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「脳の再生」という夢の実現か

2019-12-09 10:16:23 | 健康・医療
脳も無数の細胞からなる臓器の一種である以上、再生医療の発展によって脳を再生することの試みが行われています。

2001年のアメリカで創業した慶応大学発のバイオベンチャーは、傷ついた脳を治療する夢の治療薬の実現まであと一歩のところまで迫っています。

脳梗塞や脳損傷をはじめ、脳疾患になるとリハビリを行うことで運動機能の回復を図ります。しかし脳疾患の発症からある程度時間が経過してしまうと、運動機能の回復は鈍くなり多かれ少なかれ後遺症が残ります。

このベンチャーが開発した再生細胞薬「SB623」を使うと、患者の運動機能が一定程度回復するとみられ、今後の研究により効果をさらに大きくすることも期待されています。

この新薬は、ヒトの骨髄から採取された間葉系幹細胞を基に作成された「再生細胞薬」と呼ばれるものです。間葉系幹細胞はさまざまな細胞に変化(分化)できるiPS細胞やES細胞などと同じ幹細胞の一種ですが、万能細胞と呼ばれるiPS細胞などと比べてその分化する能力はさほど高くありません。

それでも骨や血管など体を構成する多くの細胞に分化することが知られており、iPS細胞などが登場する前から長年研究が続けられていました。

脳梗塞や脳損傷などで後遺症が残るのは、脳の神経細胞が失われてしまうためで、大人の脳はほとんど成長しないため脳についた傷は治らないとされてきました。

1998年慶応大学のグループが、大人の脳の深部にも増殖可能な神経細胞の素(神経幹細胞)が存在していることが明らかにされました。SB623を脳の損傷部に注入すると、脳の深部にある神経幹細胞を引き寄せる効果があるようです。

SB623の投与をきっかけに神経幹細胞が損傷部に集まり、細胞分裂を繰り返し、結果的に失われた神経細胞が再生し脳機能の回復が見込めるようです。

このベンチャーは現在までに、慢性期(発症してから時間が経過し、症状が安定した状態)の脳梗塞と、同じく慢性期の外傷性脳損傷の患者に対する臨床試験を実施しています。慢性期の脳梗塞の患者に対する臨床試験は2015年以後にアメリカで実施されました。

製品としての安全性と高い有効性を示唆する結果が得られています。ところがその後の第2b相試験は、予想していたほどの良い結果は得られませんでした。

このため脳梗塞に対する治療薬の実現は足踏み状態となっているものの、2018年日米で行われた慢性期の外傷性脳損傷の患者に対する第2相の試験では、芳しい結果が得られています。

このように完全な脳の再生という夢が実現したというところまでは行っていませんが、かなり可能性は見えてきたようです。


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