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平岩弓枝著 「魚の棲む城」

2019年01月15日 08時52分03秒 | 読書記

図書館から借りていた 長編時代小説 平岩弓枝著 「魚の棲む城」 (新潮社)を やっと、やっと、やっと 読み終えた。

平岩弓枝著 「魚の棲む城」

江戸時代中期、第8代将軍 徳川吉宗の幕臣となった紀州藩士 田沼意行(僅か300石の旗本)の長男に生まれた田沼龍助(後の田沼意次)は、第9代将軍徳川家重の小姓に抜擢され、小姓組番頭になり、さらに 第10代将軍徳川家治にも信任も厚く、御側御用取次側用人に出世、とんとん拍子に 老中格から老中となり 旗本から遠江相良藩の大名にまで取り立てられた。
側用人から老中になった初めての人物であり、最終的には 相良藩だけでなく 駿河、下総、相模、三河、和泉、河内、7ケ国を知行する5万7000石の大名となった人物、その田沼意次の生涯を描いた作品である。
老中としての田沼意次は 古今一般的には 「賄賂政治家」と悪評高いが、一方で 視野が広く、開明的で 人望も有り、情け深く、情熱的、悪化する幕府財政を食い止めるための諸政策(株仲間の結成、銀座などの専売制、鉱山開発、蝦夷地開発計画、印旛沼干拓等)を実施する等を手掛けた人物として評価も有り 功罪半々とされている。
本書では 田沼龍助(後の田沼意次)が 幼馴染みの速水龍介(200石の旗本の息子、後の板倉屋龍介)とお北(200石の旗本斉藤家の娘、後の田沼意次の側室)との交流を通じて 若々しく 誠実で、魅力的に描かれている。
前半は 三人の青春物語風でもあり 作者は 田沼龍助(後の田沼意次)を 女性が憧れる程の理想的な男性として描いている側面もある。
老中時代の後半 浅間山大噴火、利根川大洪水、大飢饉等 天変地異が続き 各種政策が中断する等があり、さらに成り上がり者として憎んでいた 徳川御三家、御三郷の陰謀や働きで 結局 老中を失脚することになり 孫の田沼龍助が 陸奥1万石を受け継ぐだけで 全てを明け渡し、相良城は打ち壊されるという苛烈な末路となった田沼意次。江戸で死去、享年70歳だった。

(目次)
「本郷御弓町」、「その夏」、「女心」、「陽の当る道」、「魚屋十兵衛」、「男ざかり」、「船出の時」、「側用人」、「田沼時代」、「次期将軍の死」、「相良城」、「凶刃」、「終章」、

本書の題名「魚の棲む城」が どんな意味合いなのか分らないまま読み進めたが 後半の「相良城」の一文で明らかになり納得出来る。
晩年の田沼意次が 20年振りに領国遠江相良に国入りし やっと築城成った相良城から海を眺めながら 板倉屋龍介、魚屋中兵衛、新太郎に対して呟く。
「いつの日か さまざまな魚がこの湊に入って来るとよいな。わしはその時 この城にいて さまざまな魚達を迎え その話に耳傾けよう。海を越えてやって来る者にとって この城は魚達のくつろげる場であるとよいのだがな」、
その理想は 夢に終わってしまったいうことになる。

 


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