それでも使いますか?ビッグプーリーのデメリットと運用上の注意

本記事を最初に作成して、2年が経とうとしております。
2年間のノウハウを組み込み、大幅に更新させていただきました。

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ワタクシも現在使用中のビッグプーリーです。
※現在は使用しておりません。

こちらのページでもわかるように2020年ツール・ド・フランスのプロバイクにもビッグプーリーが組み込まれているバイクがあります。


ビッグプーリーのいいところはというと、
回転が軽くなる!
ずばりですが、これに付きます。

実際に整備でビッグプーリーを組み込んで、回してみると確実に軽さを感じることができます。様々なメーカーのビッグプーリーを組み込んでおりますが、どれも軽さを感じることができます。
特にチェーンテンションが高くなるようなアウター・ロー側のギアポジションのときに効果がわかりやすいです。

ではこの回転の軽さとトレードオフになるもの、それらが今回のお話し、それでも使いますか?ビッグプーリーのデメリットと運用上の注意、そんなお話しです。

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▶変速性能は確実に落ちるのか?
結論からですが、瞬間的なお話しではなく長い目で見るとほぼ落ちます。
”ビッグプーリー+デメリット”なんかでググってみても”変速性能の低下”というのは非常に多くでてきます。
というのも、基本的にシマノは純正以外のパーツの取付けは想定していないです。
シマノのディレイラーに社外製のプーリーをつけて変速がおかしい、というのはシマノからしてみれば当然のことですし、もとに戻して、と言うしかありません。
ワタクシはシマノの技術力は世界一だと考えております。その世界一技術力を持ってリアディレイラーを設計開発していますので、他社が変速性能で勝つものを作れる、ということはおそらくありません。(チェーンやギア歯もそうです。)
ちなみにビッグプーリーを組み込んで変速性能が上がったという話もないわけではありませんが、それはビッグプーリー意外のところに原因がある場合がほとんどです。

で実際のところどうなのかというと、、、現在ワタクシが使用していたGearoop社のビッグプーリー、そして比較的触ることの多いRideaやカーボンドライジャパンのビッグプーリーでは、変速性能の低下を最大限に少なくすることは可能でした。
つまるところ、ビッグプーリーでも、変速調整をしっかりと行うことで、変速性能をほぼ落とさないということも可能、ということです。

そのかわり調整はかなり細かく必要になります。
一方の純正品の場合は、スイートスポットや許容範囲が広い印象です。
その許容範囲の広さはフレーム次第で、いわゆる相性的なお話です。
例えばフレーム・ハンガーの設計、チェーンステー長とか、あとは同じチェーンステー長でもケーブルの取り回し等、ベストなフィーリングの変速のスイートスポットの広さというものが個々に差が出ます。

社外製のビッグプーリーを使うことで純正よりも確実にこの変速調整のスイートスポットは狭くなる傾向にあると感じております。

ワタクシが実際に使用していじくり回した、Gearoop社の製品ではプーリーが金属なので純正の樹脂製品では気にならない微妙な音鳴りが気になります。これは物理的に仕方がありません。
それでもしっかりと調整をすることで純正が100%だとするとGearoopでも100%に限りなく近くまでもっていけていると感じております。(ギアもチェーンも新品の状態では、といったところです。)
そのかわり何かのちょっとした原因でも変速がだるくなりやすいので、少しでも違和感を感じたらすぐに何らかの対処をしておりました。

ということで変速の低下を最大限に抑えるためには、調整を純正品よりも細かく行う必要がある。ということです。
※数あるビックプーリーの全てに置いて変速性能が落ちないということではありません。

▶変速性能の低下とは?
サラッと書きましたが、変速性能の低下、変速がだるくなりやすい、変速に違和感、というのがどういうことかという、お話しです。

声を大にして、ではありませんが、ビッグプーリーに交換したからと言って、ジャラジャラ鳴って変速に時間がかかるようになったり、一発で変速しないなんてことはありません。
そんな粗悪な製品はほぼ見たことがありません。

しかし例えばパワーがかかっている状態での変速がコンマ数秒、ワンテンポ遅れたりすることはあります。つまり負荷がかかったり、なにか普通ではない状況下においては、その違いを感じることが出てくる、というものです。

またビッグプーリーの特有の難点ですが、各所の摩耗が進んでくると変速性能が顕著に落ちるものがある。これです。
チェーンが伸びたり、プーリーの摩耗が原因です。
純正の場合、プーリーの摩耗はそこまで影響は大きくありませんが、社外製のプーリーの摩耗は致命的な性能低下を引き起こすことがあります。

プーリーも基本的に、ギアの歯ですので消耗品です。チェーン同様にどんなに高価なものでも永遠に使えるものではありませんので、摩耗したら交換が必要になります。
それが社外製だとちょっと、、、高いです。


▶ビッグプーリーのリスクとは?
ビッグプーリーを使用することで、想定しうる最大のリスクというか事故、それは、、、
”プーリーケージ(リアディレイラー)がホイールに巻き込まれること。”
これです。

これが起きると最悪の場合、大怪我を負ったり、フレームが終わってしまうこともあります。
もちろんホイールも壊れることにもなります。
リアディレイラーに関しては以前シマノからも注意喚起がされておりました。それだけリアディレイラーが巻き込まれるということは危ないこと、ということです。

ではなぜこのリアディレイラーの巻き込み事故が起きるのか、考えてみようと思います。

①ディレイラーハンガー曲がりの影響がより強く出る
これはプーリーケージの長さの問題もあるかもしれません。
と考えて、手元にあるGearoop社のプーリープレートの長さを図ってみたのですが、RD-R8000の場合はそこまで純正と差がありませんでした。しかしそれは新型R8000のシャドータイプのリアディレイラーだからであって、旧型の5800・6800・9000等のプレートとビッグプーリー用のプレートを比べるとやはり大きなプーリーを入れるためにケージは長くなる傾向にあるようです。

ケージの曲がりの影響も長さが長くなれば長くなるほど影響が出やすくなるというのは構造的な問題かと思います。
またガイドプーリーの傾きに対しての影響もやはり丁数が大きければ大きいほど、巻き込まれる可能性が物理的に増えてきます。
構造的に単純に考えればやはり長く大きいほうがハンガー曲がりの影響を受けやすいと考えていいかと思います。

組み付け時だけではなくて、ぶつけてしまった等のトラブル発生時なんかは特に注意が必要です。

②ケージの長さ対してのPテンション軸の問題
シマノの純正品以上にプーリーケージが伸びることでPテンション軸へかかる負荷が上がることが考えられます。
特にPテンション軸の構造、強度などは純正の長さをベースにシマノの安全基準をクリアする設計になっているはずですが、そこへ全然純正以上の長さのものをペチッとくっつけて安全性や強度的な問題を簡単にクリア、、、というのはなかなか難しいのかもしれません。

これはリアディレイラー側の問題もありますし、逆にP軸側(ビックプーリーのケージ側)の問題もあるかと思います。

シマノは安全のための”マージン”というか許容範囲を多少広めにとってあるかと思いますが、同基準がサードパティ製品の全てのメーカーに当てはまるということでは無いと思います。
(それでもビッグプーリーのメーカー側も度重なる試験は行っているはずです。)

こういった事を考えても通常の使用よりも負荷がかかることが想定され、いわゆる調整不足での使用はリスクが上がるのではないかと考えられます。


③どう考えてもプーリー部はヒットしやすくなる
日本の交通事情、左側通行・キープレフト等の影響はドライブトレインが右側についているということは悪いことではありません。
左側沿いを走っていて縁石やその他のものにドライブトレイン(リアディレイラー)、をぶつける可能性は反対よりも低くなると思います。

シャドータイプのディレイラーもダブルテンションの旧型よりもわずかに狭くすることで本体のヒットを防ぐという目的もあるぐらいのものですが、明らかにプーリー部がバカでかくなるビックプーリーではヒットの可能性が増えるということは容易に考えられると思います。

それにより、
・ケージ、プーリーの破損
・リアディレイラー(Pテンション部等)の破損
・ディレイラーハンガーの破損
こんなリスクが上がることはビッグプーリーのリスクです。
MTBであまり使われていないのはこういった意味もあるのかもしれません。ALTUSかなんかは純正品も多少大きかったような。。。

④ビッグプーリー自体の破損
ビッグプーリー自体はどうなのかというお話もあります。
・プーリー(歯)自体の耐久性
・P軸の強度は?
この辺もまだまだ未知数の事が多いかと思います。

シマノ製のディレイラーであればママチャリからの強烈で過酷な使用環境なんかをみても、ケージ自体がぶっ壊れることってほとんど無いと思います。(ケージ自体が取れたりするのはかなりレアケース?)
むしろプレート部やプーリー事態が壊れる主な原因は社外製品の使用というのが一番多いような気がします。

そのぐらいシマノ製品の信頼性は高いですが、それ以外のサードパティ製の商品はまだまだ歴史も浅く不透明なところもあります。

シマノが長年実用車(ママチャリ)なども含めての技術・フィードバックの積み重ねというのは何事にも変えられない貴重な価値を持つものだと思いますし、それこそがシマノの信頼の証ということだとも思います。

▶その他のデメリット
①輪行時に取り外す必要がある
その他のデメリットとしては、やはり輪行です。
基本的に多くのメーカーが輪行時はケージの破損を防ぐために、リアディレイラーごとフレームから取り外す、ということになっております。

これはケージの破損防止ではなく、ハンガーやフレームの保護にも繋がります。

②そもそもつかない場合もある
決して多いことではありませんが、残念ながら正しい組付けをしてもつかない場合があります。
ディレイラーハンガーの形状に(正確には長さ)によっておこります。
こればかりはフレーム設計上の問題ですので、どうしようもありません。



▶少しでもビッグプーリー事故のリスクを減らすためには?
①定期的な点検作業
上記のようにハンガー曲がりや、各所のガタつき、その他不具合が起きやすい部分に関して、頻度を上げて確認をしたり、メンテナンスをする。また一番基本的なことですが、変速調整はいつも万全にしておく、これらのことはどれも大切なことだと思います。

②組み付け時の確実な作業
最低限組み付け時は、
・修正を含めたディレイラーハンガーの確認
・調整を確実に行う
これらのことは必須です。

また多くのビッグプーリーはP軸のスプリングをかける穴が複数空いています。通常@番を使用、という場合が多いですが、これらも現車に合わせて、適切なテンションとなるような調整が場合があるということです。多くの場合は各メーカーの注意書きには”取り付けの際はプロショップ(販売店)へご依頼ください。”とありますが、取り付け調整が不十分だと、危険が伴う場合があるからということです。

③何かあった際にはすぐ確認・処置
上記のようにトラブルの影響を受けやすくなるビッグプーリーですのでトラブルが起きたときはすぐに対処するということです。
例えば自転車を倒してしまった、ぶつけてしまった、変速になんか違和感が、こんなときは純正を使っているとき以上に気を使い、すぐに対処することでリスクを減らすということです。

はっきり言ってしまうとこれらのことはビッグプーリーだけではなく、ロードバイクの整備全般的に言えることでした。


このように、デメリットがたくさんあり、最悪の事態も想定できるビッグプーリーですが、やはりなんだか軽いというのが事実です。そう、なんだかたしかに軽いです。
BBでもなんでもそうですが、シマノ純正品よりもやっぱり軽い!
ということはシマノの技術が低いなんてことは一切あるわけありません。
そうではなくて、”何を犠牲にして何を得るのか。”トレードオフということです。

これらのことをしっかりと理解することで、リスクを少しでも減らせればと思います。

ということでビッグプーリーのデメリットから見る運用上の注意、そんなお話でした。

自分でこんな嫌な記事を書いているうちにちょっとビッグプーリー、使いたくなってきました。
なぜかというと回転が軽いから!そのちょっとの違いを求めるということ、、、そんなことが好きです。


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