枕草子 第151段
うつくしきものの章段の中に
二つ三つばかりなるちごの、
いそぎてはひ来る道に、
いとちひさき塵のありけるを目ざとに見つけて、
いとをかしげなるおよびにとらへて、
大人などに見せたる、
いとうつくし。
このようなことは、よくあることで
ハイハイしている幼子が、塵か糸くずかを見つけて
小さな指でつまんでまわりにいる大人などに、
「ほら、ほら、あるよ!」とでも言うような仕草がとても愛らしい。
何でもない些細な日常の幼子の仕草を、
端的に描き切って、文で残している少納言です。
平安の気位の高い才媛も、やはり人の親で子育ての経験から描き切れるのです。
少納言は16歳で橘則光と結婚。男子を産みます。
二度目は藤原棟世(むねよ)と結婚。女子を産みました。
時代を経てなお、共感を覚えるほんの一部分です。