I knew you were waiting for me. | け?

け?

「こんなに馬鹿だと思わなかったからさ」

 

 

いつものスタジオじゃないから車どこ停めていいかわかんない。

ぐるぐるぐる。

なるべく安いとこのがいい。

お。『20分100円』

ここにしよう。

なるほどね、これは安いわけだ。停めにくい。

が、空いてる。

日陰に停めてギグバッグ(ギター持ち運び用のソフトケース)担いでとことこ。

ギグバックを担いだ歩き方で上手いかどうかわかっちゃう。上手い人は担ぎ慣れてる。スマートに歩ける。

俺なんか「引越屋さんのバイト?」て感じ。

 

薄暗い横丁から夏の陽で真っ白な通りへ出ようと。

上下ピンクのスゥエットのお姉さんが横切って行く。サンダルつっかけて。近所の人なんだろうな。

俺の前を歩いてるお姉さん。

 

 

父子家庭だった時、娘がスゥエットでコンビニ行こうとした俺に、

「そのかっこで外で会っても口きかない。」

そう言ったのはこういうことだったか。

 

 

よっれよれのスゥエット。

お姉さん水玉パンツ透けてるし。

きったねーサンダルだなぁ。手に持った透明のバッグ。デパートとかに勤めてんのかな? 持ち出し防止で中が見える様になってんだよね?

ちょっとふらついてる? 熱中症? 大丈夫? 今倒れられても俺ギターのが大事だから助けないよ。

人のことは言えないけれどいくら近所でも、だらしなさ過ぎないかい? あんた、おっさんじゃなくて若いお姉さんなんだからさ。

お姉さん立ち止まって身体を左。そこそこ綺麗な横顔。あー渡るのか。ちょっと行ったら横断歩道あるのに。つかそこで渡る意味って何? 向かいに何もないぞ植栽だぞ。

まぁそういう生き方もあるんだろう、俺後ろ通り抜け・・

 

あ。

こいつ。

「すっ」と鼻から息を吸い込んでみる。酒の匂いはしない。

あー・・・薬やってんだ。

 

風に煽られた木の様に体が芯から左右に揺れてる。目がイっちゃってら。見えてるものが見えてないんだろうなぁ。

夏のこんなに暑い昼間っからラリることもあるまいに。

どんな辛いことがあるのか知らん、単に気持ちいいだけかも知れん。

だっけどなぁ〜

 

まぁ、他人の不幸などどうでもいい。

つか、いつからこんな街になったんだ?

いやいや単にお姉さん、具合が悪いだけ? 熱、高い?

そういうことにしておこう。その方が景色が平和。

若い頃の失敗はいくらでも挽回出来る(らしいよ)

 

あのね、お姉さん。

行き詰まったら、煮詰まったら、休めばいい。

何もしないで、ひたすら寝て。

食べるものが無くなろうが、お金が無くなろうが。

行き詰まってる時に世間の常識なんて意味無いだろ?

そうするとね、そのうち「あ。」て見えてくるものがる。

気が付くことがあるんだよ。

偉そうなこと言ってごめんね。

 

 

 

アレサ・フランクリン死去。

名曲『 I knew you were waiting for me 』

ジョージ・マイケル、待ってただろね。今頃またデュエットしてんのかなぁ。