つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

誘惑のアルト。~ 枢軸サリー。

2020年03月29日 08時16分53秒 | 手すさびにて候。
「第二次世界大戦」は、時期によって対立構造が異なる。

@戦端が開いた当初は、「英仏」対「独ソ」。
@フランス降伏後の図式は、「英」対「独伊」。
@ナチスの東部侵攻により、「英ソ」対「独伊」。
@真珠湾が黒煙に包まれて以降が、「英米ソ」対「日独伊」。
敵と味方が離合集散しながら、各地で繰り広げた戦闘の「集合体」と言える。

更に、核、ロケット、近接信管、レーダーといった新兵器が開発され、
空母と航空機を主役にする海戦、電撃戦、都市爆撃などの新戦術が発展した。
今回は第二次世界大戦から本格化した「電波戦」とでも呼べる戦いの話だ。

ほんの手すさび手慰み。
不定期イラスト連載、第百三十四弾は「枢軸サリー(Axis Sally)」。

移ろい易い人間の「心」を標的にした、ラジオによる「プロパガンダ放送」。
「枢軸サリー」とは、ナチス・ドイツの“対米電波攻撃手”の異名である。
(※枢軸は独伊の軍事同盟を指し、Sallyは女性名で「出撃」などの意を含む。)

本名:「ミルドレッド・エリザベス・ギラース」。
出身:アメリカ・メイン州ポートランド。
女優を夢見て、スポットライトの下に立つも道半ばで挫折。
渡欧し、ドイツの外国語学校で英語教師を務めた後、
「ラジオ・ベルリン」に採用され、女優 兼 アナウンサーとしてマイクの前に立つ。
その官能的で甘やかなアルトボイスは電波に乗り、
ヨーロッパ~北アフリカ~アメリカへと飛んで、多くの人心を惑わせた。

放送内容は、次のようなものだったという。
@前線の兵士に向け、祖国の恋人が不貞を働くかもしれないと語りかける。
@捕虜となった傷病兵のインタビューを通じ、ナチス庇護下の「快適な日常」をPR。
@人種差別政策を批判し、アフリカ系の兵士に猜疑心の種を撒く。
@ノルマンディー上陸作戦の直前、ラジオドラマで「アメリカ人の母親」を熱演。
 息子の無事を祈り、多くの犠牲者が出るだろうと憂慮した。
・・・いずれも戦意喪失を促し、気勢を削ぐのが目的である。

ドイツ以外の戦争当事国も、プロパガンダには積極的で、
特に“ニューメディア”ラジオによるそれは熾烈を極めた。

また、自国民に向けた戦意高揚プロパガンダも盛んである。
ナチスは、市価の3~4割程度で、選局を制限した「国民ラジオ」を開発。
各家庭のスピーカーからは、娯楽に混ざり、勇ましい演説が流れた。

それから三四半世紀余りが経った現在、
大衆扇動のツールは、電波に電脳ネットワークも加わり巧妙になっている。
注意しよう。
やはり情報は鵜呑みにしてはいけない。
そして、拒絶してもいけない。
少し勘繰りながら耳を傾け、行動を起こす前に立ち止まって考えてみるのがいい。

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