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ガン細胞の免疫のブレーキ

2020-03-27 10:33:45 | 健康・医療
ガン細胞への免疫療法が始まりましたが、なぜガン細胞は免疫にブレーキをかけてしまうのかを述べてみます。

生物の免疫システムは非常に精密なものであり、異物を排除するすばらしい仕組みを持っています。これが何となくわかりにくい理由は、免疫細胞の名前がややこしいというのもあるような気がします。

免疫を担当する細胞のひとつにT細胞があり、中でもキラーT細胞はガン細胞を破壊する能力を持つことが知られています。ところが通常はこのキラー細胞は、ガン細胞を攻撃することができません。

キラーT細胞の表面には、T細胞受容体というタンパク質が突きだしています。このT細胞受容体で非自己の抗原、つまりガン細胞などを認識します。T細胞受容体は遺伝子の再構成によって、抗体のような多様性を持っています。

したがってガン細胞がどんなに変化しても、その細胞を認識するT細胞受容体が必ず存在します。そこでガン細胞は、キラーT細胞から逃げるのではなく、別の手段を使ってキラーT細胞から攻撃されないようにしています。

キラーT細胞の表面には、アクセルやブレーキの役目をするタンパク質があります。そこでキラーT細胞に捕まったガン細胞は、キラーT細胞のブレーキを踏むことになります。

ガン細胞がキラーT細胞に見つかったというのは、キラーT細胞の表面に突きだしているT細胞受容体が、ガン細胞の一部に結合した状態を意味します。そこでガン細胞は、キラーT細胞の表面に突きだしているPD-1というタンパク質に、PD-L1というタンパク質を結合させます。

このPD-L1はガン細胞の表面に突きだしているタンパク質で、ブレーキを踏む足に相当します。PD-1にPD-L1を結合させれば、キラーT細胞の働きは弱まり、ガン細胞を攻撃しなくなります。

つまりガン細胞はキラーT細胞に捕まっても、ブレーキをかけてしまうことになるわけです。このブレーキを踏ませないようにするために、PD-1の抗体を使って蓋をしてしまうのがオプジーボのような免疫療法剤となるわけです。

しかしここで大きな問題があると私は思っています。それはこのPD-1は、ガン細胞に特異的ではなく正常な細胞も持っている、自己と非自己を認識させるためのシステムだからです。

キラーT細胞が正常細胞を認識してしまっても、このシステムによって守られていますが、これがうまく作動しないと自己免疫疾患となってしまうのです。

つまりオプジーボのような免疫療法剤は、重篤な自己免疫疾患を誘発させる可能性という副作用が常に付きまとっています。この辺りをどう解決するかが大きな課題といえるでしょう。


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