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高齢者の食事介助中の姿勢改善は赤ちゃんの発達過程にヒントがあります!

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赤ちゃん四つ這い

車椅子での食事介助の時、高齢者の姿勢がうまく保てず誤嚥が心配とお悩みの介助者の方も多いと思います。

この記事では高齢者の食事介助中に体が傾いてしまうなどのお悩みに赤ちゃんの発達過程から姿勢を改善するヒントをご紹介します。

特に食事介助が必要な高齢者の方は前や横に傾きやすいので、赤ちゃんが「うつ伏せで頭を持ち上げていく」という発達過程をヒントにすると、姿勢を上手く保てるようになります。

 

車椅子で高齢者が食事介助中に倒れる理由

車椅子での食事介助時に高齢者が倒れてしまう理由や対策についてはこちらの記事に書いていますので、合わせて参考にしてみてください。

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今回は食事介助中に傾いてしまう高齢者の姿勢改善を、赤ちゃんがうつ伏せで頭を持ち上げるときにどうやって腕の使い方を学んでいくのかをヒントに考えていきます。

実際に私が関わっている施設で食事介助中に体が傾いてしまうご相談を受けたときのケースで、写真と共に分かりやすく解説します。

 

要介護となる高齢者の体が食事介助中に前や横に傾くケース

食事介助中に体が傾いてしまうとご相談を受けたときの私が関わった患者さんのケースを見てみましょう。

高齢者が車椅子や椅子に座っている時、上体を起こせないのは、両腕や肘を使って体を支えられる環境が整っていないからなのです。

 

次に食事中に上体を起こせていない状況を、写真で詳しく解説します。

食事介助中に体が倒れる

見事に前に傾いています。

 

でも、体が傾いた状態でも何とか自力で食事は食べておられました。

体が傾いた状態で食べる

写真の座位姿勢では傾いた体のバランスを保つことに力を使ってしまうので食事も飲み込みにくく、誤嚥のリスクも高まります。

何より患者さんが一番つらい思いをされながら食事をされているというのが問題であると思います。

 

左肘がテーブルから落ちているのが見えるでしょうか?(黄色の丸で囲んだ部分)

左肘が落ちている

 

この方を後ろ側から見てみます。

左肘落ちている後方

右肘はかろうじてテーブルに支えられていますが(赤丸の部分)、左肘はテーブルから落ちて全く支えられていません。(黄色の丸で囲んだ部分)

ですから大きく左に傾いています。

スタッフの話では時間が経つにつれ、この高齢者の方は食事をしている間に更に左に傾いてしまい、食事どころではなくなることもあるということでした。

ご相談を受けた時点では、高齢者の方が車椅子座位で食事介助中に傾いてしまう理由の1つである車椅子座面のたわみ足底(足の裏)が床に付いていないという状態でもありました。

 

食事介助中の高齢者の腕を支える環境を作って座位姿勢を整えてみた結果

先ほどの食事中に肘や腕がテーブルから落ちてしまい、姿勢が傾いてしまっていた高齢者のケースでもう1度説明します。

このケースの方に私がやったことは

車椅子をこの方の体にあったものに変える。

底付きしない支持性のある車椅子用の座面クッションに変える。

足底(足の裏)を床に付けることをスタッフに徹底させる。

高さが調整できるテーブルに変えて落ちていた左肘と腕が支えられるようにする。

ということをしました。

写真のままですと左肘を支える場所がないので、テーブルから落ちてしまっていて上体を起こすことができません。

要介護である高齢者は上体を起こす筋肉が低下し、姿勢変形もしている方が多いので、両肘がテーブルで支えられることで上体を起こしやすくし、体のねじれが解消するような姿勢で座っていただきました。

 

変えたばかりの時の様子です。

座位姿勢変更後①

まだかなり前に傾いています。

でも、左肘が支えられたことで(赤丸の部分)体のねじれはなくなっています。

 

2週間経った様子です。

座位姿勢変更後②

前に傾くのが少なくなり、以前より頭を持ち上げられるようになっています。

 

3か月経ったころの様子です。

随分と頭を持ち上げることができるようになり、前や横に傾くことが少なくなりました。

 

高齢者の食事介助時の姿勢改善に腕の支えがポイントになる理由

車椅子で食事をする時、高齢者の体が傾いていくのを解消するには、腕が支えられるような場所を提供することがポイントとなります。

では、なぜ腕が支えられるような場所を提供すると体の傾きが解消するのでしょうか?

その理由として、赤ちゃんが「うつ伏せで頭を持ち上げていく」という発達過程をヒントに説明します。

 

体が傾かない対策として座面のたわみをなくす、足底(足の裏)を床に付ける、腕をアームレストやテーブルで支えることが重要だとお伝えしました。

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車椅子の選定や座面に関しては多くのサイトで解説されていますので、今回は腕をアームレストやテーブルで支えることについてフォーカスしてみたいと思います。

 

今回、私の関わったケースの方が前に倒れなくなった理由の1つとして、腕でテーブルを押せる環境を作ったことと、腕をサポートしたときの肩と肘の位置があります。

 

赤ちゃんが頭を上げている様子です。

分かりやすい様に肩と肘の位置に赤丸をつけました。

うつ伏せ①

 

もう少し月齢の進んだ赤ちゃんです。

上の赤ちゃんに比べると、肩の下に肘がきていますよね?

頭も更に高く持ち上がって安定しています。

胸も床から離せているのが見えるでしょうか?

 

赤ちゃんは発達過程の中で床を押すということを最初にします。

上の赤ちゃんは最初は上手く床を押せませんから当然頭の位置も低いですし、胸も床についています。

赤ちゃんは毎日毎日床を押して、どうやれば自分の頭がもっと持ち上がって胸も床から離れて、お母さんの顔を見たり、欲しいおもちゃを見つける事が出来るかを探究しています。

 

先ほどの食事中に肘や腕がテーブルから落ちてしまい、姿勢が傾いてしまっていた高齢者のケースで、対策してから2週間後の様子をもう一度見てみましょう。

左腕でテーブルを押す

左腕をご覧ください。(黄色の丸で囲んだ部分)

左腕でテーブルを押しているのがご覧になれますか?

この方も腕でテーブルを押すことで頭を持ち上げるようにバランスを取っています。

段々上手く押せるようになるとより頭を持ち上げることができるようになります。

 

更には肩の下に肘がくると安定するということも学びます。

肩と肘の位置についても写真で比べてみましょう。

うつ伏せ①

 

要介護である高齢者の方にも赤ちゃんと同じことが起きているのです!

 

食事介助時は高齢者自身の腕で体を支えられる場所を提供することで姿勢が改善する

私が関わったケースの患者さんは、両腕と両肘がテーブルで支えられる環境が与えられたことで、腕でテーブルを押していくと頭が持ち上がり上体が起きていくことに気がつきました。

更には肩の下に肘がくるように調整すると頭がもっと高く持ち上がるという体の使い方をもう一度学び直したことで体が傾かない姿勢を保持できるようになりました。

本当はその機能は残っていたのに、押す環境を長い間与えられなかったことで頭を持ち上げる、上体を起こすという機能を忘れていただけなのだと思います。

 

私たちがすることは、学べるように環境を整えてあげることです。

赤ちゃんでも大人であってもそれは同じなのです。

 

高齢者だから、理解力が乏しいから意欲がないから…という声も聞かれることがありますが、赤ちゃんだけでなく、大人になっても環境を整えてあげればいつでも体の使い方について学び直すことができるのです。

車椅子で食事介助をする時に高齢者の体が横や前に傾いてしまう時、赤ちゃんの発達過程から考えてみると案外シンプルに姿勢改善の方法が見つかるかもしれませんね。

 

まとめ

車椅子で高齢者が食事介助中に倒れるお悩みを私が関わったケースを例にしながら考えていきました。

解決の糸口として赤ちゃんの発達過程から姿勢を改善することをご紹介しました。

今回は「うつ伏せで頭を持ち上げていく」という発達過程をヒントにして考えていきました。

ポイントは腕でテーブルを押せる場所を作る、肩と肘の位置に気を付ける、環境を整えてあげれば要介護である高齢者であってもいつでも体の使い方について学び直すことができるということでした。

現場では難しいケースもあると思いますが、施設などで過ごされている方たちの中には、日々の変化が少ない毎日の中で唯一楽しみなことが「食事の時間」とおっしゃる方が多いです。

食事の時間が楽しいものになるように今回の記事がお役に立てば幸いです。

 

 

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