*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.4
◆「脳の障害」という言葉を例に確認する
(精神)医学はこれまで、精神病は「脳の障害」であると言ってきましたよね。今度はその「脳の障害」という表現を見てみますよ。
異常なひとはこの世にただのひとりも存在し得ないにもかかわらず、医学は一部のひとたちのことを、「精神に異常がある」と判定し、精神病に罹患していると言ってきました(1.異常という言葉は差別論理である)。
その、精神とか心とか意識とかといった名で呼ばれてきたもののありようを、医学は、身体のなかの脳という一点のせいにし、心(精神)とは脳の働きであるということにします。そんな医学にとって、「精神に異常がある」というのは、「脳に異常がある」というのと(ほぼ)同義です。
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下の本には「心はじつは脳の作用であり、つまり脳の機能を指している」といったふうに書いてありますね。p.28です。
下の本には「こころは(略)脳のはたらきのことを意味している」といったふうに書いてありますよ。p.2です。
ちなみに、そんなふうに脳一点のせいにすることは誤りであると、以前に既に確認しています。
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さあここから、さっき挙げた箇条書きの流れ(2から4)にしたがって見ていきますよ。
そのように「脳に異常がある」と言うのは、そのひとの脳を、「作り手の定めたとおりになっていない」と見、脳が「作り手の定めたとおりになっていない」そのことを問題視することですよね(2.異常の意味)。
では、脳が「作り手の定めたとおりになっていない」そのことを問題視して、身体のなかの一点のせい(脳内物質の欠乏とか過剰とかのせい)にするどうなります(3.身体のなかの一点のせいにする)? その一点は、脳が「作り手の定めたとおりになる」のを妨げていることになりますね? したがって、そのひとは反対に、脳が「作り手の定めたとおりになるのを・身体のなかの一点によって妨げられている」ことになりますね?
で、脳が「作り手の定めたとおりになるのを・身体のなかの一点によって妨げられている」そのことは、「何々がAになるのを・障害物によって妨げられている」という文型に当てはまることから、「脳の障害」と表現されることになりますね(4.世間の用法)?
「脳の障害」という言葉が、「精神に異常がある」という差別表現の単なる言い換えにすぎないことが、いま確認できましたよね?
◆問いへの答え
さて、ひととおり見終わりましたよ。双極性障害とか発達障害とか脳の障害とかと言うときのその障害という言葉が、「異常という差別用語の単なる言い換え」にすぎないことが確認できましたね。
そして、最初に投げかけた問いにこう答えることができるようになりましたね。
最初にこう問いました。双極性障害とか発達障害とかと言うときのその障害という言葉は、障がいとか障碍といったふうに表記を改められるべきなのでしょうか、って。その問いには、いまやこう答えられますね。
障害を、障がい、もしくは障碍と書き改めても、残念ながら何も意味は変わりません。どう書き換えても、「異常という差別用語の単なる言い換え」にすぎないことに変わりはありません、って。
2020年3月21日に文章を一部修正しました。
*「障害、障がい、障碍、いずれの言葉も差別用語である」というこのことを後日、今回のとは別の、もっと簡単な仕方で考察し直します。その回は、こちら。
*今回の最初の記事(1/5)はこちら。
*前回の短編(短編NO.3)はこちら。
*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。