随分むかしの話しです。
およそ、35年くらい前になるでしょうか。
高度成長期の最終場面ではありましたが、まだ、消費者の購買意欲は高く、生産すれば売れる時代でした。
私が努めていた会社は、いわゆる大企業でした。
私は、毎日、営業の最前線で頑張っていました。
得意先への営業もありましたが、飛込み営業も大事な仕事でした。
(そのおかげで、新規であっても躊躇することなく訪問できるようになったことは、以前の記事でも述べた通りです。)
大企業の営業マンであったおかげで、随分とラクな営業ができた、という自覚は当時からありました。
それは、他社の(いわゆる中小零細企業の)営業マンと展示会等で知り合い、仲良くなり、彼らの考え方や動き方について、自社のそれと比較できるようになってはじめて、知ることとなったものです。
大企業の営業マンが得意先を訪問した場合、相手は慎重に応対してくれます。
(飛び込み営業は別です。そんなにうまくはいきません。)
丁寧な言葉を使い、失礼がないように細やかに神経を使ってくれます。
相手から見れば、(大企業の場合、)取り扱い金額が大きく利益も安定しているし、販売促進費等も大きくもらえるからです。
商品に対する消費者の信頼もあり、そのパイプを大事にしておけば、商売が継続できるからです。
ところが、中小零細企業の営業マンの場合、そんなに簡単ではなかったようです。
立場が逆転することが(まま)ありました。
営業マンの方が、得意先に対して細やかな気遣いをし、丁寧な言葉を使います。
とにかく、得意先のご機嫌を損なわないような対応に一生懸命になります。
(現在では当たり前のことでしょうが・・)
得意先からみれば、(大企業と比較すれば、)吹けば飛ぶような仕入先であり、扱い金額も小さく、他に代わりがいくらでもあるので、そのようになるわけです。
そのような場面を見たり聞いたりするに付けて、自分はラクだな、と思いながらも、
さて、人間として、一個人としてみた場合、どうなんだろう?
どちらの営業マンの方が、人間として立派なのだろうか?
ラクをして売上があがり、給料ほかの待遇がよい大企業の営業マン、
苦労してもなかなか売れず、待遇も決して良くはない中小零細企業の営業マン、
自分がなるとしたら大企業の方が良いに決まっているが、「一人対ひとり」としての営業能力を比較したとしたならば、大企業は負けているのではないか?
このように思ったことを覚えています。