(再掲載)もう一度出逢えたら23 修正 | 「山あり谷あり笑いあり」らんのblog

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インドアなのに司会やイベントに参加する方向音痴不思議さんの日々を綴ったり、小説や詞を書いたりする迷走系ブログ❗️時折、失踪してblog更新怠ります
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「ずっと気になってた、なんで先に帰ったのかなって。」

李々子は切なそうに微笑み巧馬を見て

「私の為だった、私があの校庭の桜の花が見たいって言ったから。だから、先に帰って写メを送るつもりだった。」
「それが、その手紙に?」
「うん」

李々子はその手紙を取りだし、巧馬に渡した。

「読んでいいよ。」
「え」
「いいから」

巧馬は、手紙を開いて読み出した。

『私はあの桜の下で貴方と逢えましたか。
 去年あまり咲かなかったようなので、先に帰ってメールを送ります。
どう?綺麗かな?
私は、ずっとあなたに言いたかったこと言えましたか?
あなたに伝わった?
どんな風に思った?
答えはゆっくりでいいので、必ず教えて下さい。
あの日と同じ桜の下で、会えるのを楽しみにしています。』

李々子はため息をついた。

「あの日って、多分入学式の事だと思う。
うちの学校ね、入学式の最後に吹奏楽部の演奏が恒例でね、用意まで少し時間があったから一番お気に入りの場所で音出しをしてたの。
部室の側にある校内で一番立派な桜の木の下、その日も桜が綺麗だった。
気が付くとその子は木の下にたっていて、式に遅れるよって連れていったの。
そうしたら、後で吹奏楽に入部してきた。」
「…」
「伝えたかったことってなんなんだろ、あの桜の下で何が言いたかったんだろ。その答えが分かったかもしれないのに、もう聞けない。」
「会いたい?」
「そりゃあね、でも無理って分かってる。それなのに、もしかしたらどこかで会えるかもしれないって時々思うの。」

巧馬はドキッとして

「なんでそう思うの?」
「その子には五歳年上のお兄さんがいてね。」
「お兄さん」
「うん、大好きだったらしいんだけど、病気で12歳で亡くなったの。」

巧馬は少し驚いて李々子を見た。そんな巧馬に李々子は

「そのお兄さんは白血病だった。」

と言った。巧馬は

「白血病」

と呟いた。李々子は頷き、

「3才で発症したらしい。その子の知ってるお兄さんは、今にも消えそうではかなくて、お母さんはお兄さんに付きっきりで、家に1人でいるのはすごく寂しかったらしい。」

チリッと目の奥が痛くなる巧馬。

ああ、そうだ寂しかったずっと。
でも、あなたと出逢ってから一緒にいるときは楽しくて、寂しさを感じる暇がなかった。あなたは知らない、あなたをどれほど思っていたか。

「ずっと骨髄移植のドナーを探してたけどなかなか見つからなくて、家族とも型が合わなかったから待つしかなくて」
「うん」
「その影響なんだろうね、臓器提供カードをいつも持ち歩いてた。わたしに何かあったら、真っ先に駆けつけますなんて言ってたし。」
「本心だったんじゃないかな、きっと真っ先に駆け付けた」
「そう?」
「うん」
「そっかぁ、でももう無理だよね。いないし」
「でも、さっき会えるかも知れないって。」

気付く李々子

「そうだったね。お葬式であの事故の時もう助からないって分かって、おじさん達は悩んだ末に臓器提供することにしたって聞いたの。それが供養になるって。」
「うん」
「だから、きっと誰かの一部になって生きてる、そう思ってる。」
「そうだね」
「いつかどこかで会えるといいな。」

そう言い切なそうに小さく笑う李々子を、巧馬は優しく見つめていた。そして心のなかで

リーコさんあなたの友達は俺のなかで生きてる。

と、呟いていた。
ふと、巧馬を見て李々子は

「ねぇ会えると思う?その人に」

と問いかけた。巧馬はあわてて、でも力強く

「信じていれば会える、俺が保証する。」

と言った。その答えに、李々子は嬉しそうに微笑みながら、

「だよね、私が信じてないとダメだよね。あ~なんだろホッとしたような楽になったっていうか、永塚のおかげだわありがとう。」

という李々子に巧馬が優しく笑い

「それなら良かった、役に立ったんだね」

と言うと、

「けっこう、役に立つ男だよ。」

と言った。

「とんだ長話になっちゃったね、料理冷めちゃったし早く食べよう。いただきます。」
「うん、いただきます」

一口食べた巧馬に

「どう味?」

と心配そうに李々子がきいた。

「うん、うまい‼️すごくうまい」
「本当?良かったぁ」

と喜ぶ李々子を見た巧馬は

「そうだリーコさん」
「なに?」
「写真とっても良い?」

と言った。

「え」
「ほら、二人のだけの写真が1枚もないから」
「ふた…良いけど」
「じゃあ隣に行くね」

と言って、李々子のとなりに来てスマホをかざした。

「はい、とるよ…さん、に、いち」

頬にキスする巧馬

「え?」

李々子は驚いて巧馬を見た。そんな李々子に優しく微笑みかけ

「リーコさんだめだよ、ちゃんと前向いて」

と、前を向くように指示する。

「…」

なっなんなのこの展開?

混乱する李々子を横目に、巧馬はシャッターを押した。