子猫のおはなし 2 | おばあちゃんになった、わんこさんのおはなし。                    ~高齢柴犬の闘病・介護記録~

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ハイシニア柴犬介護記録です。
1年3カ月の闘病期間を含め、いつでも家族みんなで笑いながら過ごした、柴犬「わんこさん」との16年と8カ月の生活。
悲喜こもごもあったけど、トータルしてとっても幸せだった日々のおはなしです。

犬と一緒に過ごす生活って、いいね。

焦りながら帰宅すると、迎えてくれた母が「あのね、まだ生きてる」と困り顔で言う。

その一言で、状況は把握できた。まっすぐ庭に向かい、小さい小さいネコを保護。

枯草がくっついているのかと思ったらそれはへその緒だった。

体をさわられて、ギーとかヤーとか、体のわりに大きな鳴き声をあげている。

「過酷な環境下、よく頑張って生きててくれたね」って歓迎すべきなんだろうけど、正直なところ私は子ネコが怖かった。直に触れずに、使い捨てのビニール手袋をはめる。タオル越しにしか、抱き上げられない。子ネコに笑顔を向けるどころか、緊張してこわばった顔をしているだろう。情けない。

 

エアコンの効いた部屋の中に入れ、まずは水分補給を急がなきゃ。間に合わせの材料しかないけれど、お湯で薄めたスポーツドリンクを、旅行用化粧品詰め替えボトルについていた未使用のスポイトで飲ませてみる。量はほんの少しだけど、飲んだ。空き瓶にお湯を入れてカイロ代わりにして、箱に敷いたタオルの下から保温する。獣医の先生に電話をかけながら、母猫ならきっと舐めるだろうから、濡らしたキッチンペーパーで全身を拭く。ネコは急に活発にもそもそ這いまわり、鳴きはじめる。

「先生、昨日の子ネコですが、放っておけなくて保護しちゃいました。健康状態を診てほしいし子猫用のミルクも欲しいので往診を頼めますか」と依頼するが、予想に反して

「ちょうど今、仕事終わったところだ。明日から三連休だから、行けない。行ったところで医療行為はしないから。これからただひたすら授乳と排泄の世話を繰り返すだけだ。根気しかない作業、がんばれ」

と突き放される。「わかりました、できるだけやってみます。どうしても自力対処できなくなった時はSOSしますからお願いします」と返事をする。自分で子ネコ用ミルクを買ってきて飲ませるようにという指示だった。

 

ペットショップの店員さんに、ミルクや哺乳瓶を見繕ってもらい。

「ネコちゃん、生後何か月ですか?」との質問に、庭にたった一人で倒れていたのを保護し、へその緒がついてて目も開いてないことを伝える。店員さんの笑顔が曇った。

「それは、…親が捨てたのかもしれませんね。野良猫も野生の生き物ですから、この子は生きられないという判断をしたら子供を捨てるんです。なんて言ったらいいのか、うまい言葉が思い浮かびませんけど、どれだけ適切な世話をしても育たない命の可能性が高いと思われます。それでも哺乳瓶、いりますか?」

 

必要最低限の買い物にとどめるなら、ネコミルクだけでなんとか間に合う。庭に倒れていた子ネコに診察やお世話用品の出費をしても報われない可能性が高いよ、どうする?

獣医の先生も店員さんも、そう言いたいのでしょう。私もこの子ネコ飼育に関しては勝算のないことは十分承知で、それでも保護するからには最後の最後までできるだけの手を尽くすと決意して、庭から抱き上げたんだから。「哺乳瓶もください」と言い、そのほかにペット用ウエットシートも購入した。店員さんは心配そうに見送ってくれているけれど、早くミルク飲ませられるよう、急いで帰らなきゃね。

 

店から出たところで着信に気づいた。獣医の先生からだった。我が家に立ち寄った帰り道らしい。

「今、見た。生まれてすぐの生き物の見立ては難しいけれど、97%猫だな。生後4~7日未満。排泄方法を伝えておいた。3時間おきに授乳が必要だが、排泄させないと飲まないこともあるから。授乳の前に排泄の世話を習慣にするように。室内は暑すぎても冷やしすぎてもいけない。他に必要なのは粘り強さだけだ。大変だぞ、まあがんばるしかないな」

力強く励まされ、電話を切ってから、診察代はいくらになるのか聞くのを忘れたと気づいた。おそらく「診察してないから、いらん」って言われるだろうけれど。いつもプラっと遊びに来るような感じで様子を見に来て、お代など受け取らずに帰っていく。わんこさんが旅立って疎遠になって以降、ずいぶん多忙で商売繁盛しているらしい。先生は少し変わっているけど、いつだって動物の味方の名医だから、当然だね。

 

買ってきた哺乳瓶は、ネコに比べて大きすぎた。ネコが瓶の中に簡単に潜り込んでしまえるくらいに大きい。思わず表示を確認したけれど、間違いなく「仔猫用」と記載されている。ネコの体が小さすぎるのだ。

説明書を見ながらもたもたとミルクを作り、ぎこちなく飲ませてみるけれど、うまくいかない。私がへたくそなせいもあるけれどひょっとしてこの子は、一回も母猫から授乳をされたことがないのかな?どうやって飲んだらいいかを知らないの?と感じた。

 

夏休み期間に遊びに行く約束をしていたHちゃんに、ネコのお世話のため予定キャンセルの連絡を入れた。快く理解してくれ、名付け親になってほしいと伝えたら「むぎちゃん」というかわいらしい名前もつけてくれた。そういえば私、むぎちゃんの性別もわからないな、と思ったけれど男の子でも女の子でも大丈夫だと思えるいい名前だ。お母さん猫には見放されても、むぎちゃんはたくさんのやさしさに支えられてるよ。がんばって、大きくなろう。

 

 

 

 


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