手村でのバブル環境、競技場には専用バスで送迎、相当のレベルのコロナ感染防止対策が講じられる。一方、ボランティアは、毎日、公共交通機関を使用し、人によっては片道、1~2時間かけて競技会場などに1週間以上通う。宿泊施設が必要な場合は、自力で確保する。市民と接触する場も多く、破格に感染リスクが高い。しかしその格差はあまりにも大きすぎる。
 ボランティアの「安全・安心」を確保するのは組織委員会の当然の責務だ。
 また都市ボランティアはワクチン接種や検査の対象にまったく入っていない。

ボランティア1万人辞退 コロナ感染不安

ファイザー社とビオンテック社、東京五輪選手にワクチン寄贈
 5月8日、国際オリンピック委員会(IOC)は、米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが今夏の東京五輪・パラリンピックに出場する各国・地域の選手団向けに、共同開発した新型コロナウイルスワクチンを寄贈することで合意したと発表した。
 日本オリンピック委員会(JOC)は、日本選手団への接種を6月1日に開始した。医療現場への影響を考慮し、競技団体ごとにチームドクターなどへ接種業務を依頼するよう指示をしたという。
 五輪とパラで選手1000人程度、監督・コーチ1500人程度の計約2500人が対象で、6月中の完了を想定している。
 検査体制については、感染防止対策などのルールをまとめた「プレーブック(規則集)V2」で、選手は毎日検査することが明記された。選手団に同行する監督やコーチらなどの関係者も毎日検査を受けることになった。

組織委のコロナ対策 「感染症対策リーフレット」と「マスク」、「消毒液」、「体調管理ノート」だけ
 3月1日、東京2020大会組織委員会は、ボランティアの新型コロナ対策として、日本ボランティアサポートセンターが制作協力した「感染症対策リーフレット」を始め、選択可能なマスク2枚、携帯用アルコール消毒液、体調管理ノートをボランティアに配布すると発表した。
▼ 「感染症対策リーフレット」
「基本行動」として、マスク着用、手洗い・消毒、フィジカルディスタンス(2m)の確保を上げる。
 そして「活動の場面の注意」として、「食事中・休憩中」は、密を避けて、会話を控え、なるべくマスク着用とし、「観客や仲間のコミュニケーション」では、握手・ハイタッチはしない、「観客の手荷物・写真撮影」では、使い捨て手袋着用を推奨する。
 活動中は、密集の回避、共用品の除菌、換気が重要とし、活動前には体調管理ノートをつけて体調の自主管理をすることとした。
 記載されている内容は、ごくごく一般的な感染防止対策を記載しているだけに過ぎない。
 この程度では大会組織委員会がボランティアの感染防止対策を本気で考えているどうか疑問が大きい。「安全・安心」とはほど遠いのは明らかである。


「感染症対策リーフレット」 出典 TOKYO2020

 組織委員会は、競技会場などで活動する大会ボランティア約8万人のうち、約1万人が辞退したことを明らかにした。理由は個別に聞き取っていないというが、「新型コロナウイルスの感染拡大に対する不安があるのは間違いない」と述べている。
 応募したボランティアの皆さんは、大会組織委員会のコロナ対策に不安を感じたら、辞退をして欲しい。大会運営に関わるボランティアは感染リスクは高い。各持ち場でしっかりした感染防止体制がとられているかどうか、是非、見極めて欲しい。

森会長、女性蔑視発言 ボランティアの辞退相次ぐ
 2月3日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は、JOC臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は、時間がかかります」「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」などと発言した。この発言に対して出席者で異論を唱える人はいなく、笑い声が出たとされている。
 森氏の発言は、女性を蔑視したと受け取られ、国内内外から激しい批判を浴びた。
 翌2月4日、森会長は記者会見を開き、女性を蔑視したと受け取れる発言をしたことについて、「深く反省している。発言は撤回したい」と謝罪した。会長職については「辞任する考えはない」と述べた。
 質疑応答では「女性が多いと時間が長くなるという発言を誤解と表現していたが、誤った認識ではないのか」との質問に、「そういう風に(競技団体から)聞いておるんです」などと答え、競技団体全体にこうした認識が広がっていることを示唆した。
 これに対して、組織委員会は8日、4日以降に大会ボランティア(約8万人)辞退申し出が、約390人に上り、2人が聖火リレーランナーへの辞退を申し出たと発表した。組織委は辞退理由を公表していないが、3日に森喜朗会長が女性蔑視の発言をした影響とみられる。
 また、東京都は都市ボランティア(約3万人)の辞退申し出が93人になったと発表してている。
 こうしたボランティア辞退の動きについて、自民党の二階俊博幹事長は8日の会見で、「瞬間的」なもので、「落ち着いて静かになったら、その人たちの考えもまた変わる」と語った。今後の対応については「どうしてもおやめになりたいということだったら、また新たなボランティアを募集する、追加するということにならざるを得ない」と述べ、「そのようなことですぐやめちゃいましょうとかとかいうことは一時、瞬間には言っても、協力して立派に仕上げましょうということになるんじゃないか」と発言した。
 組織委員会では「五輪大会開催の成否は『大会の顔』となるボランティアの皆さんにかかっている」と高らかに唱えている。開催を半年に控えている中で、約11万人のボランティアの人たちの思いを踏みにじった女性蔑視発言、森会長の責任は重い。


オリンピックの延期を決めたバッハ会長は「東京五輪がウイルスに打ち勝った象徴的な祝典になることを願う」と述べたが…… 出典 IOC NEWS 3月30日




緊急課題 ボランティアの暑さ対策はどうなる? 五輪史上最大級の猛暑に警戒

 1999年の夏は、梅雨明けは例年に比べて遅かったが、梅雨明け後は、一転して猛暑が続き、夜になっても気温が下がらず、連日熱帯夜となった。
 来年の東京五輪大会開催期間(7月24日~8月9日)も同様の猛暑が予想され、とりあけ都心は、ヒートアイランド現象による気温上昇に加えて湿度も高く、過去の大会で最も厳しい「酷暑五輪」になると思われる。
 TOKYO2020を見据えて、1999年7月から8月にかけて、本番の大会運営を検証するためにテストイベント、「READY STEADY TOKYO TEST EVENTS」が相次いで開催された。
 7月には、近代五種(武蔵野の森総合スポーツプラザ)やウエイトリフティング(東京国際フォーラム)、アーチェリー(夢の島公園アーチェリー場)、自転車競技
(ロード)(スタート:武蔵野の森公園、ゴール:富士スピードウェイ)、バドミントン(武蔵野の森総合スポーツプラザ)、ビーチバレー(潮風公園)、8月になって、ボート(海の森水上競技場)、馬術(海の森クロスカントリーコース、馬事公苑)、ゴルフ(霞ヶ関カンツリー倶楽部)、マラソンスイミング(お台場)、トライアスロン(お台場)、セーリング(江の島ヨットハーバー)の競技大会が開かれた。
 テストイベントを行う中で、明らかになった最大の問題は、「暑さ対策」である。またトライアスロン(水泳)やマラソンスイミングでは水質や水温の問題が浮かび上がった。

連日暑さ指数31°C超「危険」
 環境庁のデータによると、テストイベントが集中した8月11日の週の暑さ指数(WGBT 環境省発表)は、31.6°C(11日)、31.2°C(12日)、32.4°C(13日)、31.4°C(14日)、31.4°C(15日)といずれも31°Cを超え、16日は台風10号の影響で、30.4°C、17日は逆にフェーン現象で33.5°Cと今年最高を記録した。
 環境省の指針によると、31°C以上は、「危険」とし、「すべての生活活動でおこる危険性」があり、「高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」としている。
 8月11日からの1週間はほぼ連日「危険」の猛暑続いたのである。
 
 記録的な猛暑は、五輪大会開催にとって大きな脅威となった。
 出場する選手は勿論、大会関係者、大会を支えるボランティア、そして競技場を訪れる大勢の観客、十分な暑さ対策を実施しないと熱中症で体調を崩す人が続出する懸念が大きい。
 
猛暑の直撃を受けるボランティア
 猛暑の直撃うけるのは、大会の運営を支えるボランティアである。大会組織委は競技会場や選手村などで競技や運転など各種運営をサポートする「大会ボランティア」8万人、東京都は空港や駅、観光地で、国内外から訪れる人たちへ観光や交通の案内を行う「都市ボランティア」3万人を確保する計画である。

 この内、特に猛暑のダメージが大きいのは、屋外で行われるビーチバレーやボート、カヌー、トライアスロン、馬術クロスカントリー、アーチェリー、セーリング、ウインドサーフィン、それにマラソンや競歩、自転車(ロード)などの大会ボランティアである。長時間、猛暑の炎天下で業務にあたらなければならない。
 屋内のアリーナで開催される競技についても、観客整理、交通整理などで大勢のボランティアが炎天下で業務になる。

 五輪大会テストイベントが行われた海の森公園から帰るバスに乗り合わせたボランティアの人が、「この暑さはもう体力の限界を超える。テストイベントは本番の半分の時間、これが二倍になるになると耐えられない。是非、シフト体制を考えてもらいたい」と話していた。
 まさにボランティアの「命を守る」ための施策が迫られているのである。

ボランティアの「命を守る」対策を
 来年の夏も猛暑は避けることができないだろう。
 ボランティアを猛暑から守るためには、炎天下で業務にあたる時間を短くするほかないだろう。それぞれの担当セクションで、配置ボランティアの数を倍に増やし、休憩時間を大幅に増やすシフト体制を組む必要があるだろう。1時間、炎天下で業務に従事したら、1時間は冷房完備のシェルターで休憩する。ボランティアの「命を守る」ためには必須の条件となってきた。
 また、大会ボランティアを志望した人には、高齢者や家庭の主婦、いつも冷房の効いたオフイスで仕事をしているサラリーマンなど、猛暑の中の業務に慣れていない人が大勢いると思われる。炎天下、体感温度は35度を楽に超え、強烈な日差しが照り付ける。その中でのボランティア業務である。

 さらに問題なのは、暑さ対策、競技の開始時間が次々と早められ、早朝に競技開始が変更されていることだ。マラソンは午前6時、男子50キロ競歩は午前5時30フィン、ゴルフも午前7時、さらに今回のテストイベントの結果を踏まえて、オープンスイミングでは午前5時開始、トライアスロンも7時30分開始を検討している。今年の猛暑を鑑みて、その他の競技の開始時間も早められる可能性は大きい。
 かりに7時競技開始の会場のボランティアになると、その2時間前程度、午前5時前には会場に集合し、配置につく準備をしなければならない。自宅を出発するのは3時過ぎになるだろう。連日、3時起きで半日から1日、炎天下にさらされたら、ほとんどの人が体力の限界に達する。そもそも交通機関が動いていないので早朝に会場に来ること自体が不可能になる可能性が大きい。前日の終電で会場に入り、徹夜で朝まで周辺で待機することになるだろう。それも1日だけでなく、競技によっては10日以上は続く。今は所待機場所を確保していると情報はない。熱帯夜が連日続く中で徹夜での待機、それこそ人権問題である。大会ボランティアは「一日8時間以上、10日間以上」、こうした中で業務を行わなければならないのである。
 ボランティアに応募した人たちは、猛暑の中での業務の過酷さを冷静に見つめて欲しい。猛暑は確実に来年もやってくる。
 炎天下の仕事に自信のない人は、屋外での業務は断り、室内の涼しい場所への配置転換を希望しよう。また、集合時間を確認して、始発電車に乗っても間に合わない場合は変更を希望しよう。勿論、業務シフトや休憩時間を確認しよう。「命を守る」ための選択だ。
 大会ボランティアの場合は、「10日間以上」が条件となっている。ボランティアに応募した皆さん、連日暑さ指数、31°Cを超える中で、10日間以上、炎天下でボランティアを続ける自身がありますか? 
 奉仕精神に溢れた高い志を持ってボランティアに応募した人たちを猛暑から守る責任が課せられたのは大会組織委員会である。まさか、暑さ対策は「自己責任」とは、大会組織委員会は言わないと信じたい。同様の対応は都市ボランティアを募集した東京都にも求められる。
 あと1年、暑さ対策は早急に手を打たなければならない緊急課題となった。


暑さ対策ではついに「降雪機」も登場 海の森水上競技場 筆者撮影 9月13日


清涼感を味わえる程度で気温を下げる効果はない 報道陣に公開した実験では300kgの氷を使用してわずか5分間で終了


ビーチバレーの会場(潮風公園)の入り口に設置されたミスト 観客のラストワンマイル(駅から会場までの間)の暑さ対策で設置 ミストにあたっている間は涼しさを感じるが熱中症防止の体全体を冷やす効果はない  筆者撮影 2019年7月25日


ビーチバレーの会場内に設置された休憩所 テントの中は冷房されている こうした休憩所を各競技場に多数設置する必要がある 筆者撮影 2019年7月25日





五輪ボランティア説明会・面談会場 東京スポーツスクエア 東京都千代田区有楽町
8万人採用 12万人不採用 
  2019年9月12日、大会組織委員会は、書類選考と面談による「第一次選考」(マッチング)が終了し、大会ボランティア(フィールドキャスト)約8万人が決まったと発表した。応募した人は、約20万人、12万人が不採用となった。月内に、応募した約20万人全員に結果を通知するという。
 大会組織委員会によると、採用された人の約6割は女性で、40~50歳代が約4割に上った。応募段階では全体の36%だった20歳代は、面談への出席率が低く、採用は16%だった。
 また外国籍の人は12%で、中国、韓国、英国など約120の国と地域から採用された。
 採用された人は10月から共通研修に参加して、来年3月以降に具体的な役割と活動する会場が決まる。

五輪ボランティア説明会始まる 480名が参加
 2019年2月9日、2020東京五輪大会の応募者に対する説明会と面談が、東京都千代田区有楽町の東京スポーツスクエアで始まった。こうした説明会と面談は、北海道から九州まで全国11か所で7月末まで開かれる。
 この日は、首都圏は雪に見舞われたが、大会ボランティア(フィールドキャスト)が360人、都市ボランティア(シティキャスタト)が約120人、合わせて約480人の応募者が参加した。
 説明会は、活動内容やスケジュールについての説明をするオリエンテーションだけでなく、応募者同士の自己紹介やクイズ、ゲームなども交えて和やか雰囲気の中で進められ、ボランティア同士のコミュニケーションを図った。
 その後、大会組織委員会の担当者は応募者との面談を行い、第一回目のマッチングの審査を実施した。20万人を超える応募者から8万人に絞り込む「第一次選考」である。「第一次選考」でどの程度の絞り込みが行われるかは大会組織委員会では明らかにしていない。
 マッチングが成立した応募者には、9月頃までに研修のお知らせのメールが、順次、送付され、次の段階に進んで2019年10月から始まる共通研修に臨む。いわば「第二次選考」である。この段階で約8万超程度に絞り込みが行われると思われる。
 共通研修終了後、2020年3月以降に、大会ボランティアについては、「役割・会場のお知らせ」、都市ボランティアについては「採用通知」が送付されることで、最終的にボランティアとして採用されるかどうかが決められる。採用されたボランティアは、2020年6月から、大会ボランティアについては会場別研修、都市ボランティアについては配置場所別研修を受ける。
 なお海外在住の大会ボランティア応募者、約7万人については、2019年3月から7月にかけてテレビ電話等でオリエンテーションで行る。事実上の選考であるマッチングの審査は個別に連絡を取りながら実施すると思われるが、面談を行わないので作業は難航が予想される。マッチングが成立して採用された応募者は、来日して2020年6月以降に実施される会場別研修から参加する。渡航費用も必要となるので、果たして何人が実際に会場別研修に参加するのか懸念は残る。


大会ボランティアの受付 都市ボランティアの受付は背中合わせの隣に


大会ボランティアの説明会


都市ボランティアの面談 大会組織委員会担当者2名と応募者2名が一つのテーブルで面談


大会ボランティアの面談 事実上の「面接試験」 説明会とは違って応募者は緊張した表情


面談会場にはボランティアのユニフォームや帽子、靴が展示 試着可能


都外の説明会と面談開催スケジュール 東京スポーツスクエアでは、2月9日から5月下旬まで、90日程度開催予定


出典 東京2020大会組織員会

東京2020大会ボランティア 応募完了者20万4680人
 2019年1月25日、大会組織委員会は東京2020大会ボランティアについて、視覚に制約のある方等の募集を締め切り(2019年1月18日)、応募者完了者の合計は、204,680人となったとした。
 応募者の構成については、男性が 36%、女性が 64%、国籍は、日本国籍64%、日本国籍以外 36%、活動希望日数は、10日未満 2%、10日 37%、11~19日 33%、20~29日 12%、30日以上 16%としている。
 日本国籍以外の外国人が約4割近くも占め、応募完了者の総数を押し上げに大いに貢献した。活動希望日数が多かった理由も日本国籍以外の応募者が多かったことが上げられるだろう。
 昨年12月21日に募集は締め切られたが、応募登録手続きのプロセスにトラブルが発生し、約2万6000人が登録できなかった可能性があることが明らかになった。
 募集最終日にアクセスが集中し、応募者に最終認証用の電子メールが送れないなどの不具合が発生したのが原因とした。
 大会組織員会は、これまでに対象者には個別に連絡を取り、手続きの完了を依頼するなどの対応を完了した。

 応募完了者には、2019年1月からオリエンテーションの案内が送られ、2月以降、東京、大阪、名古屋など全国12カ所で面接や説明会などのオリエンテーションが始まる。そして応募者の希望活動分野とのマッチング(すり合わせ)が行われ、共通研修を受ける人の採用可否が決まる。採用された人は、10月以降に共通研修が行われ、2020年3月に正式に採用が決まり、活動場所や役割が通知される。

都市ボランティア、応募者は3万6649人 2万人の募集枠を大幅に上回る 
 2018年12月26日、東京都は2万人の募集枠に対し、3万6649人の応募者があったことを発表した。
 約1カ月前の11月21日では、応募者は1万5180人にとどまり、まだ約5000人足りなかったが、終盤になって一気に応募者が増え、1週間前の12月19日に発表した応募者数は2万8689人と募集枠の2万人を上回った。さらに最後の1週間で約1万人の駆け込み応募があった。
 応募者の性別は、男性が約40%で女性が60%で、幅広い世代に広がっているという。また外国籍の応募者は約10%とした(小池都知事 12月17日)。
 2019年1月には、応募者に対して案内状が送られ。2月から面接・説明会などのオリエンテーションが始まる。そして共通研修を受ける人の採用者が決まり、採用された人は9月から共通研修を受ける。2020年3月に、正式に採否が決まり、採用された人には活動場所や活動内容が通知される。
 
 12月21日、都教育委員会は、「都市ボランティア」の募集をめぐって、ある都立高校で担任の教諭がクラスの生徒に応募用紙を配り、「全員出して」と言っていたを明らかにした。担任の教諭に強制する意図はなかったとする一方、「強制と感じた生徒もいるようで、参加は任意だという説明が足りなかった」と指摘した。
 「都市ボランティア」は」、2020年4月時点で18歳以上の人が参加可能だ。募集締め切りの直前、12月19日にツイッター上で応募用紙の写真を添えて「とりあえず書いて全員出して!って言われたんだけど都立高の闇でしょ!」との投稿があり、「学徒出陣だ」といったコメントとともに拡散したという。(朝日新聞 12月22日)

東京2020大会ボランティア、目標の8万人達成 外国籍の応募者44% 新たな課題浮上
 2018年11月21日、大会組織委員会は、大会ボランティアの応募者が、20日午前9時時点で8万1035人に上り、目標の8万人を達成したと発表した。 注目されるのは応募者の44%が外国籍で半数近くに達したことである。希望活動分野は「競技」が最も多く、「式典」「運営サポート」も人気が高かった。これに対して「移動サポート」などは希望者が少なく12月21日まで募集を継続するとしている。
 大会ボランティアの募集は2018年9月26日に開始し、当初は「1日8時間程度、合計10日以上」といった応募条件が「厳しすぎる」との懸念が出ていたが、2カ月弱で目標に達した。
 応募完了者の8万1035人に対し、応募登録者は132,335人に達している。
 募集にあたっては、英語サイトも開設し応募を受け付けた。日本語を話せることは条件はない。結果、外国籍に応募者が半数近くの44%にも達した。 
 大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は「多くの方に応募していただき、感謝している」と述べた上で、外国籍の人が多かった理由については「確たることを言うのは難しい。海外でのボランティア活動への積極的な受け止め方もあるのだろう」との見方を示し、「(応募者と活動内容の)マッチングを適切にしたい」と語った。
 組織委によると過去の大会では、採用された外国籍の人の割合は10%以下が多かったという。
 応募者の全体で見ると、男女別では女性が60%、男性が40%。年齢層は20代が最多の32%で、10代から80歳以上まで幅広い年代にわたった。
 しかし、日本国籍の応募者に限ると50代(22%)が最も多く、20代(12%)、30代(11%)は少なかったという。
 応活動希望日数は、10日が33%、11日以上が65%で、30日以上が19%となっている。
 応募締切は、2018年12月21日(金)17時だが、視覚に制約がある応募者は、2019年1月18日(金)17時の締切(専用の応募フォーム提出期限)となっている。

 東京2020大会のボランティア募集がこれだけ海外から注目を浴びたのは喜ばしいことではあるが、日本語を話せることが条件ではないため、活動分野のカテゴリーによっては、大会関係者とのコミュニケーションがうまく行かない懸念も生じる。また、「土地勘」がない場所でのボランティア体験には、ボランティア自身がとまどう状況も十分想定しなければんらない。
 さらに、国内籍の応募者は、2019年1月~7月の間にオリエンテーション(説明会・面接)や2019年10月からは共通研修、2020年4月からは役割別・リーダー研修、そして6月からは会場別研修に参加しなければならないが、外国籍の応募者は2020年6月の会場別研修から参加すれば良いことになっている。明らかに日本籍と外国籍の応募者の間には研修内容に有意差があり、十分なトレーニングが行うことができるか疑念が残る。(下記 ボランティアジャーニー参照)
 大会運営上の観点だけで考えると、日本国籍の応募者を主体にする方が効率的かもしれない。
 また来日する外国籍のボランティアに対して、宿泊などは自己責任としながらも、大会組織委員会はきめ細かなサポート体制を整える必要も迫られてきた。
 外国籍のボランティア、長期に渡る滞在施設の確保や航空券の手配などハードルが高いため、ボランティアに採用されても来日を断念するケースも多発する懸念がある。
 大会組織委員会では、「マッチングを適切にしたい」とし、暗に外国籍ボランティアの採用を厳しく審査する方向性を示唆している。
 しかし、応募者の半分近くに達した外国籍のボランティアの採用数が、日本国籍と外国籍との間で大幅な格差が生じた生じると、国際社会からは「差別」だと見られて大きな批判を招く可能性がある。大会組織委員会が採用の審査を適切に実施した結果だと説明にしても、審査の結果、外国籍の採用数が何人になるかが問われることになるだろう。外国籍のボランティアの採用数を抑えることは、国境を越えた連帯を掲げるオリンッピク精神に明らかに背くことになる。
 「外国籍の応募者44%」、大会組織委員会は大きな難題を抱えた。 

東京2020競技会場マップ


都市ボランティアの募集 出典 東京都
東京都は広瀬すずが出演したボランティアの募集のCMの制作に約4000万円かけた。



ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!


東京2020大会ボランティア募集開始
 2018年9月26日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会と東京都は、大会を支えるボランティアの募集を開始した。インターネットなどで12月上旬まで応募を受け付け、計11万人の人員確保を目指す。
 大会組織委は競技会場や選手村などで競技や運転など各種運営をサポートする「大会ボランティア」8万人、東京都は空港や駅、観光地で、国内外から訪れる人たちへ観光や交通の案内を行う「都市ボランティア」3万人を募集する。
 「都市ボランティア」3万人の内、1万人は東京都観光ボランティアや2019年に開催されるワールドカップで活動したボランティア、都内大学からの希望による参加者、都内区市町村 からの推薦者(5,000 人程度)などが含まれるとしている。
 対象は20年4月1日時点で18歳以上の人。原則として大会ボランティアは休憩や待機時間を含めて1日8時間程度で計10日以上、都市ボランティアは1日5時間程度で計5日以上の活動が条件となる。
 食事やユニホーム、けがなどを補償する保険費用は支給され、交通費補助の名目で全員に1日1000円のプリペイドカードを提供するが、基本的に交通費や宿泊費は自己負担となる。また、大会ボランティアは希望する活動内容を三つまで選択できるが、希望順を伝えることはできない。
 ボランティアの応募者は、書類選考を得て、説明会や面接、研修などに参加した後、2020年3月頃に最終的に採用が決まる。4月からは役割や会場に応じて複数回の研修を受けて、7月からの本番に臨む。
 いずれもユニホームや食事が提供されるほか、交通費についても有識者会議で「近郊交通費ぐらいは出せないか」との意見が出たため、1日1千円のプリペイドカードを支給するこことが決まった。
 応募期間は12月上旬までとしているが、必要数に達しない場合は再募集も行う。
 大会ボランティアは組織委ホームページ(https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/)から、都市ボランティアはボランティア情報サイト「東京ボランティアナビ」(http://www.city-volunteer.metro.tokyo.jp/)などで申し込みができる。
 組織委と都は26日午後1時の募集開始に合わせ、新宿駅西口広場でPRチラシを配布し、応募を呼びかけた。
 募集担当者は「今後はボランティアに関する情報をきちんと伝えていきたい。大会を自分の手で成功させたいと思っている人にぜひ応募してほしい」と話している。
 しかし、東京2020大会ボランティア募集については、早くから「10日以上拘束されるのに報酬が出ない」とか「交通費や宿泊費が自己負担」などの待遇面や募集条件が厳しいことで、「タダ働き」、「やりがい搾取」、「動員強制」との批判が渦巻いている。
 東京オリンピックは、果たしてボランティアが支える対象としてふさわしい大会なのだろうか、疑念が湧いてくる。

大会ボランティアの活動内容は?
 大会ボランティアは、競技会場や選手村、その他の大会関連施設で、観客サービスや競技運営のサポート、メディアのサポート等、大会運営に直接携わる活動をする。
 大会ボランティアの活動分野は9つのカテゴリーに分かれている。








出典 2020東京大会組織員会 募集リーフレット 

大会ボランティアは「経験」と「スキル」を要求する業務 ボランティアの役割の域を超えている
 大会ボランティアの活動分野の内、「案内」(1万6000人~2万5000人)は、“日本のおもてなし”の思いやりあふれたホスピタリティを実現させるサービスとして、ボランティアの本来活動分野としてふさわしいだろう。また「式典」(1000人~2000人)も同様と思える。
 しかし、「競技」(1万5000人~1万7000人)、「移動サポート」(1万人~1万4000人)、「アテンド」(8000人~1万2000人)、「運営サポート」(8000人~1万人)、「ヘルスケア」(4000人~6000人)、「テクノロジー」(2000人~4000人)、「メディア」(2000人~4000人)ともなると、相応の経験をスキルが要求され、明らかにボランティアの活動領域を超えている。大会運営に関わるまさに根幹業務で基本的に大会スタッフが担当すべきだ。
 「運営サポート」では、IDの発行もサポートするとしているが、IDの発行は、セキュリティ関わるまさに重要な業務で、個人情報の管理も厳しく問われる。ボランティアが携わる業務として適切でない。組織委員会が責任を持って雇いあげた大会専任スタッフが行うべきだ。
 また「案内」のセキュリティーチェックに関わる業務もボランティアがやるべきではない。大会専任スタッフが担当すべきだ。
 「競技」では、競技の運営そのものに関わるとしているが、これは競技運営スタッフが行うものでボランティアが担う役割ではないだろう。競技運営スタッフは事前に十分なトレーニングと習熟を得なければならない。当然、経験とスキルが要求される。
 「移動サポート」は、運転免許証を要求するので、「補助」ではなく、「ドライバー」なのである。大会開催時には、組織委員会は輸送バス2200台、輸送用車両2500台を運行する予定で、ドライバーなどの輸送支援スタッフを3万人/日を有償で確保する。さすがに輸送用バスをボランティアのドライバーが運転することはないだろうが、8人乗り程度のVANの運転はボランティアに頼ることになりそうだ。大会車両の運転は安全性の確保の責任が大きく、運転はボランティアではなく、大会運営スタットとして雇われた「ドライバー」が担うべきだ。安易なボランティア頼みは問題である。
 海外からの選手が多い五輪大会の「アテンド」は語学のスキルが要求される。英語はもとより、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、韓国語、アラビア語、多様な言語のスキルを持ったスタッフを揃えなければならない。言語のスキルを持つ人に対しては、スキルに対して相応の報酬を払うが当然だ。
 例えば、大会スタッフとして雇用された通訳には1日数万円の報酬が支払わられ、その一方でボランティア通訳は「ただ働き」、これは差別としかいいようがない。スキルと経験に差があるというなら、スキルと経験や業務内容に応じて報酬は支払うべきだろう。仕事の内容は程度に差はあれほぼ同一なのに、「現場監督」は有償で、「部下」はボランティアという名目で「タダ働き」、あまりにも理不尽である。
 「ヘルスケア」、「テクノロジー」はまさに専門職のスキルが必要で、ボランティアの活動領域に当たらない。
 「メディア」対応も、運営スタッフの専門領域だ。もっともメディアの人混み整理程度の仕事ならボランティアで可能だろう。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、2013年から2016年の期間(ソチ五輪、リオデジャネイロ五輪)に、世界の放送機関から41億5700万ドル(約4697億円)という巨額の放送権料を手に入れている。国際オリンピック委員会(IOC)や組織員会は、責任を持ってメディア対応スタッフを有償で雇い上げて、メディアにサービスをしてしかるべきだ。

 大会の運営にあたって、組織委員会はさまざまな分野で大勢の大量の大会運営スタッフを雇い入れる。輸送、ガードマン、医師・看護婦、通訳、競技運営、その数は10万人近くになるだろう。大会運営スタッフは、業務経験やスキル、業務内容に応じてその待遇は千差万別だが、報酬が支払わられ、交通費や出張を伴う業務を行う場合には宿泊費、日当も支払われるだろう。
 業務内容に程度の差はあれ、ほとんど同じ分野の業務を担って、ボランティアは無報酬で「タダ働き」、交通費も宿泊費も自己負担というスキームは納得がいかない。有償の大会運営スタッフとボランティアの差は一体なにか、組織委員会は果たして明確に説明でるのだろうか?

ウエッブの応募サイトを開くと更に疑問が噴出 
 「東京2020大会ボランティア」の応募登録サイト(https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/method/)
を開くと、まず驚くのは「応募フォームの入力には約30分かかります」という注意書きが赤い文字で書かれていることだ。
 入力フォームは、STEP 6まであり、入力しなければならない情報はかなり多い。
▼ STEP1 氏名、性別、生年月日、写真、必要な配慮・サポート 等
▼ STEP2 住所・連絡先、緊急連絡先 等
▼ STEP3 ボランティア経験、就学・就労状況
▼ STEP4 語学、スポーツに関する経験、運転免許証の有無 等
▼ STEP5 希望する活動(期間、日数、場所、分野) 等
▼ STEP6 参加規約・プライバシーポリシーへの同意
 STEP 1とSTEP2は、常識的な入力項目だが、STEP3になると、これがボランティア応募の入力フォームかと疑念がわき始めた。
 STEP3では、「ボランティア経験がありますか?」とボランティア経験が聞かれる。
 「はい」と答えると、「ボランティア経験の種類」、「活動内容」が聞かれる。
 また「ボランティアリーダーの経験ありますか?」と聞かれ、同様に「活動内容」が訊ねられる。
 さらにスポーツに関わる活動を選択した人に対しては、「国際レベルの大会に選手として参加」、「全国レベルの大会に選手として参加」、「その他の大会に選手として参加」など選手として競技大会に参加経験があるが聞かれる。
 そして「審判としての経験」、「指導経験」、「競技運営スタッフとしての経験」などが問われる。
 語学のスキルや希望する活動分野(10項目から選択)についても聞かれる。
 これを元に書類選考し、まずふるいにかけるのである。

 この「応募フォーム」はまるで大会スタッフ応募のエントリーシートのようである。就職試験のエントリーシートとも見間違う。
 業務経験とスキルを重視する姿勢は、善意と奉仕を掲げるボランティア精神とはまったくかけ離れている。
 やはり、「大会ボランティア」の募集とは到底考えられず、「大会スタッフ」の募集フォームなのである。
 本来は、大会スタッフとして、報酬を払い、交通費、宿泊費を支払って雇用すべき業務分野なのである。
 それを「ただ働き」させるのは、筆者はまったく納得がいかない。
 「大会ボランティア」は善意と奉仕の精神を掲げボランティアの活動領域ではない。ボランティアに応募する善意と奉仕の精神に甘えきった「やりがい搾取」である。

事前の説明会、研修で大幅に拘束されるボランティア
 ボランティアとして採用されるには、事前に何回も説明会や研修に参加することが義務付けられている。
 大会ボランティアの場合、2019年1月から7月頃までに、オリエンテーション(説明会)や面談に呼び出される。
 10月からは共通研修が行われ、2020年4月からは役割別の研修やリーダーシップ研修が始まる。6月からは会場別の研修が行われ、ようやく本番に臨むことになる。
 実は、ボランティアとして活動するためには、オリンピック開催期間中に最低10日間(都市ボランティアは5日間)を確保すれば済むわけではないのである。頻繁に、説明会や面談、研修などに参加しなければならない。そのスケジュールは、現時点ではまったく不明で、組織委員会の都合で、一方的に決められるだろう。
 約1年半程度、あれこれ拘束されるのである。
 仮に地方からボランティアとして活動しようとしている人は、そのたびに交通費や宿泊費などの自己負担をしいられる。首都圏在住の人も交通費は負担しなければならないし、なによりスケジュールを空けなければならない。1日1000円のプリぺードカードが支給されるかどうかも不明だ。
 組織委員会が雇い上げる大会スタッフには、事前のオリエンテーション(説明会)や研修に対しても1日いくらの報酬が支払わられるだろう。
 要するに、大会開催経費を圧縮するために、ボランティアというツールを利用する構図なのである。
 「オリンピックの感動を共有したい」、「貴重な体験をしたい」、「人生の思い出に」、ボランティアに応募する人は、善意と奉仕の精神に満ち溢れている。
 こうしたボランティアの人たちへの「甘え」の構図が見えてくる。
 やはり、「やりがい搾取」という疑念が筆者には拭い去れない。
 ボランティアは「自発的」に「任意」で参加しているから問題ないとするのではなく、オリンピックが「やりがい搾取」という構図で成り立っていることが問題なのである。
 無償のボランティアが11万人も働く一方で、オリンピックというビック・ビジネスで膨大な利益を上げている企業や最高で年間2400万円とされる高額の報酬を得ている組織委員会関係者を始め、ボランティアとほぼ同様の業務を担う有償で雇う膨大な数の大会スタッフが存在することが問題なのである。
 ちなみに森組織委会長は、報酬を辞退して、「ボランティア」として大会組織委員会業務を担っている。
 
 
出典 2020東京大会組織員会 募集リーフレット 

都市ボランティアは、ボランティアにふさわしい活動領域
 経験とスキルが要求される大会ボランティアに比べて、東京都が募集している都市ボランティアの活動領域は、本来ボランティアが担うのにふさわしい領域だろう。世界最高の「おもてなし」、優しさあふれたホスピタリティ、まさに東京大会レガシーにしたい。世界各国や日本各地から東京を訪れる人たちに、東京のよさをアピールする恰好の機会だ。
 筆者も海外各国を出張や旅行でたびたび訪れたが、初めての都市では、地下鉄やバスの切符の買い方、目的地までの道順など戸惑うことがたびたびである。空港や駅、繁華街、観光地、競技場周辺など、ボランティアが活躍する場は多い。
 外国人に接する場合も、簡単な日常会話ができれば問題なく、高度な語学力の専門知識も不要で、年齢、職業、スキルを問わず活動ができる。
 「5日間以上」とか事前の説明会や研修等への出席などの要求条件は若干厳しいが、ボランティアの本来の概念に合致している。
 東京大会でボランティアの参加を目指す学生の皆さん、「ブラックボランティア」の疑念が多い大会ボランティアでなく、都市ボランティアを目指すのをお勧め!

「企業ボランティア」はボランティアではない
 9月7日、大会ボランティアとして参加予定の社員324人を集めてキックオフイベントを開いて気勢を上げて話題になった。
 富士通は東京大会に協賛するゴールドパートナーで、語学力などなどを生かしたボランティア活動を社員に呼びかけ、手を挙げた約2千人から選抜したという。
 今後、リーダー役を担うための同社独自の研修や、他イベントでの実地訓練などを行う予定という力の入れようだ。
 ボランティア活動には積み立て休暇や有休を利用して参加してもらう予定だという。
 富士通の広報担当者は「当社はこれまでにも、さまざまなボランティア活動に参加しており、今回もボランティア活動を通じて良い経験を積んで、仕事に生かして欲しい」と話している。
 大会組織委員会は、8万人のボランティアの公募に先だって、大会スポンサーになっている45社の国内パートナーに1社当たり300人のボランティアを参加してほしいと要請を出したという。公募だけで8万人を確保するのが難しいと考えたと思える。

 しかし、冷静によく考えてみると、富士通のボランティアは、「企業派遣ボランティア」で、本来のボランティアではなく、企業のイメージアップを狙う「社会貢献」の範疇だろう。富士通のボランティアは、休暇を利用するにしても、有給休暇で、給料は保証されているである。
 大会組織委員会には、電通、JTB、NTT、東京都などから派遣されたスタッフが大量に働いている。いずれも、組織委員会からは報酬を受け取っていない。しかし、給料は派遣元の組織からしっかり支払われているので「奉仕」でもなんでもない。
 電通、JTB、NTTからボランティアが参加したにしても、富士通のボランティアと同様に給料はしっかり保証されている。さらに、こうした企業は、大会開催の業務を組織員会から受注し、数千億円の収入を得る「業者」なのである。
 もはや、そこには善意も奉仕も感じ取ることはできない。
 巨大なオリンピック・ビジネスの一端を担っている企業のビジネス活動の一環と見なすのが妥当だろう。

「平成の学徒動員」? 文科省とスポーツ庁 ボランティア参加を促す通知
 7月26日、文部科学省とスポーツ庁は、東京オリンピックのボランティアの参加を促す通知を全国の大学や高等専門学校に出した。
 通知では、東京オリンピックのボランティアの参加は、「競技力の向上のみならず、責任感などの高い倫理性とともに、忍耐力、決断力、適応力、行動力、協調性などの涵養の観点からも意義がある」とし、「学生が、大学等での学修成果等を生かしたボランティア活動を行うことは、将来の社会の担い手となる学生の社会への円滑な移行促進の観点から意義がある」とした。そして「特例措置」として、東京オリンピック・パラリンピックの期間中(2020年7月24日~8月9日、8月25日~9月6日)は、「授業・試験を行わないようにするため、授業開始日の繰上げや祝日授業の実施の特例措置を講ずることなどが可能であり、学則の変更や文部科学大臣への届出を要しない」とした。
 学生がボランティアに参加しやすくするために、大会期間中は授業は休みにし、期末試験も行わなず、連休などの祝日に授業を行って欲しいという要請で、こうした対応は文科省への届け出なしに各大学や高等専門学校の判断で自由にできるとしたのである。
 また、これに先立って、4月下旬には、「各大学等の判断により、ボランティア活動が授業の目的と密接に関わる場合は、オリンピック・パラリンピック競技大会等の会場や、会場の周辺地域等におけるボランティア活動の実践を実習・演習等の授業の一環として位置付け、単位を付与することができる」とする通知を出し、学生のボランティア参加を促すために、単位認定を大学に求めるている。
 とにかく異例の通知である。
 東京オリンピックのボランティアは、大会ボランティアが8万人、都市ボランティアが3万人、合計11万人を確保する計画だが、これだけ大量の人数が確保できるかどうか疑問視する声が起きて、危機感が漂っていた。
 ボランティアの要求条件は、大会ボランティアで「10日間以上」、都市ボランティアで「5日間以上」、さらに事前の説明会や研修への参加義務があり、働いている人にとってはハードルが高い。一方で「2020年4月1日で18歳以上」という年齢制限がある。そこで大学生や高等専門学校、専門学校の学生が「頼みの綱」となる。
 この「特例措置」対して、明治大、立教大、国士舘大などが東京五輪期間中の授業、試験の取りやめを決定した
 明治大は「自国でのオリンピック開催というまたとない機会に、本学学生がボランティア活動など、様々な形で大会に参画できる機会を奪ってしまう可能性がある」(7月26日)として、五輪期間中の授業を取りやめ、穴埋めとして同年のゴールデンウィークの祝日をすべて授業に振り替えるという。
 立教大も「学生のボランティア活動をはじめとする『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会』への多様な関わりを支援するため」(8月9日)休講に。国士舘大も「学生の皆さんがボランティアに参加しやすいよう2020年度の学年暦では以下の特別措置を準備しています。奮って応募してください」(18年8月9日)と呼びかけている。(WEBRONZA 小林哲夫 8月31日)
 しかし、一方で「平成の学徒動員」と反発する声も強い。
 大会組織委員会や東京都が、ボランティアへの参加を呼びかけるのは当然だが、文科省やスポーツ庁が乗り出し、「特例措置」まで設けてボランティアの参加を後押しするのは行き過ぎだろう。「平成の学徒動員」という批判だ巻き起きるのも理解できる。
 善意と奉仕の精神と自発性を重んじるボランティアの理念と相いれない。


ボランティア募集 大会組織委員会/日本財団

オリンピックは巨大なスポーツ・ビジネス
 国際オリンピック委員会(IOC)は、2013年から2016年の4年間(ソチ冬季五輪とリオデジャネイロ夏季五輪)で51億6000万ドル(約5830億8000万円)の収入を得た。2017年から2020年の4年間(平昌冬季五輪、東京夏季五輪)では60億ドルを優に超えるだろう。また、IOCとは別に2020東京大会組織員会の収入は6000億円を見込んでいるので両者を合わせると1兆円を上回る巨額の収入が見込まれているのである。
 もはやオリンピックは巨大スポーツ・ビジネスで、非営利性とか公共性とは無縁のイベントといっても良い。スポーツの感動を商業化したビック・イベントなのである。
 オリンピックの過度な商業主義と膨張主義は、批判が始まってから久しい。
 そもそも、善意と奉仕を掲げるボランティアの精神とオリンピックは相いれない。
 東日本大震災や熊本地震、北海道胆振地震、西日本豪雨で活躍している災害ボランティアとは本質的に違う。
 
 2012年ロンドン五輪では、7万人の大会ボランティアと8000人に都市ボランティアが参加し、2016年リオデジャネイロ五輪では、5万人の大会ボランティアと1700人のシティ・ホストが参加した。
 リオデジャネイロ五輪では、5万人の大会ボランティアの内、1週間で1万5000人が消えてしまい、大会運営に支障が出て問題になったのは記憶に新しい。
 また平昌冬季五輪では、2万2000人のボランティアが参加したが、組織委員会から提供された宿泊施設(宿泊料は組織委員会が提供し無料)の温水の出る時間が制限されたり、氷点下の寒さの中で1時間以上、送迎バスを待たされたりして、2400人が辞めてしまった。
 勿論、ボランティアは無償(リオ五輪のシティ・ホストは有償 但しリオ市内の貧困層を対象とした福祉政策の一環)、報酬は一切支払われていない。国際オリンピック委員会(IOC)の方針なのである。
 無報酬のボランティアの存在がなければオリンピックの開催は不可能だとIOCは認識しているのである。
 東京大会組織委の担当者が日当を払うことの是非について、IOCに尋ねた際、「それだとボランティアではなくなる」などと言われたという。IOCのコーツ副会長は9月12日の記者会見で「今後もボランティアに日当を払うことはない。やりたくなければ応募しなければいい」と強い調子で話した。(朝日新聞 9月27日)
 一方、「ブラックボランティア」の著書がある元広告代理店社員の本間龍氏は「今のオリンピックはアマチュアリズムを装った労働詐欺だ」と多額の金が集まるオリンピックでボランティアは大きな役割を担うのだから必要な人員は給料を払って雇うべきだと主張する。(TBS ニュース23 9月26日 「五輪ボランティア募集開始 『ブラックだ』批判のワケ」)
 これに対し、小池東京都知事は、「ボランティアへの待遇は過去の大会と遜色のないものになっている。何をもってブラックだと言うのか分からない」と真っ向から反論した。

 
五輪開催経費、1兆3500億円の削減を迫られている大会組織委と東京都
五輪開催経費(V3) 1兆3500億円維持 圧縮はできず
  12月21日、大会組織委員会と東京都、国は、東京2020大会の開催経費の総額を1兆3500億円(予備費1000億円~3000億円除く)とするV3予算を公表した。
 1年前の2017年12月22日に明らかにしたV2予算、1兆3500億円を精査したもので、経費圧縮は実現できず、V2予算と同額となった。
 2017年5月、IOCの調整委員会のコーツ委員長は10億ドル(約1100億円)の圧縮し、総額を1兆3000億円以下にすることを求めたが、これに対し大会組織委の武藤敏郎事務総長はV3ではさらに削減に努める考えを示した。
 しかし開催計画が具体化する中で、V2では計上していなかった支出や金額が明らかになったほか、新たに生まれた項目への支出が増えたとして、「圧縮は限界」としV2予算と同額となった。
 
 支出項目別で最も増えたのは組織委負担分の輸送費(350億円)で、選手ら大会関係者を競技会場や練習会場へ輸送するルートなどが決まったことで計画を見直した結果、100億円増となった。一方で、一度に多くの人が乗車できるよう大型車に変更するなど輸送の効率化も図ったとしている。
 また、交通費相当で1日1000円の支給が決まったボランティア経費増で管理・広報費は50億円が増え、1050億円となり、さらに猛暑の中で食品を冷やし、安全に運ぶためのオペレーション費も50億円が増え、650億円となり、支出の増加は合わせて200億円となった。
 これに対して収入は、国内スポンサー収入が好調で、V2と比較して100億円増の3200億円となった。しかし、V2予算では、今後の増収見込みとして200億円を計上していたため、100億円の縮減となり、収支上では大会組織員会の収入は6000億円でV2と同額となっている。
 支出増の200億円については、新たな支出に備える調整費などを200億円削減して大会組織委員会の均衡予算は維持した。
 1兆3500億円の負担は、大会組織委員会と東京都が6000億円ずつ、国が1500億円とする枠組みは変えていない。
 今回の予算には、酷暑対策費や聖火台の設置費、聖火リレーの追加経費、さらに今後新たに具体化する経費は盛り込まれておらず、今後、開催経費はさらに膨らむ可能性もある。
 組織委は今後も経費削減に努めるとしているが、「数百億円単位、1千億円単位の予算を削減するのは現実的に困難」としている。
 大会開催までまだ1年以上もあり来年が開催準備の正念場、さらに支出が増えるのは必至だろう。今後、V3予算では計上することを先送りにした支出項目も次々に明るみになると思われる。「1兆3500億円」を守るのも絶望的だ。
 とにかく「1兆3500億円」は「つじつま合わせ」の予算というほかない。
 
 東京2020大会の開催費用は、「3兆円」に達するとされ、とどまることを知らない経費膨張に強い批判が浴びせられている。国際オリンピック委員会(IOC)もオリンピックの膨張主義批判を意識して、2020東京大会の開催費用の膨張に危機感を抱いて、その削減を強く要請しているのである。
 大会ボランティアの8万人に、仮に1日8000円で10日間、一人当たり8万円を支払うと総額は64億円に達する。
 組織委員会が無償ボランティアにこだわる背景が見えてくる。
 有償の大会スタッフの雇い上げをなるべく少なくして、無償のボランティアで対応し、人件費を削減する、そんな思惑が垣間見える。

 一方、2020東京大会の組織委員会が手に入れるローカル・スポンサー料収入は極めて好調で、V3予算では昨年より100億円増の3200億円を確保したとしている。
 2020東京大会の大会組織員会の予算は6000億円、64億円はそのわずか1%なのである。東京都や国も含めた開催費総額はなんと1兆3500億円、なんとか捻出できる額と思えるが……。
 2020東京大会は、巨大スポーツビジネスイベント、オリンピックの「甘えの構造」を転換するチャンスだ。

 2012ロンドン大会、2016リオデジャネイロ大会にはともに20万人を超えるボランティアの応募があったとされている。
 2020東京大会のボランティアに果たして何人の応募があるのだろうか。


“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」

東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)


2018年9月27日 初稿
2020年3月8日 改訂
Copyright (C) 2019 IMSSR

***************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
***************************************





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4 コメント

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初めてコメントさせて頂きます。 (幸恵)
2018-12-26 20:01:27
初めてコメントさせて頂きます。母と東京五輪のボランティアの事について話していたら「高校生の所にも話しが行った」と聞きました。何でですか?多くの高校生の方が平日は登校日や部活及びアルバイト、土日だと補習授業や塾通いで無理だと思います。
Unknown (あづま人)
2019-01-30 18:29:37
高校に応募が来たのは都市ボランティアであって、五輪ボランティアではない。(一応東京五輪に関連はしているが)

こんな具合に、何の予備知識もなく、ボランティアに興味もない連中が何となくで叩いていただけというのが露呈した感じがする。やりたい人はやりたいのだろう。なら、好きにやればいいし、外野が口出しすべきではない。
Unknown (ここほれにゃんにゃん)
2020-07-18 09:16:07
なるほどねえ、昔はこんなこと心配してたんだね。でも、もう心配ないよ。オリンピック中止になるから。
東京型スケベウイルスの蔓延で東京はゾンビの街になりました。
脱国民洗脳はベンジャミン・フルフォード (脱国民洗脳はベンジャミン・フルフォード)
2021-02-09 09:20:46

国民電波洗脳による、テレビ、新聞、週刊誌、ラジオ等の、嘘八百の洗脳情報と、嘘と騙しの仕掛けと、策略に満ち溢れた世の中で、思考停止状態にある日本人は、自分自身の脳、すなわち思考そのものを点検せよ! 騙しと、策略の煽動に乗せられるな! 我々はハッ、と気付いて、いや、待てよ! と立ち止まり、常に注意深く、用心深く、警戒し、疑いながら生きれば、騙されることはない。 全ての常識や事柄を疑うべきだ! 洗脳からの覚醒には 『アメリカの思想と歴史の本たち』 を読め!

https://benjaminfulford.net/

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