【溝部視点】
「慶が初めて『愛してる』って言ってくれた日だから、『愛してる』記念日』」
なんてアホらしい話を聞いた翌日金曜日。
渋谷達のマンションから出勤し、普通に仕事をして、通常通りの時間に家に帰ったのだけれども……
「…………おかえりなさい」
「? ただいま」
何となく、鈴木の様子がおかしい。元気がないというか……
でも、聞いても、そんなことはない、の一点張りで埒が明かない。と、いうことで、息子・陽太の部屋に乱入して聞いてみた。ら、
「お母さん、今日は朝からずっとあんな感じだったよ」
「え、なんで?」
「知らね」
「えー……」
なんで知らねーんだよー…とガッカリしているオレに陽太がアッサリと言った。
「本人に聞けばいいじゃん」
「聞いても教えてくれないから陽太先生にお聞きしているんですがっ」
「残念。オレも知らね」
「えー見捨てるなよー考えろよー」
ガシガシと体を揺すぶってやると、陽太は「あー…」と少し唸ったあと、「関係あるかどうか分かんねーけど」と言いにくそうに、言葉をついだ。
「慶が初めて『愛してる』って言ってくれた日だから、『愛してる』記念日』」
なんてアホらしい話を聞いた翌日金曜日。
渋谷達のマンションから出勤し、普通に仕事をして、通常通りの時間に家に帰ったのだけれども……
「…………おかえりなさい」
「? ただいま」
何となく、鈴木の様子がおかしい。元気がないというか……
でも、聞いても、そんなことはない、の一点張りで埒が明かない。と、いうことで、息子・陽太の部屋に乱入して聞いてみた。ら、
「お母さん、今日は朝からずっとあんな感じだったよ」
「え、なんで?」
「知らね」
「えー……」
なんで知らねーんだよー…とガッカリしているオレに陽太がアッサリと言った。
「本人に聞けばいいじゃん」
「聞いても教えてくれないから陽太先生にお聞きしているんですがっ」
「残念。オレも知らね」
「えー見捨てるなよー考えろよー」
ガシガシと体を揺すぶってやると、陽太は「あー…」と少し唸ったあと、「関係あるかどうか分かんねーけど」と言いにくそうに、言葉をついだ。
「昔の……千葉にいた頃のお母さんは、あんな感じなことが多かった気がする」
「…………え」
千葉にいた頃……前の旦那と結婚していた頃ってことだ。
それは……どういうことだ?
***
謎は解けないまま、金曜の夜は過ぎ、土曜日も終わり、日曜日。11月3日になった。
鈴木は金曜日よりは、まあまあ元気になってきたけれど、でも、やっぱり本調子じゃない感じがする。
それでも、予定通り、娘のよつ葉を連れて、陽太の野球部の練習試合を観に行った。
陽太の中学の野球部には、二年生が8人しかいないということもあり、陽太は一年生の中で唯一スタメン入りしている。でも、自分の打席が来るまでは率先してファールボールを取りにいったり、道具の整理をしたり、我が息子ながら、なかなか気が利く働き者だ。
来月一歳になるよつ葉は、先日から少しだけ歩けるようになった。今はひたすら歩いては尻もちをつくのを繰り返したがる。そして、そのうち疲れて、少し抱っこするとあっさり寝てしまう、という手のかからなさ。逆に将来がコワイ、と言われるけれど、陽太もそんな感じだったらしいので、よつ葉も良い子に育つだろう。
試合終了後の帰り道、そんな話をしながら、よつ葉の寝ているベビーカーを押しつつ、鈴木と二人で並んで歩いていたけれど……
(やっぱり元気がない……)
会話も盛り上がることなく、止まってしまった。
何なんだろう。オレ、何かしたか?
うーん、と考えてみる。前日は、渋谷達のマンションに泊まりにいって……
(ああ、そういや、今日は3日か。『愛してる』記念日だっけ……)
桜井が、シラフで「愛してる」って言ってやれ、とかおかしなこと言ってたな。絶対喜ぶからって。
(うーん……)
でもうちの場合、絶対、殴られると思うんだけど……
(でもまあ、この現状を打開するためには、そのくらいパンチのきいたことを言うのもありか)
そんなことを思いつつ……
「なあ……」
横を歩く鈴木の顔をのぞきこみ、一言。
「愛してるよ」
言ってみた!
それで、反撃に備えて身構えた。けれど…………
「……なにそれ」
ピタリ、と鈴木の足が止まった。そして、予想に反して、顔がみるみる青ざめめていく。そして、小さく、でも鋭く言われた
「何か後ろめたいことでもあるの?」
「え?」
後ろめたいこと?
「やっぱり、ハロウィンの夜……」
「え?」
ハロウィンの夜って、渋谷達のマンションに泊まりに行った夜のことか?
「え?」
「え?」
ハロウィンの夜って、渋谷達のマンションに泊まりに行った夜のことか?
「え?」
「おかしいと思ったんだよね。急に泊まってくるなんて。あの日……」
「ちょい待てちょい待て!」
何を言い出すのかと思えば!
「それは夜遅くに帰ったらお前に迷惑がかかると思って、渋谷と桜井のところに……って、オレ、連絡したよな!? 疑ってるなら聞いてみろよっ。あの正義感の塊の渋谷が嘘つくわけねえし、天然桜井はそもそも嘘つけねえだろっ」
「…………」
「…………」
「…………」
鈴木はジッとこっちを見ていたと思ったら、ボソッと、
「迷惑って何」
「何って……」
何もやましいことはないのに、そんな目で見られてキョドってしまう。けど、何とか言葉を継ぐ。
「お前、寝てていいっていうのに、絶対、顔出して『おかえり』っていってくれるじゃん? すげー嬉しいけど、起こしちゃったり、起きて待っててくれたりするの、すげー申し訳なくて……」
「……別に申し訳なくないでしょ」
「いやでも」
「なに?嫌なの?」
「いえいえいえいえ」
今、ピキッて聞こえた……
鈴木さん、怖い。
でも、恐怖に打ち勝ち、なんとか言葉を続ける。
「嬉しいです。そりゃ嬉しいです。だーい好きな鈴木さんの顔見てから一日を終えられることがオレの幸せです」
「……別に申し訳なくないでしょ」
「いやでも」
「なに?嫌なの?」
「いえいえいえいえ」
今、ピキッて聞こえた……
鈴木さん、怖い。
でも、恐怖に打ち勝ち、なんとか言葉を続ける。
「嬉しいです。そりゃ嬉しいです。だーい好きな鈴木さんの顔見てから一日を終えられることがオレの幸せです」
「…………」
「…………」
「…………」
今度こそ、手が飛んでくるか?! と身構えたけれど、そんなことはなく、鈴木は大きく大きく息を吐くと、
「………私も同じだよ」
「え」
同じ?
「私も同じだから、迷惑かけてるなんて思わないで帰ってきて」
「え」
「…………」
「…………」
同じ?って?
「ええと……」
「私も溝部の顔みてから、一日終わりにしたいの」
「ええと……」
それは……それは。
「ええと……それは、もしかして、だーい好きなのも同じ?」
「当たり前でしょ」
「………」
「………」
「………」
「………」
「えええええええええ?!」
思わずデカイ声を出してしまい、慌てて口を閉じる。よつ葉が寝てるんだった!
すぐにボリュームを落として鈴木に問いかける。
「…………」
「…………」
今度こそ、手が飛んでくるか?! と身構えたけれど、そんなことはなく、鈴木は大きく大きく息を吐くと、
「………私も同じだよ」
「え」
同じ?
「私も同じだから、迷惑かけてるなんて思わないで帰ってきて」
「え」
「…………」
「…………」
同じ?って?
「ええと……」
「私も溝部の顔みてから、一日終わりにしたいの」
「ええと……」
それは……それは。
「ええと……それは、もしかして、だーい好きなのも同じ?」
「当たり前でしょ」
「………」
「………」
「………」
「………」
「えええええええええ?!」
思わずデカイ声を出してしまい、慌てて口を閉じる。よつ葉が寝てるんだった!
すぐにボリュームを落として鈴木に問いかける。
「お、お前……オレのこと好きって認めるのか?!」
「は?」
馬鹿じゃないの?
と、心底呆れたように言った鈴木。
「好きに決まってるでしょ。なんで好きでもない人と結婚すんのよ」
「ええええええ……」
うわ……
こうもアッサリ言ってくれるとは……
「………」
「………」
「………」
「ホント……馬鹿だね」
ふっと微笑んだ鈴木の柔らかい笑顔。鈴木はそのまま、優しく優しく言ってくれた。
「……好きだよ?」
「え………」
うわ………
うわ………
うわ………
桜井ーーーーーー!!
「ちょ、待て。今すぐ渋谷にラインを打つ!」
「は?」
馬鹿じゃないの?
と、心底呆れたように言った鈴木。
「好きに決まってるでしょ。なんで好きでもない人と結婚すんのよ」
「ええええええ……」
うわ……
こうもアッサリ言ってくれるとは……
「………」
「………」
「………」
「ホント……馬鹿だね」
ふっと微笑んだ鈴木の柔らかい笑顔。鈴木はそのまま、優しく優しく言ってくれた。
「……好きだよ?」
「え………」
うわ………
うわ………
うわ………
桜井ーーーーーー!!
「ちょ、待て。今すぐ渋谷にラインを打つ!」
「は?」
キョトンとした鈴木の横で、速攻でスマホを取り出した。
「桜井の気持ちがよく分かった!」
渋谷とのトーク画面を開く。
『お前、今から桜井に『愛してる』って言ってやれ!』
『今日、愛してる記念日なんだろ?』
『桜井はシラフで言われたいって言ってたぞ』
『やってる最中もダメだからなっ』
ダダダと打ち込んでから、鈴木を振り返る。
それでダメ元で言ってみた。
「あの………愛してる、もいただけたりします?」
「は?」
思いきり眉を寄せた鈴木。
「馬鹿じゃないの?」
「馬鹿でもなんでもいいからっ」
「寒いから早く帰りたいんだけど」
「言ってくれたら帰りますっ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
鈴木は「まあ……言ったことないもんね……」とボソリと言ってから、
「……愛してる、よ?」
ベビーカーを掴んでいるオレの手を、上からぎゅうっと掴んでくれた。
うわ……幸せ過ぎる。
後で桜井にもラインを打とう。
『うちも今日は、愛してる記念日に決定』
って。
---
キョトンとした鈴木の横で、速攻でスマホを取り出した。
「桜井の気持ちがよく分かった!」
渋谷とのトーク画面を開く。
『お前、今から桜井に『愛してる』って言ってやれ!』
『今日、愛してる記念日なんだろ?』
『桜井はシラフで言われたいって言ってたぞ』
『やってる最中もダメだからなっ』
ダダダと打ち込んでから、鈴木を振り返る。
それでダメ元で言ってみた。
「あの………愛してる、もいただけたりします?」
「は?」
思いきり眉を寄せた鈴木。
「馬鹿じゃないの?」
「馬鹿でもなんでもいいからっ」
「寒いから早く帰りたいんだけど」
「言ってくれたら帰りますっ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
鈴木は「まあ……言ったことないもんね……」とボソリと言ってから、
「……愛してる、よ?」
ベビーカーを掴んでいるオレの手を、上からぎゅうっと掴んでくれた。
うわ……幸せ過ぎる。
後で桜井にもラインを打とう。
『うちも今日は、愛してる記念日に決定』
って。
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お読みくださりありがとうございました!
これに慶たちのおまけをつけるつもりだったのですが、おまけにまで手が回らなかった……おまけは来週火曜日に持ち越します…
読みに来てくださった方、ランキングクリックしてくださった方、本当にありがとうございます!
よろしければ次回おまけもどうぞよろしくお願いいたします。
周りにたくさんの幸せをもたらしてますね。
コメ返ありがとうございました。
おまけ楽しみにしています。
慶に愛してるなんて言われたら
浩介ワンコ嬉ション決定ですねww
お返事遅くなって大変申し訳ありません。
コメント、スマホから読ませていただいていたのですが、どうもスマホからコメントのお返事って書けなくて……
で、うちのパソコンはリビングにあって、私がブログをやっていることは秘密にしているため、みんなが寝静まった後にしか使えず……
そんな訳でお返事遅くなって大変失礼いたしました。
朝、コメント読ませていただいて、何てお返事しよう~~とワクワクしながら今日一日過ごしておりました。本当にありがとうございます!
そうそう。そうなんです。
知らないうちにたくさんの幸せをもたらしているんですよね!!
幸せって幸せな人達から伝染しますよね~~
彼らの高校時代の友人、山崎も、二人を見てて「結婚もいいかも……」なんて思っちゃったりしてましたし……
わ~~嬉しいご指摘ありがとうございます!
それで!Rさん!!
「浩慶」!!そうそう「浩慶」!!
なんか、慶の方が男らしいから「慶浩」って書きたくなっちゃうんですけど!
でもそうなんです!うちの二人は「浩慶」固定なんですっっ(←強気受け好き発揮)
「浩慶」って正確に!書いてくださってありがとうございます~~
そして、嬉ション!(笑)嬉ションって!!(笑)(笑)
浩介ワンコ(笑)確かに!犬っぽい~~
是非とも、嬉ションするくらい喜んでもらいたい!!
一週間かけてボチボチ書き進めてまいります。
ご期待に添えるものが出来上がるか、ものすっごく不安しかないのですが……
なんとかボチボチボチボチ……慶君に期待したいと思います……
嬉しいコメント本当にありがとうございました!!
おかげで今日も一日乗り切れました。
尚さん お帰りなさいませ (人*´ω`)
って、更新に気づいたの一昨日… ←遅いw
私のお気に入り ♡溝部っち♡
『大恋愛』以降、ムロさんの“株“急上昇⤴︎⤴︎
もう ハライチ澤部の影は消え… た? と思われマス(笑)
ムロさんの少し前の奥さん 戸田恵梨香の『スカーレット』
観てます?
いいよねー♡
面白いねー♡
方言の違和感も無いし、
今のところ 非の打ちどころございません!
(ダメ常治とのんびりマイペース、喜美子に依存し過ぎ母にはムカつくけれど…)
もうあまり出でこないかもですが
鈴木さん@水野美紀@ちや子さん♡
男前で好きー♥
火曜におまけUP との事で ♪
でもでも うっかり読みに行くのを忘れてしまい…
って、風邪っぴきでしたかー (¯ω¯;)
しっかり食べて、しっかり寝て
早く良くなれ~~~
(。・ω・)σ ⌒*
気が付くの遅くて大変申し訳ありません!!
もうねえ風邪が全然治らないんですよ……
もう風邪飽きたーーー!!
ということで……
溝部っち(笑)お気に入りと言ってくださってなんてなんて嬉しいことか!!
ありがとうございますーーー!!メチャメチャうれしいです!!
大恋愛、ホント良かったですよね~♥
(ハライチ溝部消えた?!消えた?!よかった♪♪私もすっかり溝部=ムロさんです♪)
で、『スカーレット』!観れてないんですよーーー!!
観ようと思って録画していたのに、全然みれなくて、でもみようと思ってて……
でも、3週間たまった時点で間違って消してしまって(涙)
(うちのDVD、見終わった後に、次の録画の段にカーソルが勝手に下りてしまうことがあって……。それに気が付かず、見終わったものの削除操作したつもが、その下にあったスカーレットが消えてしまい……)
えー非の打ちどころがないってーーー!!
そんなこと聞いたら余計に観たいーー!!
男前の水野美紀~~観たかったな~~!!
これから観ても話についていけるかな……
ええと……私の今クールドラマのお気に入りは「俺の話は長い」です。
そして今さらアニメ「ユーリ!!!onICE」の再放送を観てハマってます。
にしっぺ。さんもくれぐれもお風邪など引かないようお気をつけください~~。
嬉しいコメント本当に本当にありがとうございました!