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生物を危険から守る「闘争・逃走反応」

2019-10-18 10:25:35 | 化学
ヒトを含む脊椎動物は、突然の恐怖や差し迫る危険に直面すると、身体に「急性ストレス反応」が起きます。

瞳孔は拡大し周囲の音は聞こえなくなり、鼓動は一気に速まり、血圧が上がって呼吸が激しくなるようです。すべては筋肉にエネルギーを送って危機的状況に対応できるようにするためです。

恐怖や危険の生理学的反応として、生存のために戦うか逃げるかの準備を整える「闘争・逃走反応」は、これまでアドレナリンの作用によって引き起こされると考えられてきました。

ところが新たな研究によると、闘争・逃走反応を促すのは骨から放出される「オステオカルシン」と呼ばれるタンパク質であることが分かりました。

コロンビア大学の研究チームは、10年ほど前の研究で、骨格から放出されるオステオカルシンが血流にのって膵臓、脳、筋肉などの生物学的機能に影響することを明らかにしています。

オステオカルシンは非コラーゲン性タンパク質の25%を占めるもので、一見すると骨とは無関係と思われる身体の部位に、さまざまな作用を引き起こします。例えば、細胞のグルコース摂取能力を高めて代謝を調節したり、持久力を高めてより速く走れるようにしたりしています。

また生殖能力を高めたり、記憶力を改善したりする作用もあるようです。そこで研究チームは興味深い仮説を立てました。

これらの生理学的変化のほとんどは、野生で捕食動物に狙われている状況下など、予測不能で危険環境での生存を助けるものではないかという仮説で、「骨」は突然の危険から身を守るために進化したのではないかというものです。

研究チームはマウスを使ってこれを実験しました。マウスが本能的に恐れる捕食動物(キツネ)の尿や、電気ショックなどのストレスを与えて、生理学的変化及び血液を分析しました。すると数分以内に、血中オステオカルシン濃度が急上昇することが明らかになりました。

マウスの天敵ではない動物(ウサギ)の尿では、オステオカルシン濃度に変化はありませんでした。実験ではオステオカルシン濃度が上昇すると、マウスの心拍数、体温、および血糖値が上昇し急性ストレス反応である闘争・逃走反応が起こりました。

アドレナリンを生成する副腎を切除したマウスや副腎不全マウスでも、急性ストレス反応は正常に機能しました。研究チームは最終的に、恐怖にさらされていないマウスに大量のオステオカルシンを注射することで、急性ストレス反応を促すことに成功しています。

こういった急性ストレス反応を引き起こす物質が骨から出ているというのは興味深いのですが、多分生物ではほかの臓器に関しても臓器間シグナルがあることは確かなようです。 


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