こんな私のブログ宛に「オンライン試写会のご案内」が届いた。

この作品については何の予備知識もなかったのだが、作品紹介を読むと「妻を亡くした30歳の健一(山田孝之)が、男手一つで幼い娘・美紀を育てる10年の軌跡を描く物語」とある。

 

うわ、涙腺緩みっぱなしになるだろうと観る前から想像できるテーマ。

なるほど、これは観るしかない。

ということで締め切りギリギリに視聴希望を送り、昨夜さっそく観せてもらった。

 

 

原作はあの重松清。

この人の作品には過去にもかなり大量の涙を流出した経験がある。

「とんび」だ。

あの頃はまだ自分がシングルファザーになるなんて夢にも思わなかった時代。

それにも関わらず、主人公・ヤスの生き様に触れ、堰を切ったように涙が溢れたことを思い出す。

今回もかなり手強い原作に違いない。

 

ストーリーは…

健一はカレンダーに“再出発”と書き込んだ。始まったのは、2歳半になる娘・美紀の子育てと仕事の両立の生活だ。
結婚3年目、30歳という若さで妻を亡くした健一はトップセールスマンのプライドも捨て、時短勤務が許される部署へ異動。何もかも予定外の、うまくいかないことだらけの毎日に揉まれていた。そんな姿を見て、義理の父母が娘を引き取ろうかと提案してくれたが、男手一つで育てることを決める。妻と夢見た幸せな家庭を、きっと天国から見ていてくれる彼女と一緒に作っていきたいと心に誓い、前に進み始めるのだ。
保育園から小学校卒業までの10年間―――。子供の成長に、妻と死別してからの時間を噛みしめる健一。そんな時、誰よりも健一と美紀を見守り続けてくれていた義父が倒れたと連絡を受ける。誰もが「こんなはずじゃなかったのに」と思って生きてきた。いろんな経験をして、いろんな人に出会って、少しずつ一歩一歩前へと踏み出してきた。健一は成長を振り返りながら、美紀とともに義父の元に向かう。
そこには、妻が残してくれた「大切な絆」があった―――。(「ステップ」公式サイトより引用)

 

 

私も健一と同じシングルファザーである。

けど、「親父の意地」や「男の子育て」という共通項はあるものの、私と彼とでは何もかもが違う。

離別と死別。

男の子と女の子。

どうにもうだつが上がらない50代の冴えない中年男と、真面目で実直できっと誰からも好かれるであろう人間力を持つ大手企業勤務の好青年。

 

作品を観ながら、離別と死別の違いを改めて実感した。

健一と美紀の家には、亡き妻のスナップ写真がいたるところに飾られているのだ。

「パパは仕事してご飯も作ってくれます。ママはずーっとお家にいます」

これは小学校1年生の美紀がクラスで家族紹介をした時のセリフ。

この家は間違いなく3人家族なのだ。

しかし当然写真の中のママは話してくれないし抱きしめてもくれない。

一方、離別の我が家は明らかに2人家族。

ママの写真など絶対に置かない。

だけどうちのチビは月に2回の面会交流でたっぷりママと遊んでくる。

しっかりと両親の愛情を受けて育っている。

 

もちろんどっちがいいとかどっちが寂しいとかって話ではない。

子どもにとってはどちらも寂しいし、特に私のような親にしてみたら子どもに不憫な思いをさせて申し訳ない気持ちがいっぱいある。

 

ただ、もう一度新しい家族を作ろうとしたとき、「亡きママ」と長年一緒に暮らしてきた子どもの心の負担は計り知れない。

親に求められるのは、真の思いやりと強い勇気と覚悟に他ならない。

この映画は単なるシングルファザーの育児奮闘記ではなく、亡き妻とともに家族を築いていく一人の男の生き様を描き、その中で本当の家族の在り方を問いかけてくれた、とても素晴らしい作品だと思う。

 

まだまだ作品について語りたいことはたくさんあるのだが、とっ散らかってしまいそうなのでこのへんにしておこう。

 

あ、最後に。

健一の同僚役を演じる広末涼子。

彼女が見せる「泣き顔」はなぜあんなに人の心を打つのだろうか、天下一品だ。

 

映画は今日(7月17日)公開。