MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯1666 デジタル・ガバメントの実現に向けて

2020年07月06日 | 社会・経済


 先日、我が家の郵便受けに「マイナンバーカード・電子証明書有効期限通知書」なる書類が区役所から送られてきました。

 封を開けてみると、どうやら5年間に取得したマイナンバーカードを電子証明書として使う場合に必要なパスワードの有効期限が近付いているので、1週間後の誕生日までに区役所に更新手続きに来いというもの。

 今どき、クレジットカードだって期限が切れる前に新しいカードを送って来るのに(システムの維持管理に大変な税金を投じている割には)ずいぶと急な話に、「サービスが悪いな」と悪態をつきつつ、仕事の合間を縫って(あわてて)役所のカウンターに駆け込んだ次第です。

 全国民の取得を目指して総務省が大きく旗を振っているマイナンバーカードですが、その根幹をなすパスワードの更新を、1億2千万人のそれぞれが5年ごとに手続きしなければいけないという仕組みにまずびっくりしました。

 しかし、さらに驚かされたのは、役所の窓口まで本人(または委任を受けた代理人)が出かけていかなければ手続きができないということ。新型コロナで接触機会を減らすことが求められているこのご時世に、電子カードのパスワードをただ更新するためだけに、「対面」での入力を迫られるというのも「一体いつの時代の話だ」という感じです。

 マイナンバー制度と言えば、今春、一人一律10万円という(件の)特別定額給付金の申請に当たって、マイナンバーカードを使ったオンライン申請(が上手く機能しなかったこと)で一躍話題となりました。

 その際、市区町村の窓口を最も混雑させたのが、(やはり)電子証明のためのパスワード忘れやパスワードの再申請といったパスワードがらみのトラブルの存在だったと聞いています。

 特別定額給付金の申請に当たっては、私もこの際、スマホを使った電子申請にチャレンジしてみようと思ったのですが、調べてみると(今使っている)スマホの機種が古かったり、新しくカードリーダーを購入する必要があったりと、面倒くさくなってあっという間に断念した経緯もあります。

 6月18日の日本経済新聞はその1面トップで、全体で5万5000件以上に及ぶ国の行政手続きのうち、オンラインで完結できるものが全体の1割に満たないことが分かったと伝えています、

 「電子政府」とまでは言いませんが、この際、コロナ後の社会を見通し、少なくともマイナンバーくらいはもっと使いやすいものにしてもらって、一般の人にも普及・浸透させてほしいものだと改めて感じるところです。

 そんな折、6月17日の日本経済新聞の経済コラム「大機小機」は「デジタル政府への道 急げ」と題する一文を掲げ、これから先の行政のデジタル化に向けた道筋を示しています。

 政府は先ごろ、政府・地方・民間の全てを通じたデータの連携やサービスの融合による「デジタル・ガバメント」に向けた実行計画をまとめた。しかし、実現への道のりは遥かに遠いと言わざるを得ないと、筆者はこのコラムに記しています。

 国や地方の行政手続きのうち、オンライン申請に対応するものは全体の12%にとどまる。政府は紙の添付書類を求める手続きが多く存在することが問題だというが、原因はそれだけではないというのが筆者の認識です。

 今回のコロナ対策の特別定額給付金のオンライン申請では、世帯構成や給付口座のチェックなどに手間取り、便利なはずのオンライン処理に混乱と手間が生じた。その原因は、行政の事務フローに紙の処理とデジタル化されたデータ処理とが混在していることと、それに加えて各種データの連結ができていないことにあると筆者はしています。

 そして、だからこそ、オンラインで受けた申請をわざわざ職員がプリントアウトして、他の紙ベースのデータと突き合わせるなどというような非効率極まりないことが起こるということです。

 このような事態を回避するには、業務フローを100%デジタル化する必要があるのは言うまでもありません。同時に、個人情報の集約の問題をクリアし、必要に応じてデータを連結できる仕組みにしなければならないというのが筆者の見解です。

 業務フローのどこか1か所でもデジタル処理が途切れれば、「手作業」「突合」の隘路に嵌ってしまう。100%のデジタル化を前提にして初めて、行政事務の効率化と国民の利便性の向上が期待できると筆者は説明しています。

 デジタル化のスピードアップに関しては世論にも様々な意見があるかもしれないが、取り残されるデジタルデバイドに配慮しつつも、デジタルファーストを基本にしていくことが求められる。

 デジタル・ガバメントの実現には、業務改革とシステム改革の双方が必要となるが、さらに計画を中途半端に終わらせないためには、「デジタルファーストに向けた意識改革」を徹底する必要があるというのが筆者の主張するところです。

 今回のコロナ禍を奇貨として行政のデジタル化を加速すれば、日本の成長戦略の視界も(ようやく)開けてくることでしょう。

 折しも、今回の「一律10万円」の電子申請の失敗は、政府や国民自身にとっても、これまでのデジタル政策を洗い直す大きな反省材料となっているような気がします。

 まずは、「マイナンバーカードの使い勝手」の改善から。デジタル・ガバメントへの動きは国民の最も身近なところから始めるのが良いのではないかと、私も改めて感じるところです。



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