【慶視点】
12月23日は、おれと浩介の「親友」という関係に「恋人」をくっつけることになった記念日だ。
浩介はやたらと記念日を大切にするので、やれ初キス記念日だの出会った記念日だの、その他諸々覚えている。反しておれはとんと無頓着。でも、さすがに、誕生日と、この「12月23日」だけは覚えている。昨年までは祝日だったから思い出しやすかった、ということも理由として挙げられる。
12月23日は、おれと浩介の「親友」という関係に「恋人」をくっつけることになった記念日だ。
浩介はやたらと記念日を大切にするので、やれ初キス記念日だの出会った記念日だの、その他諸々覚えている。反しておれはとんと無頓着。でも、さすがに、誕生日と、この「12月23日」だけは覚えている。昨年までは祝日だったから思い出しやすかった、ということも理由として挙げられる。
でも、令和になった今年からは平日なわけで……
「ケーキ買っておくね」
朝、駅で別れる時にニコニコで浩介にいわれたけれど、インフルエンザが蔓延している月曜日は残業は必至だ……
予想通り、職場の病院を出られたのは夜の8時半過ぎになってしまった。これから帰るという連絡だけして、帰り道を急ぐ。昨日と違って、今日は雨じゃなくて良かった。
(……雨は、嫌いだ)
「ケーキ買っておくね」
朝、駅で別れる時にニコニコで浩介にいわれたけれど、インフルエンザが蔓延している月曜日は残業は必至だ……
予想通り、職場の病院を出られたのは夜の8時半過ぎになってしまった。これから帰るという連絡だけして、帰り道を急ぐ。昨日と違って、今日は雨じゃなくて良かった。
(……雨は、嫌いだ)
浩介がおれの元を去っていった絶望的な朝にも雨が降っていた。
あれから10年以上経つというのに、まれに、不安な気持ちが体中に蔓延して、叫びだしたくなる時がある。深い穴の中に落ちてしまいそうになる……
(忘れろ。忘れろ……)
慌てて記憶に蓋をする。思い出さない。考えない、考えない。忘れろ。忘れろ……
と、
『迎えに行くよ♥ 渋谷何時の電車?』
「…………」
救い出すような、浩介からの能天気なメッセージにホッ息をつく。
(大丈夫……大丈夫)
浩介はいる。ちゃんと、いる。おれのことを待っててくれている……
『9時1分発』
『了解。改札でね』
何でもないことのように、そこに、いる。
思えば、12月23日は、あの離れていた3年間以外は、必ず一緒に過ごしていた。
(いや……23日が終わるギリギリに帰ったこともあったな……)
仕事が忙し過ぎて、なかなか会えなかったあの頃……そのせいで浩介の異変に気が付かなかったことは、もう言い訳のしようがない。もうあんなことはしない。だから、だから浩介……
思えば、12月23日は、あの離れていた3年間以外は、必ず一緒に過ごしていた。
(いや……23日が終わるギリギリに帰ったこともあったな……)
仕事が忙し過ぎて、なかなか会えなかったあの頃……そのせいで浩介の異変に気が付かなかったことは、もう言い訳のしようがない。もうあんなことはしない。だから、だから浩介……
電車は少し遅れて駅に着いた。
早く会いたい。
人波をすり抜け、改札に急ぐ。早く、早く、早く……
「おかえりなさい!」
「……っ」
出迎えてくれた浩介のふんわりした笑顔に、心の底から安堵する。
浩介が、いる……
「お疲れ様。車、スーパーに停めたんだ。買い物したいんだけど大丈夫?」
「ああ」
軽く肯くと、浩介がまたニッコリとした。体中が浩介で満たされていく。
いつものように、二人並んで歩く。
「あのね、さっきちょっと見たんだけど、チキンが美味しそうなんだよ」
「チキン?」
なぜ、チキン? って……
「ああ、明日クリスマスか」
「そうそう。やっぱりあの照りは家では出せないのかなあ。明日作るつもりだったけど、買っちゃおうかなあ」
「おれ明日休みだから、買うなら買ってくるぞ?」
「ホント!? じゃあ、今から下見ね!」
「ああ」
明日の話ができる幸せがここにある。
「今日の夜ご飯は、リクエストにおこたえして、ビーフストロガノフを作ってありまーす」
「おお、やった!」
思わずパンっと手を合わせると、浩介が目元を和らげ、おれの頭を軽く撫でてくれる。
「ケーキもあるからね」
「おお」
「あ〜良い記念日だな〜」
「……そうだな」
記念日は、一緒にいられる幸せを再認識するためにあるのかもしれない。
ーーー
お読みくださりありがとうございました!
『渋谷何時の電車?』の『渋谷』は駅名の『渋谷』であって、慶の苗字の『渋谷』ではありません。ちょっと紛らわしい……。慶も浩介も渋谷乗換なんです。
……って、本当はこれの浩介視点の続きもあるんですけど、日にちが過ぎ過ぎちゃうのでここまでであげちゃいます。本当は24日(火)の朝にあげるつもりだったのです……
そのうち決着をつけてあげたい慶のトラウマ。でもきっと、なくなることはないんだろうなあ……と思います。思い出す頻度は減ってるんだろうけど……。まあ、反省するためには良いのかも?と思ったり?どうなんでしょう……
更新ないにも関わらずクリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当にありがとうございます!!どれだけ嬉しくて有り難いことか!!
たぶんまた忘れた頃に更新させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。
お忙しい中アップして頂きありがとうございます
二人の近況が知れてほっこりします
記念日の度に
二人のラブラブ状況をお知らせ頂ければ
とても嬉しいです
良いお年をお迎えください
そうそう、途中で 「渋谷、あれ 何かの時には苗字呼びだったっけ?」と思ったフォローまでしてくださってありがとうございます。
慶くん、まだまだ不安を感じるのかぁ。未来の話をなんの気なしにしますが、それは幸せなことなんですね、改めて教えていただきました。
浩介くん視点の続きもあるとか。新年の楽しみにしておきます。ではよいお年を!
有難うございます
ただ一言お礼が言いたくて
良いお年をお迎えください
>お忙しい中アップして頂きありがとうございます
えええ!ありがとうなんてそんな!とんでもないです!!
なんか最近、家にいても通勤中も仕事のことばかり考えてしまって…。これを回避するには妄想しかない!!と……
本当は、二つの円の享吾と哲成の話を書きたいなーと思ってたんです。
彼ら、一緒に住みはじめて4か月過ぎなので、生活の違いも出始めてて色々……(哲成はキチッと三食食べる派だけど、享吾は食生活乱れてても平気、とか…)
で、書くなら、慶と浩介にも出てきてほしいなあ。でもそうすると話長くなるなあ。そこまでは書く時間ないなあ……
ということで、記念日の話を書くだけにとどめたのでした。
でもいつかは書きたい享吾と哲成の話……
>二人の近況が知れてほっこりします
わ~ほっこり!?ありがとうございます!!
この二人のことを考えると、なんだか和みます…
>記念日の度に
>二人のラブラブ状況をお知らせ頂ければ
>とても嬉しいです
わ~~そんな嬉しいお言葉本当にありがとうございます!!
なんの捻りもオチもないこんな日常話にそういっていただけるなんて、なんて有り難いことか!
本当は、何か事件が起きた方が物語としてはワクワクするのかもしれないんですけど……
私的には、そこに見えたことを書いているだけなので、無理くりひねり出すことはしたくなくて。
今後もその方法を変えることはないので、もう二人の関係を揺るがすようなことは起きようがないかなあ……
いや、でも、何か見えちゃったときには、書きますっ……が、うーん。何もなさそうですよね^^;
そんなわけでおそらくずっと何のかわり映えもなくラブラブしているだけの二人ですが、お言葉に甘えてまた報告させていただきます!!!
心強いお言葉本当にありがとうございます!!
>良いお年をお迎えください
ありがとうございます♪
ai様も良いお年を~~~
嬉しいコメント本当にありがとうございました!
>キャー、またまた更新ありがとうございます!
きゃーコメントありがとうございます!
>そうそう、途中で 「渋谷、あれ 何かの時には苗字呼びだったっけ?」と思ったフォローまでしてくださってありがとうございます。
おおおおお!慶の苗字が渋谷だってしっかり覚えていてくださって、疑問に思ってくださって!ありがとうございますーー!
そうなんです。自分で書いてて、渋谷って紛らわしいよなあ……と思ったんです。
でも、確実に何時に最寄り駅を着くかを知るには、渋谷発の時間を聞くよなあ……と。
そして、浩介は「何時に着く?」とは絶対聞かない。わざわざ慶に計算させたりしない。「9時1分発ってことは12分に駅につく」と自分で計算。そういう細かい事、浩介さん気にする子。
ということで、「渋谷何時」だったのです^^
乗換が渋谷じゃなければ紛らわしくなかったのにー。
疑問に思ってくださってありがとうございます~~~~!
>慶くん、まだまだ不安を感じるのかぁ。未来の話をなんの気なしにしますが、それは幸せなことなんですね、改めて教えていただきました。
そうそう。実は慶は、片思いしていた時期長かったし(しかもその間、他の女との恋路の応援までさせられたし)、置いていかれたトラウマもあるし、ふとした時に不安に思うのはしょうがないですよね~~^^;
そうそう。未来の話をできるって、本当に幸せなことですよね^^
慶はあの3年の間で嫌というほどそのことを思い知ったので……未来の話をできる今を大切にしよう。
>浩介くん視点の続きもあるとか。新年の楽しみにしておきます。ではよいお年を!
ありがとうございますーー!
浩介視点は慶視点より明るくなるに違いない。
嬉しいコメント本当にありがとうございました!
良いお年を~~~
>有難うございます
>ただ一言お礼が言いたくて
まああああああそんな有り難いお言葉、本当にありがとうございますっ。
こうして読んでくださる方、更新していないのにクリックしてくださる方がいらっしゃるということがどれだけ嬉しいことか……
自己の確立……というんでしょうか。
昔、自分のことを忘れ去られてしまった主人公の物語を書いたことがあるのですが、その時に書きたかったことは、「自分というものは人に知られてこそ「自分」として存在できる」ということだったのです。
私の中だけで存在していた慶や浩介が、こうして知っていただくことができたことで、本当に存在しているようになれて……命が吹き込まれた、というか……
読んでくださって、知ってくださって、こうしてコメントくださって、本当に本当にありがとうございます。夢のようです。
>良いお年をお迎えください
ありがとうございます!
すだち様もどうぞ良いお年を……
嬉しいコメント本当にありがとうございました。