小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

前回記事の上久保靖彦説の要約

2020年08月21日 14時11分39秒 | 社会評論
以下に掲げるのは、前回の記事「第2波は来たか」の付録です。前回記事の中で、松田学氏による上久保靖彦教授の説(「日本人はすでに集団免疫が獲得できている」)の紹介動画をURLのみ記載しておきました。
https://www.youtube.com/watch?v=ajWWHBem-r0&fbclid=IwAR2dOCBCY1Wxh_0FL24zS4W1aBaY8birz8cYao-NGR6eHfzCoTDWXmpLh7E
このほど、ある方からこの動画記事の詳しい要約が寄せられました。たいへん正確で遺漏のないものなので、ここにコピペさせていただきます。
なお前回記事の中に、「コロナ感染者が死亡した場合、死因をコロナとせよとの厚労省の通達があったという情報がある」と書かれていますが、そのソースは、この動画記事でした。Q&Aの部分を読むともっと正確な形で出てきます。




上久保靖彦 京都大学大学院教授によるデータ分析から判明した事実

<コロナウイルスとインフルエンザウイルスは逆相関の関係にある(疫学調査の結果)>

 ・インフルエンザが流行すると免疫ができるのでコロナにかかりにくくなる

 ・コロナにかかると逆に免疫物質ができてインフルエンザにかかりにくくなる

 ・日本のインフルエンザ流行曲線をみると、1月のある時点から不自然な減り方(急激な減り方)をしている。
このときに新型コロナウイルスK型が日本に入ったのではないかと思われる。

<新型コロナウイルスはスパイク部分(突起の所)の形によってS型 K型 G型に分けられる>

 ・新型コロナウイルスは、突起の部分で人間の細胞にある受容体と結合して感染するが、この突起の部分が変異して、現在S型、K型、G型の3つがある

 ・日本が新型コロナウイルスとどのように関わってきたか、経緯

  2019年12月~ 
  弱毒性の先祖型であるS型が中国で発生し、日本に入ってくると共に世界に拡散

  2020年1月13日~3月8日
  S型が変異したK型が中国人観光客を介して日本に流入、この時点で集団免疫が成立(人口比率で55%免疫獲得 T細胞免疫)
  台湾やベトナムといった中国の周辺国も日本と似たような状況で死者数が非常に少ない

  ※欧米は2月はじめに中国からの入国を全面規制シャットアウトしているので、K型による集団免疫は獲得できていない

  2020年~
  K型が変異したG型(武漢型が上海で変異したのが欧米型)が襲来。すでに強力なT細胞免疫を獲得していた日本ではT細胞免疫によって武漢型・欧米型共に撃退に成功

  ※欧米はK型が流入しなかったのでT細胞免疫ができていなかった。S型のみでK型の暴露がなかったせいでAED(抗体依存性感染増強)が生じ、G型ウイルスを強化・増強して劇症化・感染拡大を起こしてしまった

  G型が集団免疫獲得に至るには人口比率85%が感染する必要があるが、日本の場合、すでに4月の時点で達成されているものとみられる。

  今後、G型が変異したY型、H型が流行する可能性があるが、獲得したG型の免疫を維持するため、免疫を獲得できている者についてはむしろウイルスに曝され続ける方がよい

<免疫とは、自然免疫と獲得免疫がある。獲得免疫にはT細胞免疫と液性免疫がある>

 ・新型コロナウイルスの免疫で重要なのはT細胞免疫だが、現在行われている検査ではB細胞免疫が評価されているだけ

 ・現在、T細胞免疫の状態を調べる検査キットを開発中

<Q&A>

Q:中国ではS、K、Gと順序良く感染してるにもかかわらず、武漢G型で大爆発したのはなぜか?

A:発生地の武漢にかぎってはS、K、Gが時間差無くほぼ同時に発生。SやKでめんえきを獲得する時間がなかったことによるものと思われる

Q:変異したウイルスは6000種もあるっていうけど?

A:人間の細胞の受容体と結合して取り付くための突起部分の変異が重要で、その突起部分の形がS型、K型、G型の3種あると言う話。Gの後もI型H型と変異は続くが、だいたいH型で終わる。意味のある変異は1年くらいで終わる。

Q:集団免疫戦略(わざとウイルスに曝されて免疫を獲得する)をとったスウェーデンは大失敗だったじゃないか

A:世界のリスクマップをみるとスウェーデンはリスクの高い国なので集団免疫戦略はやるべきではなかった。むしろ、周辺のノルウェーやフィンランドで集団免疫戦略をやるべきだった

Q:コロナウイルスを大量保有した中国人観光客の実測値での検証がないぞ。「正常性バイアス」の議論で経済活動再開最優先主義者の好みに合う説明をしているだけでは?

A:実測値をとることは不可能(実際に当時どれだけウイルスが入ってきてたのかを見るのは不可能)。だからこそデータ見て推計(疫学調査)をおこなっている。批判をするのであれば、データをもってしていただきたい。

Q:こんなに短期間で集団免疫が達成されるはずがない

A:日本についてはK型に曝された期間が長く、集団免疫を獲得するに足る十分な時間があった

Q:抗体検査の陽性率は極めて低い。集団免疫は達成されていないはず

A:新型コロナウイルスの感染を防ぐ主な免疫であるT細胞免疫については検査されておらず、現在調べられているのはB細胞免疫

Q:PCR検査に代わる免疫検査方式を確立すべきじゃないか

A:現在開発中です

Q:BCG説や遺伝などの自然免疫で説明できるのではないか?

A:BCGについてはBCGをうっていても死者が多い国もあれば、BCGをうたなくても死者が少ない国もあるので、BCG説についてはどうか分からん。

Q:陽性でも暴露なら、自身が重症化しない、他者に感染させないのか

A:
感染者数が増えていると言うけれど、正確にはPCR陽性者数です。
集団免疫が達成された現在の日本では、すでに感染して免疫ができている所に再びウイルスがやってきているということ。
なので、免疫細胞が再度侵入してきたウイルスをすぐに駆除するので、自分も重症化しないし、他にうつすこともほとんど考えられない

Q:集団免疫が達成されたはずのいまでも高熱のコロナ患者が発生し、今までに感じたことのない症状がでている

A:
新型コロナの検査では新型コロナしか検出できない。肺炎球菌を培養した検査であれば肺炎球菌が検出される。鼻孔の黄色ブドウ球菌を培養した検査では黄色ブドウ球菌が検出される。
新型コロナが検出されても、発熱などの症状は他の菌やウイルスによるものである可能性がある。
新型コロナに似た症状を起こす細菌やウイルスはたくさんある。

Q:数字を見ると、重症者が再び拡大しているのではないか

A:
6月18日に厚生労働省が各都道府県に「コロナウイルスに感染したことがあり、その後死亡した人については、死因を問わず新型コロナで死亡したとして公表せよ」という連絡が通達されている。
この通達があった後から死亡者数が増えている
たとえ、死因が別の病気によるものだとしても、過去にコロナウイルスにさらされたことがある者については全てコロナで死んだということにされている
注意して見てほしいのが、感染者数の推移とPCR検査数の推移は連動しているが、死亡者数の推移はまったく連動していないというところ

Q:安倍総理はどうして上久保教授による分析結果を国民に語らないのか

A:安倍総理も、菅官房長官も加藤厚労大臣もこれらのことは知っている。ただ、政治力の強い専門家会議の意見の方を尊重しているだけ

Q:後からG型に感染した35%の人は免疫がなかった状態での感染なので、欧米並みに死者が出るはずではないか

A:欧米はAEDで重症化してしまった。欧米で起きていることと日本で起きていることでは全く違う


<2020年7月9日の新型コロナ国内感染状況と他の死因との比較>

 ・2018年の日本の死亡者比較

  交通事故 3532人(人口10万人当たり2.94人)
  インフル 3323人(人口10万人当たり2.77人)
  肺炎  94654人(人口10万人当たり78.88人)
  餅の窒息 1300人(人口10万人当たり1.08人)

  コロナ陽性者数1936人(人口10万人当たり1.61人)
  重篤患者数    31人(人口10万人当たり0.03人)
  コロナ死亡者数 981人(人口10万人当たり0.82人)

 ・年間の世界の死者数:約7千万人

  2月~7月で世界では約3千5百万人の死者数、この内、新型コロナによる死者数は60万人

  例年のインフルエンザによる死者数は50万人~100万人

  日本は半年で新型コロナ関連の死者は約1000人

 ・平成30年厚生労働省による死因の統計(1位~5位の原因で年間約90万人が死亡している)

  1位 癌     年間37万3547人
  2位 心疾患   年間20万8210人
  3位 老衰    年間10万9609人
  4位 脳血管疾患 年間10万8165人
  5位 肺炎    年間9万4654人


<上久保靖彦 京都大学大学院教授による提言>

 ・暴露しただけなのと感染はわけないといけない。正確にPCR検査陽性者数と表現すべき(ウイルスには曝されていても免疫があるので感染はしていないという人でも陽性にはなる)

 ・日本はS型、K型のスパイク変異からしっかりスタートした。スパイクの変異には限りがあるので1年程度で終わる

 ・死者数の43%が院内感染。PCR検査は7割程度の精度で本当は陽性なのに陰性と判定されている人が普通に入院していると感染が広がってしまう

 ・新型コロナ肺炎が原因の死亡者数は約45%で、本当は他の原因で死亡している人が多い。

 ・東京都のコロナ死亡者の平均年齢は79.3歳(男性の平均寿命は79.64歳)他の死因と比較してリスクは低く、普通の生活を営むべし

 ・秋には第二波が来る可能性があるが、欧米のように自粛してしまうとAED(抗体依存性感染増強)でかえって重症者を増やしてしまう可能性がある。集団免疫を達成している日本はむやみな自粛は避けた方がいい

 ・上久保教授によるデータとその解析結果に対し、英語にして世界に発信し、データによる検証を行ってほしい(因みに日本の学会には疫学に関する査読ができる人がいないらしい)

 ・小川栄太郎さんと、日本の免疫学のパイオニアであり権威である順天堂大学の奥村さんが新型コロナについて記者会見をしたところ大手メディアが何故か全く来なかったそうな

 ・順天堂大学の奥村康さん曰く「日本が集団免疫という状態になければ現状を説明できない」と発言

 ・日本の免疫学の権威も上久保教授とおなじ結論に達している

 ・コロナに医療資源を割き過ぎて、診るべき人が診られることなく死亡しているケースが多い、このあたりも考えて

 ・専門家や政治家は利権なのか何なのか、変に合意形成を妨げるのではなく、国民のために真実を言ってほしい


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3 コメント

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確定できないこと (小寄道)
2020-08-25 04:30:32
新型コロナウイルスは、<スパイク部分(突起の所)の形によってS型 K型 G型に分けられる>とのこと。これは電子顕微鏡によって確認できているのでしょうか。変異のプロセス、そのパターンは確認できているのでしょうか?
それとも、異なった方法で検証し、同定できたのでしょうか?

上久保先生はデータ分析がご専門らしいのですが、S型 K型 G型に分類した根拠がまったくわかりません。ネットで検索しても、その分類の医学的アプローチさえの初歩的な解説はありませんでした。
つまり、大前提で思考停止になりました。

小生、先生の記事を以前よりフォローしているgooのブロガーです。以上の、医学的知識のない素人の疑問にご回答をおねがいします。
よろしくお願いします。

小寄道さんへ (小浜逸郎)
2020-08-25 13:24:38
コメント、ありがとうございます。
私も医学的知識のない素人です。そのうえでお答えします。たしかに上久保氏がS型、K型、G型に分類した根拠を私も自分で確認できたわけではありません。ですので、間違っている可能性を排除できません。ただ、統計を一応信頼するとして、日本人(台湾や東南アジア人も)が欧米人その他に比較して、極端に死者が少ないのは事実のようで、これについては諸説が入り乱れていますね。BCGなどによる自然免疫説、生活習慣説等々(これらについても他の箇所で紹介しております)。それらでは説明がつかないと感じていた中で、上久保説は、私が知り得た限りでは、素人なりに説得力を感じさせるものでした。そこで、これを紹介した前記事では、「自分には当否を判断する資格はないが、説得力を感じさせる」と書いたわけです。前記事では問題のURLの紹介にとどまっていましたので、不十分と思い、要約していただいた方のものを当記事で紹介いたしました。私の上久保説に対する対応は、その限りにとどまるもので、特に「正しい」として支持しているわけではありません。
ちなみに国際政治評論の田中宇(さかい)氏が、やはりコロナについて詳しく論じていて、細部は上久保説と異なるものの、私自身が考えてきたコロナについての思想態度と、大筋で一致するものです。それもここでご紹介しておきます。
http://tanakanews.com/200824corona.htm?fbclid=IwAR0z9KL0VQix3zKF9UoVw64u8mYgz-9hTsITAP3-8OlGx6nVI2yWZ7XqQ2U

素人が誰か専門家の唱えている一つの説に安易に飛びつくべきではないという考え方は賢明なものと思いますが、一方で私は現代状況を論じてきた評論家として、世界を揺るがしている現象について何も言及せずに、科学的な説が一つに確定するまで黙っているべきだとは必ずしも思っていません。その渦中で、確定していないことがあったとしても(つまり誤る可能性を認めたうえで)、何ごとかを発言すべきだと考えてきました。時は待ってくれませんので。
コロナの場合、判断に高度な専門性が要求されるので、ある現象の原因にまで踏み込んでその当否について云々することはできませんが、私は、こういう説もあれば、こういう説もある、しかし、全体としての日本での「コロナ騒ぎ」については一種のなくもがなの政治・社会現象としてとらえることが大事だというスタンスで書いております。田中氏もそれは同じです。
このスタンスからすれば、素人なりにある専門家の説を紹介することも(それだけに偏ってはなりませんが)、読者の方の検討に付するという意味で一つのささやかな役割を果たす意味あるのではないでしょうか。今回、小寄道さんが反応を示してくださったのも、その一つの結果と考えて、感謝しております。もし上久保説が誤りだと判明した時には、私自身、紹介者として、それ相応の責任を取るつもりでおります。しかしくどいようですが、私は上久保説を支持しているわけではありません。
分かりえないもの (小寄道)
2020-08-26 02:03:01
たいへん丁寧なご回答をいただき、恐縮しております。
あえて小浜さんと呼ばさせてください。何冊か拝読し、また同世代であることに親近感をもって、貴ブログの読者でもある、それだけの理由からですが、失礼な言があれば他意はなく、あらかじめご海容のほどお願いいたします。

説明者の説得力の強度はなにが決定的な要因でしょうか。論理の展開、社会的な信用力、表現力の卓越さ、内容の根拠の裏付け、吟味・検証された事柄の反芻など、いろいろあってその総和を聞き、咀嚼し、説明者の話がすとんと腑に落ちる。これこそが理想形の「納得」という形になるかと思うのです。
上久保先生の話は、序盤にから事実認定の誤りと虚偽の説明があったので、前提となる説得力のある説明が、私にとっては信用のおけるものではなくなった。それが最初で、京大の先生がなぜ科学的根拠となるデータなり、写真を用意していないのか、それがさらに不信感を募らせました。
かくかくしかじかの理由により、東アジアにおける新型コロナの感染は収束に近い、そして「いまや死者は一人も出ていない」と述べた。2回も繰り返し強調したので、鮮明に記憶していますが、自説を補強したいがために事実の誤認を述べるのは、最高学府の指導者としてどうかと思いました。
今回の新型コロナウィルスは、ほんとに不思議なウィルスです。世界のウィルス学者でさえ混乱しています。私が信をおくウィルス学の先生は、まったく沈黙し、表面に出てこようとする気配もありません。
感染、伝播するたびに個体のRNAをコピーし、変異していく。これほどに面妖で不可解なウィルスは、いかなるウィルス生物学者も震撼させるのです。
そう、ウィトゲンシュタインではないですか、分かりえないものは沈黙するしかないのですが、「SARS-CoV-2」は、あまりにも未知で底知れない何かがある、だから私たちは語らざるを得なくなる。分からないままに、話し合い、情報を共有したい、そんな欲求に駆られるのではないでしょうか。
田中宇氏について。私はかつて田中氏のメルマガの熱心な読者でした。近年はほとんど読んでいませんでしたので、小浜さんのお勧めもあるので、是非とも読んでみたく存じます。
そして、改めて自分の拙ブログで、小浜さんのコメントの応答を含めて、記事にしたいと考えています。その時は、確認をとりご了承をえて公開するようにいたします。
長文になりました。初めてコメントを書き、丁寧かつ誠実な返信コメントをいただき、たいへん光栄なことと恐縮しています。また、筆が走りすぎて失礼なことを書いたかもしれません。敏速な返信には、同じようにお返しするが礼儀だと心得、取り急ぎ乱文をしたためました。
最後に、有難うございました。これからもよろしくお願い申し上げます。
(お忙しいことと存じますので、このことの返信はご遠慮いたします。)

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