【コラムカット】コラムの長さはどのぐらいにするべきか?
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コラムカットのご依頼は当店の作業実績の中でも、非常に多いご依頼です。
というのも、コラムカット後の適切な長さを決めることは、複数の要因を総合的に判断し決めないといけない、また失敗するとかなり大変なことになる可能性があるからです。
またカッド後はヘッドパーツの調整等も必要な作業となります。

ということで今回は【コラムカット】コラムの長さはどのぐらいにするべきか?そんなお話しです。

※今回はカーボンコラムのお話しとさせていただきますが、基本的にはアルミでもほぼ同様のお話しとなります。

ヘッドパーツの構造等は下記よりがご確認いただけます。今回の記事がご不明な場合は、下記のリンクより、構造を理解してからお読み頂けると良いかと思われます。







▶結論

今回は結論からです。
使用するヘッドパーツ(アンカー)、トップキャップ、ステムの構造によっても適切な長さは変わる。そのためどんなステムでも必ずこの長さにしておけばOK、とは一概に言うことはできない。です。

しかし長い場合は再び切れますが、短すぎた場合継ぎ足すことはなかなか難しいです。(コンマ数mm切るとかは難しい場合もあります。)
ですので、不安な場合は多少長めにしておくというのも、リスクをへらすのためには悪いことではありません。(もしもカット後に長かった場合はスペーサーを入れればなんとかなりますし、もう少し短く着ればよいだけです。)

ではその適切な長さが変わる3つの要因の説明です。

※以下、コラムの上面(or アンカー上面)とステムの高さの”差”これを便宜上、”引き代”と書きます。
この”引き代”が不明な場合は上記リンクよりご確認をお願い致します。

①アンカーナットの種類
アンカーナットは別名、プレッシャープラグとかプレッシャーアンカーと呼ばれます。
コラムがアルミの場合はスターファングルナットというものが打ち込まれております。

要はどちらも全く同じ役割を果たします。
コラム内にナットを留置しておくための構造をもったものです。
その役割はコラムを引き上げて、ヘッドパーツのガタをとり、適切な圧力をかけるためのものです。(要はトップキャップのボルトはフィキシングボルトの役割のようなものです。)

そのアンカーナットには大きく分けて2つの種類の構造があります。
DSC_2715
左:①完全にコラム内に収まるタイプ
右:②コラム上部に引っかかるタイプ

こちらの2種類です。

ちなみに下の画像の2種類も左側のタイプと同様に完全にコラム内部に収まる構造です。
DSC_2720
上の画像の右側のタイプは主にビアンキやキャノンデール等(少し構造は違いますが、キャニオン)のヘッドセットに使われていることが多いです。通名どころだとHIRAMEのプレッシャーアンカーもこのタイプものが主流です。

どういうことなのか見てみます。
image1109
このように真横から見ると完全にアンカーが見えません。
これが1つ目の完全にコラム内に収まるタイプです。

もう一種類のコラム上部に引っかかるタイプ、を見てみます。
image1131
こうなります。
このタイプのアンカーは現在のロードバイクでは、かなり多くのメーカーが使用しております。

この2種類では、実際にコラムを切る際の長さに違いが出ます。
実際にステムをいれてみるとわかりやすいです。
まずは①の構造のアンカーからです。
DSC_2726

内部にアンカーが確認できます。
DSC_2727
(トップキャップの形状にもよりますが、)このぐらいの引き代が取れているのが理想的な状態です。
ということで、①のタイプのアンカーを使う場合は、この長さでは何も問題がなくガタが取れます。

ではこの状態でアンカーナットを②のタイプに交換してみます。
DSC_2735
これはNGです。
なぜならば、”引き代”がありませんので、これではガタが取れません。

つまり、①のタイプのアンカーを使う場合の適正な長さと、②のタイプのアンカーを使う場合ではカットする際の、適正な長さに違いがでるということです。
image2128
※アンカーの矢印の部分の厚みを考慮する必要があります。

逆に言えばちょっと切りすぎてしまった、ステムのスタック(後述)が高いものに交換した、そんな場合はアンカーを①から②へ変更することで多少なりともステムを伸ばすようにも使うことができます。
逆にアンカーを②から①へ変更する際は要注意、ということになります。

②トップキャップの形状
トップキャップの形状によっても引き代に差が出ます。
下の画像はFSAのアンカーナットとトップキャップです。
いちばん締め込んだ状態にしてみました。
path873
このアンカーナットの場合、アンカー上面とトップキャップの差(赤線の幅)よりも引き代が多くなければなりません。

ということは、です。
image845
左側の画像の赤い線の高さよりも。右側の側の画像の引き代(赤線の高さ)のほうが大きくないと、トップキャップボルト(要はフィキシングボルトの役割)を締め込んでもガタが取れません。

上の画像はFSAの純正トップキャップを使っています。

別のトップキャップを見てみます。
DSC_3200
これはFSA製ではない、トップキャップです。(掴んでいる方)

アンカーに入れてみます。
DSC_3203
これならば先程のFSAのトップキャップよりも更に引き代が小さくても大丈夫、ということになります。

ではcervéloの純正のトップキャップです。
DSC_3197
トップキャップは平ら無いので大丈夫そうに見えますが、、、

DSC_3202
一番締めこんでもココまでしか入りません。
というのもボルト形状が邪魔をしてしまって最後まで締め込めません。

ココまでの引き代を確保するのは余り現実的ではありません。
ですので。このcervéloの純正トップキャップとFSAのアンカーは合わない、ということになります。
cervéloのトップキャップはスターファングルナットに合わせて作られているからです。

もう一つ、スターファングルナット用のものです、
DSC_2738
こちらはトップキャップの形状に厚みがあり、同じ現象が起きます。

DSC_2739
このようになります。
やはりアルミコラムに使われる、スターファングルナット用のトップキャップはアンカーナットには適さないものが多い、ということになります。

問題のなさそうな、アンカーナット用のトップキャップの2つの形状でも細かく見ると必要な引き代は変わります。
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このようにトップキャップをいちばん締め込んだ状態で、アンカーナットの上面と、トップキャップの差分+α(1mm程度)が引き代として必要になるということです。

つまりアンカーナットとトップキャップの形状次第でも適切なカット幅が変わるということになります。

③ステムのコラムクランプ部のスタックハイト
ステムのコラムクランプ部のスタックハイト、要は”高さ”です。
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ステムのスタックハイトは40mmぐらいのものが多いですが、統一の規格があるわけではありません。
高いもの、低いもの様々です。

高いものに合わせてカットする分には不都合が出にくいですが、逆に短いものに合わせてのカットは注意が必要です。
というのもスタックハイトが低いものに合わせてのカットとなると、逆にスタックハイトが高いものに交換する際にコラムが短くなって、足りなくなってしまうことが考えられます。(特にベタ切りの場合)つまり引き代がありすぎてしまう、という状態になってしまうことがあると言うことです。

通常40mm前後のものが多いので、40mm以下のスタックのステムを使う場合は要注意かと思われます。

▶適正な引き代と、ベタ切りについて
では実際にガタを取るためのて適正な”引き代”はどのぐらいがよいのかと言うと、、、
引き代を確保しガタは完全に取れ、なおかつできるだけ長めが強度的には良いということになります。
クランプを見てみます。

構造的なお話しをしてしまうと、ベタ切りでの強度は落ちる傾向にあります。
というのも、クランプ部がなにもないところを掴むからです。
コラムが短すぎる場合でみてみます。
DSC_2752

真横から見てみます。
InkedDSC_2751_LI
線を入れてみましたが、上部のクランプの部分にコラム(芯)が無いことになります。
芯がない状態と、芯がある状態、です。
DSC_2713
どちらが強度があるかは、一目瞭然です。
だからといってベタ切りにしたら壊れやすいというお話しではありませんが、構造的なお話での強度はベタ切りのほうが落ちます。

ベタ切り推奨ステム、シマノプロのVIBEステムの推奨値を見てみます。
DSC_2753
エアロ性能やDi2ケーブル内装のためにはベタ切りをして専用トップキャップを使う必要があります。
しかしその調整幅は極めて少なく、コラムの長さの指定がありその幅2mmです。

ちなみに通常カーボンコラムをカットする際につかうノコの厚み(切った部分の厚み)は0.8mm前後はあります。
DSC_2757
つまりVIBEステムを使う場合は許容範囲を0.5mm取るとしても、1mm以内の幅でカットが必要ということになります。

PROのVIBEだけではなく、最近の一体型のエアロハンドルや、空力を考えられたステムではベタ切りしか使えないものもあります。
つまりこれらを使用する場合は、
・強度を確保するためにはコラムをできるだけ残しつつ
・アンカー・トップキャップの形状を考慮
・しっかりと引き代を確保できる長さを想定
・実際に切るのこぎりの刃厚を考慮
これらを総合して考え、カットする必要があります。



▶まとめ
実際にどのぐらいが強度的にも、調整幅的にも良いのかというと、、、構造的なお話しで考えるとステムの上部に5mm前後のスペーサーを1枚残す、またステムのクランプ部と同様の位置にアンカーナットを留置する、というのが一番良いと思われます。

それがなぜかと言うと、
・強度的な問題
・ステム交換の利便性
・コラム部の強化
これらの事があるからです。

繰り返しにはなりますが、メーカーによってはコラムのベタ切りを推奨しないメーカーもありますし、ベタ切りもOKというメーカーもあります。
しかし逆に、ステム・ハンドルが専用品ではないのにベタ切り推奨、というメーカーは多くないと思います。

ということで今回は【コラムカット】コラムの長さはどのぐらいにするべきか?そんなお話しでした。

※ご不明な場合は無理をせず、お気軽にご相談下さい。


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