大木毅の本。

まず一言、日本には核武装が必要だ。

さて、普段行かない本屋を徘徊していて、平積みされていた本を衝動的に買い込んでみた。
お馴染み独ソ戦について書かれた本なのだが、ずっと気になっていたことについて書かれているかもしれないと思ったのもある。

先に俺の疑問について書いておきたい。
ヒトラーは、何故、英国との戦争が膠着状態になっている状況で、他にも大量の戦力を必要とする戦線を作ったのだろうか?
この疑問はずっと俺の中に存在し続けていた。
普通に考えれば、二正面作戦は出来うる限りにおいて避けたいと考えるはずなのだが、これで、ヒトラーがどうしようも無いお馬鹿さんだったら話は分かるのだが、そうでは無かった。

で、この俺の疑問にある程度答えてくれたのがこの本だ。
どうやらアドルフ君は、ソ連を蹴散らせば英国が降伏すると考えたようだ。
残念なことに、何故アドルフ君がそう考えたのかについて詳しい解説が無かったが、まあ、ドイツ人(オーストラリア人か? いや、オーストリア人か?)の思考を日本人が理解することは至難の業だろうから、著者も上手く理解していないのかもしれない。
それでも、それなりの筋道で説明していることは評価できると思う。
ドイツ国防軍がソ連への侵攻に積極的だったと書かれていたが、なぜそんな思考をしたのかは書かれていなかった。
これは少し残念だった気がする(俺が見落としただけか?)。

そうそう、アドルフ君絡みでもう一つ。
人種差別主義者だったアドルフ君だが、西に行く時にはそれなりに戦時国際法を守っていたはずなのに、東に行くと段々そのたがが緩んでいったのは何故なのだろうか?
ユダヤ人はまあ、欧羅巴で散々虐められてきたからという流れで分かる気がするのだが、東欧の人たちに対してはどう考えていたのだろうか?
この辺をもう少し説明して欲しかった気がする。
我が闘争は読み続けることが出来なかったために、アドルフ君への理解が不十分な俺の我が儘かもしれないが。

そうそう、政権を取った後アドルフ君がポーランドへ攻め込む前に侵略を止めておけば良かったという話を聞くが、どうもそれは無理な話だったようだ。
詳しくは読んでもらった方が良いのだが、簡単に書けば外貨不足に陥っていたために、他国を占領して急場をしのいでいたと言う事になるだろうか?
急場をしのぐために更に急場がやってくる、ある意味究極の自転車操業だろうか?
これでは、おいそれと途中で止めることは出来ないだろう。
今から考えれば、ドイツの高品質な機械を輸出して外貨を稼げば良かったのでは無いかとも思うが、当時はやる事が多すぎて輸出できなかったのかもしれない。
あれもこれもと欲張るとろくな事が無いという、良い例かも知れない。
そして戦前の反動で、今のドイツは貿易で金を稼ぐことに血道を上げる状態になっているのかもしれない。
欧羅巴にとってそれが良いことなのかどうなのか、俺には良くわからない。

さて独ソ戦。

やや意味は違うが双方の独裁者が血で血を洗う抗争を繰り広げた訳だが、そこには戦時国際法など存在していなかったことはよく知られている。
ただ、隠蔽されていた資料などから、普通に知られている物とは色々と違う展開があったことが書かれていた。
ドイツ側の資料はどうだったのかとか疑問に思うところはあるが、まあ、余り豊富には残っていないのだろう事は予測できる。
ソ連が崩壊してくれて良かったとも思う。

そうそう、少し横道にそれるが、文明の衝突で日本は独自の文化圏を築いていると書かれているらしいが、ドイツに似ていると主張する人もいると聞く。
で、この本を読んでみて、事戦争に関しては、日本人とドイツ人は極めて良く似た思考だった様だと感じた。
一つ一つの戦いを積み重ねて行き、相手を屈服させる。
米国なりソ連なりが敗北する、あるいは講和に応じるためにはどんな手段があるかを、真剣に検討しないで、楽観的な見切り発車をしてしまっていた。
これは大日本帝国とドイツ第三帝国の、共通した敗北の原因では無いだろうかと思う。
まあ、ドイツでは自国民に過酷な労働をさせないために、占領地の住民や捕虜を虐待していたと言うし、違うところもあるが、日本とドイツが似ているという主張には根拠が無い訳では無いようだ。

さて、最初の一言について少し。

この本でも書かれていることだが、敵を過小評価、あるいは実際に弱い状態だと喧嘩を売られる。
この真理は変わらないだろう。
中人国や北朝鮮が核兵器を持っている現状では、やはり日本も持っていた方が安心できる。
いや、これは少し違うかもしれない。
核兵器の代わりに、射程が長く安価に量産できる巡航ミサイルを大量に配備しているだけでも、似たような効果は期待できるだろう。
ずいぶん前に読んだ巡航ミサイルの本にそう書いてあったように、手を出したらただでは済まないと相手が思うことこそが重要なのだろう。
この本を読んで、改めてそれを再確認した。

この本は、今まで余り一般的に知られていなかった独ソ戦について書かれている。
そこから色々と考えることが出来る良い本だと思う。
とは言え、どちらかというとソ連に肩入れしている気がするのは俺の気のせいでは無いだろう。
いや、気のせいだろう。著者はドイツの専門家でソ連の専門家ではない。
どうしてもドイツの話が多くなってしまうのは仕方が無いことだし、ナチスドイツを批判的に書くのは普通のこととなっている。
ならば、ソ連に肩入れしているのではなく、ナチスドイツを批判しているだけなのだろう。
その辺には注意が必要だと思う。


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