世相の潮目  潮 観人

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米中対立は覇権争いから体制の衝突へ

2020年07月30日 | 現代
中国が英國との国際公約である香港の一国二制度を簡単に廃止するとは欧米諸国は予想しなかったと思います。というのは香港の存在が中国の経済発展にとって重要な機能を果たしたからであり、今も果たしているからです。

しかし、中国は、香港を資本取引の場として活用するよりも香港の政治支配を確立する方が国益にかなうと考えたのでしょう。中国は改革開放の経済政策で成功して以来、今や経済政策に自信を持つようになったのです。その経済力を背景に軍備を増強し、中国の周辺地域を侵略したり、南シナ海を内海化したりして、米国との対立戦略を優位に進めることが出来ると確信したのです。

1978年鄧小平が資本主義的手法を取り入れた改革開放政策に成功し経済発展を遂げると、米国はその中国を資本主義社会に参加させる政策をとってきました。これは米国の言う「中国関与政策」でして、中国が資本主義を取り入れて社会が豊かになれば、やがて共産主義体制を捨てて自由で民主的な國になると期待したからでした。

しかし、近年の中国は資本主義的な経済手法を採用しても国家主導の独占的経済体制を辞めるどころか、逆に益々強化し、WTOやIMFの国際ルールを乱して勝手に振る舞い、富国強兵に励み、周辺国との摩擦を引き起こしています。今回の香港一国二制度を廃止する中国の決定は、単なる米中、英中の国家間の対立では止まらず、自由主義体制と間の対立に発展する決定打になりました。

7月23日行ったポンペオ国務長官の「共産主義の中国と自由世界の未来」と題する演説は、香港併合の決定が米中体制の衝突の始まりであり、米国は中国を抱きかかえる関与政策から突き放す政策への転換するとの宣言でした。

ポンペオ国務長官が演説の場所をニクソン大統領図書館・博物館を選んだのはニクソンによる米中和解(1972年)の終焉を告げるためであり、この演説が安全保障大統領補佐官、FBI長官、司法長官の発言に続く4番目の警告である旨述べたのは、米中対決は米政権の総意であり、戦端は情報戦で始まることを示唆しています。更に、戦後の世界体制に挑戦する中国共産党体制を抑えるため国連、NATO、G7、G20などは力を結集すべきだと述べています。

現在の中国の世界への挑戦は、超大国の覇権対立という問題では無く、民主主義と共産党独裁の対立として受け止めようと言うのです。

ポンペオ国務長官が演説の中で、習近平共産党主席を「破産した全体主義の信奉者」と名指しで述べたことは、米中対立は国家間の覇権争いから体制の衝突へ、即ち民主主義体制と共産党全体主義体制の衝突に発展したと見なしたのです。
(以上)
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