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BL小説・風のゆくえには~2つの円の位置関係9

2018年10月09日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 2つの円の位置関係

【哲成視点】


 その試合での村上享吾はものすごかった。光のオーラを纏っているようだった。

「享吾、いつもと全然違う」

と、渋谷も目を丸くしていた。渋谷によると、スピードもまるで違ったらしい。


 バスケ部は残念ながら負けてしまったのだけれども、村上享吾の活躍は結構な噂になり、翌日、クラスでも話題になっていた。

「実は享吾君って、かっこよくない?」
「私は球技大会の時から気がついてたよ!」

 なんて女子達がコソコソと話しているのが聞こえてきたくらいだ。


「享吾、すごかったんだって?」

 帰り道、幼なじみで親友の松浦暁生にまで言われた。

「テツ、観に行ったんだろ?」
「うん。すごかったんだよー」

 思い出しても興奮してきてしまう。あの時の村上享吾の、光の塊みたいな姿。あんな風に戦えたらどんなに気持ちいいんだろう……

 伝わらないもどかしさの中、どんなに「すごかった」のかをなんとか説明していたところ、

「そうか……」

 なぜか暁生の瞳が曇った。……何?

「どうかした?」
「いや……嫌な噂を聞いてたから……」
「噂?」

 って、まさか……

「まさか、キョーゴがスタメン奪うために渋谷をわざと怪我させたって噂のこと?」
「……………」
「暁生、信じてんの?」
「………………信じたくはないけど」

 暁生はふうっと大きく息をついた。

「その活躍を聞いたら、本当のことのような気がする」
「でも、荻野も違うって……」
「違うにしても」

 立ち止まった暁生は、眉を寄せて言葉を継いだ。

「渋谷が気の毒すぎる。中学最後の大会だったのに。今までバスケ部引っ張ってきたのは渋谷なのに」
「………………」

 それはそうだけど……でも………

「でも……キョーゴはそんなことする奴じゃねえよ」
「………………。ずいぶん仲良いんだな」
「え」

 ポン、と頭に手を置かれた。

「本当に、享吾って信用できる奴なのか?」
「……………」
「オレも学級委員会で一緒だから、少しは話したことあるけど、何て言うか……つかみどころのない奴だよな?」

 ジッと暁生の目がのぞきこんでくる。

「テツ」
「……………」
「お前は単純で騙されやすいから心配だよ」
「そんなこと……」
「オレはさ」

 ふっと笑った暁生の手が、ポンポンと頭を撫でてくる。

「オレは、テツのお母さんにテツのこと頼まれてるから」
「……………」
「あんま、変な奴とは関わんなよ?」
「暁生………」

 変な奴って……村上享吾は別に変な奴だとは思わないけど……

「分かったか?」
「うん………」

 とりあえず、うなずいた。いつものように。暁生の言うことには、いつもそうやってうなずいてきた。

(でも………)

 村上享吾は、よく分からない奴ではあるけれど、悪い奴ではない。それだけは、オレは、分かっている。

 だから、オレは…………




【享吾視点】

 クラスの雰囲気がまた変になった。また、コソコソと噂されている。

 週明け初日はわりと好意的な視線が多かったのに、2日目からは冷たくなっていき、3日目には、無視してくる奴が増えた。

 理由は、渋谷に怪我をさせた件だ。せっかく噂は落ち着いてきていたのに、日曜の試合で本気を出しすぎたせいで、「やっぱり、わざと怪我をさせたらしい」と言われてしまっている。

(………別にいいけど)

 もうすぐ夏休みに入る。それまでの辛坊だ。

 それに……………

「キョーゴ、キョーゴ! ゴミ捨て一緒に行こうぜ!」
「………………」

 みんなの態度がおかしくなっていく中、村上哲成だけはいつもと変わらなかった。いつも通り、ヘラヘラとオレに絡んでくる。

「………………村上」
「あ?」

 ゴミ捨てに向かいながら、村上に聞いてみた。 

「オレと一緒にいると、お前まで無視されたり………」
「しねーよ」

 肩をすくめた村上。

「したとしたって、ほっとけばいいだろ。別に悪いことしてるわけじゃねえし」
「でも………」
「キョーゴ」

 村上が強い口調で言葉を遮ってきた。

「お前が渋谷をわざと怪我させたんじゃないって、オレは知ってる。渋谷自身もそう言ってたし、現場を見てた荻野もそう言ってた」
「……………」
「お前は悪くない。そのうちみんなも分かるって」

 振り向いた村上。黒目がちな瞳が眼鏡の奥でクルクルとしている。

「だから、気にすんな」
「……………」
「な?」

 村上の、いつもの「ニカッ」とした笑顔………

「……………」

 なんとかうなずくと、村上はゴミ箱を持ち直してまた歩きだした。

(村上………)

 その後ろ姿についていきながら、大きく息をつく。

 やっぱり、お前は変な奴だな……。
 

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お読みくださりありがとうございました!
すっかり中学生の青春物語。やっぱり「BL」の「L」が抜けてる……そんな真面目なお話をお読みくださり本当にありがとうございます!

続きは金曜日に。お時間ありましたらお付き合いいただけると嬉しいです。

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