藤原正彦の本。

まず一言。現実逃避は最悪だ。

さて、日本共産党を非合法にしない方が良いのでは無いかと考えたのだが、では、どのようにして非合法にしないで共産主義の台頭を防ぐかと頭を悩ませていたところ、この本の存在を思い出した。
国民が賢くなることこそ重要だという著者の意見に賛成である。
ついでに、多機能携帯電話を制限するべきだという意見にも賛成である。
教養、あるいは賢くなるために本を読めという話にも賛成である。
そして何よりも、あらゆる知識が現実という世界と乖離してしまうことが危険であるという認識にも賛成である。

と、前振りはここまでにして本の話。

著者自身が書いているが、正しく現実を見つめるというのはかなり難しい。
昨今の高度情報化社会ならばなおさら、あふれ出てくる情報に流されないようにしつつ、現実を見つめて判断することは極めて難しいのだろうと思う。
特に日本人はお人好しで、他の国の方が素晴らしいと思っているのだから、相当に注意深く行動しなければ酷いこととなってしまうだろう。
それこそ、大東亜戦争の時のように。

対策としては、いったん自分の考えていることから遠ざかるという物が示唆されていたが、この考えにも賛成できる。
人間という生き物は、どうしても自分の考えに捕らわれてしまうから、そこから離れてみるというのは重要だろうと思う。
では、具体的にどう離れるべきなのかについて著者はあまり具体的なことは書いてくれていなかったが、これは俺の方で腹案がある。
それは、自分の意見と反対の主張をする人間の意見を聞くことだ。
反対の意見に明確な根拠があるかどうか、それを吟味すれば、自ずと自分の考えから一歩とおざなることが出来るのだろうと思う。
まあ、自分と違う意見に耳を傾けることは極めて難しいので、俺の腹案も現実的では無いのかもしれない。

さて、次。

著者の主張には賛成することが多いが、少し疑問もある。
それは、このところ話題になることが多い、同一労働同一賃金制というやつだ。
派遣社員を増やすことで、終身雇用という日本の強みを殺してしまっていると主張しているが、これは正しいのだろうか?
派遣社員を会社の都合で切ることが難しくなっている今日この頃では、正社員を雇うのとそれほど大きく変わらないのでは無いだろうかとも思う。
いや、派遣社員なんて生き物との接触は多くないので断言は出来ないのだが、感覚的に正規社員とそんなに違わないのでは無いだろうかと思う。
ならばなぜ、正社員よりも派遣社員の方が話題になるのかが理解不能なのだが。

さてもう一つ疑問だ。

明治維新からこちら、日本はドイツに倣って色々とやってきたと書かれていた。
そのせいで知識層(教養層か?)が現実世界から遠ざかり、大東亜戦争も失われた二十年も防ぐことが出来なかったと。
しばらく前に読んだドイツ人の本によると、四年で大学を卒業する人が極端に少ないという話だったのだが、この辺は明らかに違うと思う。
そもそも、子供の頃に大まかな進路が決まってしまうドイツと違い、日本はかなり自由度が高いそうなのだが、この辺の影響はどの程度有るのだろうか?
もう少し書くならば、英国を母体とする帝国海軍だったが、それでも大東亜戦争に突っ走ってしまっている。
もしかしたら、海軍に入る前の教育に問題が有ったのだろうか?

いや、敗戦前の教育と今のをごっちゃにしてしまっているのかもしれない。
もうすぐ五十だが、戦前に生まれていないので肌感覚として、その当時の教育を理解しているとは言いがたい。
何冊か昭和初期の教育について書かれた本は読んでいるが、体系的には全く理解していない。
これはかなり致命的な認識不足と言えるかもしれない。

さて結論だ。

この本はお薦めできると思う。
何カ所か疑問な展開はあったが、それでも知識や教養についてまとまって考える切っ掛けとしては十分だと思う。
暇を見て一度読んでみて欲しい。

と、ここからは蛇足だ。

著者がアニメについて書いているところに、凄まじい疑問を覚えた。
曰く、家族に付き合って視聴したクレヨンしんちゃんしか知らない。
そんな事があるのだろうか?
サザエさんやドラえもんとかとか、見なかったのだろうか?
かなり深刻な疑問だ。


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