世相の潮目  潮 観人

世相はうつろい易く、その底流は見極めにくい。世相の潮目を見つけて、その底流を発見したい。

ミサイル防衛態勢はイージス・アショアを大きく超えよう

2020年07月05日 | 現代
河野防衛大臣がイージス・アショアの配備を中止すると決定し、代替案なしの決定に異論が出ましたが、中止決定そのものは正しく、むしろ日本の防衛体制を見直すよい機会を与えたと言えます。

と言いますのは、ミサイル兵器の開発は日進月歩でして、それに伴うミサイル戦略も急速に進歩しているので、イージス防衛体制では日本の防衛は覚束なくなりつつあったからです。

平和は軍事力の均衡で維持されるものです。米ソ冷戦の時代の核軍縮は、両国の核ミサイル戦力の均衡を目指していました。レーガン大統領のスター・ウォーズ計画は、攻撃力の均衡を維持しながら守備力は強化して敵の攻撃力を削いで攻撃力の均衡を破ろうという作戦でした。米ソ冷戦では、その作戦が奏功して米国は冷戦に勝ちました。

しかし戦争では攻撃するより防衛する方が不利ですし、攻撃より防衛は経費が嵩みます。日米同盟では、攻撃は米国に頼み、防御は日本が受け持つことになっていますから、日本が憲法上の制約で防衛だけに専念しても敵味方の戦力均衡は保てていましたが、中国、北鮮の攻撃力が増強するにつれて、日米の防衛体制に不備が生じてきました。イージス・アショアの中止は、そのため生じたのです。

イージス・アショア中止によって、日本は一方的防御から攻撃的防御への戦略転換の時期になったと考えるべきです。早速、議会の防衛部会では敵基地攻撃ミサイルの配備の必要性を論じる空気が出てきました。そのこと自体は正しいのですが、この際、ミサイル防衛体制は、広い視野から長期的見通しのもとに議論してほしいのです。

米露の新戦略兵器削減条約(新START)は、2021年2月で期限が切れます。本来ならば中距離ミサイル増強中の中国を加えた米露中の三カ国で新たな核抑止条約を締結すべきですが、中国が参加を拒んでいるので、世界の核軍縮は暫く歯止めが掛からなくなるでしょう。その間、米露中ともに核ミサイル開発競争が激化します。

新STARTで米露の核抑止力が働いたのは、第二撃攻撃力の温存で第一撃攻撃を押さえる抑止力が働いたからですが、その原理は核抜きの通常兵器でも同じ抑止力は働くます。即ち、通常のミサイル攻撃兵器の戦争でも第二撃攻撃力の温存・保持が第一撃を思い止ませる効果はあります。

日本の防衛体制を専守防衛から敵基地攻撃型防衛に展開する際には、もう1歩視野を広げて、第一撃攻撃を防ぐために第二撃攻撃力を温存・保持するミサイル戦略も取り入れてほしいものです。何故なら、敵基地攻撃ミサイルでは、攻撃目標が敵のミサイル基地への命中精度が求められますし、更に第一撃発射前の時点をとらえる困難があるから、十分に攻撃抑止力が働かない恐れがあるのです。
(以上)
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