ババモンは、「私は学校時代、成績が良かった」とよく自慢する人だった。
しかし、80代になって、認知症検査を受けるようになると、自分が認知症と思われないように、
ババモン「子供のころから、記憶力がなかったんですよ」
と、言い訳するようになった。去年の認知症検査のときは、
ババモン「私は、学校時代から成績が悪くて、0点ばっかりだったんです」
なんて言うので、笑えたと共に、「まだまだ、うまくつくろえるな」と驚いた。
最近、ババモンは、めいっこAに電話をして、プンプン腹を立てていた。
ババモン「子供のころの私の成績が悪かったって、姉(Aの母親)に聞いたことある、て言うんやで! そんなこと言う人ある!? Aもほんまに根性悪くなったわ」
次の日の朝、改まった風に私に言った。
ババモン「あんたに言っとかなあかんことがあるねん」
(どうせいつもの話やろ)
ババモン「私の葬式は、家族葬にしてほしいねん。もう親戚なんか呼ばんでいいから。あとで、年賀状(喪中はがきのこと)で知らせておいたらいいし」
(またか。何百回も聞いているわ)
ババモン「私が死んでから、あれこれ悪いこと言われたら嫌やろ」
前日のめいっことの話を、一晩中考え続けたのか。何に腹を立てているのかは、忘れているのか、言いたくないのかはわからないけど、何も言わない。
しかし、自分のお葬式で、親戚に思い出話をされる内容まで心配できるなんて、「すごいねババモン!」と思った。
もちろん、家族葬に異存はないけど、まだまだそういう事態は起こらへんよ。